コロコロ変わった銀座線のダイヤ

 コロナ禍で鉄道は減便の時代を迎えました。例えば東京メトロの輸送人員は、最初の緊急事態宣言が発出された2020年度第1四半期(4~6月)には、コロナ禍前の2018年度同期比で定期利用が62%、定期外利用が38%の水準まで大幅に減少しました。

定期券は購入済みの人が計上されるため、実際の利用者はもっと少なかったでしょう。

【コロナ禍前後】銀座線の運行本数と輸送人員の推移を見る(グラフ)

 その後、定期利用者は2020年度まで2018年度比70%程度の水準で推移し、2023年度以降は同80%程度となっています。一方、定期外利用者は2021年度以降、徐々に回復し、2022年度に同80%、2023年度に同90%を超え、2024年度にはコロナ禍前を超える水準にまでなりました。

 こうした中、最も頻繁にダイヤを変更した路線が東京メトロ銀座線です。平日朝ラッシュ時(上野8時台発・渋谷方面)の1時間あたりの運行本数は、コロナ禍前に最大30本だったのが、2022年8月のダイヤ改正で25本まで減らされました。夕方から夜にかけても、最大27本だったものが25本になりました。

 特に変動が大きかったのは日中です。かつて3分間隔(毎時20本)でしたが、2022年3月に3分20秒間隔(毎時18本)、同年8月には5分間隔(毎時12本)まで大幅な減便となりました。輸送力で見ると、朝ラッシュはコロナ禍前の83%、日中は60%の水準です。

 利用者数の回復状況と比較して日中は減便しすぎのようにも思えますが、これは東京メトロ全線の合計値です。路線別に見ると、銀座線の輸送人員(定期・定期外の合計)は2020年度に2018年度比で58%、2021年度は同61%と、最も利用者数の減少が激しい路線でした。

 東京メトロからすれば、2021年度まで60%程度に落ち込んでいた輸送需要に合わせて2段階で減便したのでしょうが、2022年度以降は利用が急速に回復したため混雑が問題化します。

 そこで2023年4月、1年強で3度目となる異例のダイヤ改正が行われ、日中の運行間隔を4分(毎時15本)に増便。さらに土休日は2025年11月のダイヤ改正で3分20秒間隔(毎時18本)に増便し、コロナ禍前に近い水準まで回復しています。

朝の増便を阻む「二つの制約」

 日中や土休日の本数が回復する一方、平日朝ラッシュの本数は元に戻るのでしょうか。そこには「車両」と「乗務員」という制約があります。

 列車の運行に必要な車両は、運行本数が最も多い朝ラッシュ時間帯に必要な数を揃えるのが基本です。しかし、その多くはラッシュ時間帯しか使用しない非効率な資産でもあります。銀座線は1時間あたりの最大本数を30本から25本に削減したことで、平日に必要な編成数(車両運用数)が4本も減少しました。1編成あたり10~30億円もする車両が不要になれば、事業の効率化につながります。

 現在使用している車両をすぐに処分するわけではありませんが、車両の更新に合わせて導入数を減らしたり、余剰分を他路線に転用したり(銀座線では不可能)して、徐々に車両数を減らしていきます。

 また、JRや私鉄で整備が進むホームドアは、設置すると駅での停車時間が増加し、全体の所要時間も増えます。これに対応するには車両を増備する必要がありますが、そこに余剰車両を充てることができます。予備車が増えることで、車両改造を効率的に進められるメリットもあります。

 一度車両を削減すると、増便は困難になります。しかし、働き方改革が定着する中で、朝ラッシュの混雑がコロナ禍前の水準に戻ったり、日中の運行本数がラッシュ時間帯を上回ったりするとは考えにくいため、これ自体が増便の足かせになることは少ないと考えられます。

 乗務員も同様に、最も人手が必要な朝ラッシュを基準に配置されます。ただし、乗務員は定年退職と新規養成によって、車両よりも早いサイクルで人員が変動します。

 コロナ禍から6年、本格的な減便が始まってから4年が経過し、減便を前提とした乗務員の養成が進んでいます。特に運転士の養成には時間と費用がかかり、免許を取得しても働き場所がないと困るため、要員数をコントロールしなければなりません。

 また、ホームドア設置に伴いワンマン運転化する路線も増えています。乗務員の総数が減少すれば、朝ラッシュ時間帯の本数を元に戻すのは困難です。これに対して、日中の増便は乗務員のシフト調整で対応できるため、比較的容易です。

 2023年以降、コロナ禍で削減した列車を復活させる動きが出てきましたが、その多くは日中や夕夜間が対象です。前述のように定期利用が低迷する中、定期外利用はコロナ禍前を上回っており、定期外利用が中心となる日中と夕方の需要増に対応する必要があるからです。今後もその流れは変わらないでしょう。

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