どんなにおしゃれな高級車でも、最新の電気自動車でも、タイヤだけは決まって「真っ黒」です。時折、側面を白く塗った、いわゆるホワイトリボンタイヤを見ることはありますが、それも元は真っ黒です。
【行動走ってます】青い! ブリジストン生まれの「未来のタイヤ」です(写真で見る)
その一方で同じゴム製品ながら、ゴム風船や輪ゴムなどは赤や黄色、青などバラエティ豊かです。なぜタイヤは黒しかないのでしょうか。
実は、タイヤの原料であるゴムそのものはもともと白っぽい色をしています。それなのになぜ、あえて真っ黒にしている理由、それは「カーボンブラック」と呼ばれる、黒い炭素の微粒子を混ぜているからです。ゴムにこの炭の粉を配合することで、タイヤの性能は飛躍的に向上します。
最も大きな役割は、タイヤの強度と「耐摩耗性(すり減りにくさ)」を高めることです。ただのゴムだけでは、何トンもあるクルマの重さを支えたり、高速で回転しながらアスファルトと激しくこすれたりする過酷な使用には耐えられません。
カーボンブラックを混ぜることで、初めて車両の重量を支えつつ、長く安全に走れるタイヤになるのです。
また、カーボンブラックには日光などの紫外線を吸収して、ゴムが劣化するのを抑える役割もあります。屋外で日光を浴び続けるタイヤの寿命を延ばす、いわば“日焼け止め”のような効果です。
さらに、カーボンブラックを配合することでタイヤにある程度の導電性(電気を通す性質)を持たせ、走行中に発生する静電気を路面へ逃がしやすくする狙いもあります。タイヤの黒さは、単なる色ではなく、私たちの安全を守るための重要な“機能”そのものといえるでしょう。
今では当たり前の黒いタイヤですが、歴史をさかのぼると意外な事実が見えてきます。
なぜタイヤは黒しかないのか?(画像:写真AC)
自動車用の空気入りタイヤが登場した当初、タイヤは白っぽい色や飴色が一般的でした。これは天然ゴムの色や、当時使われていた充填剤の色がそのまま出ていたためです。
大きな転換期となったのは、1910年代前半(1910年説、1912年説など諸説あり)のことでした。
アメリカでカーボンブラックを補強材として使用したタイヤが開発されると、それまでの白いタイヤよりも圧倒的に耐久性に優れていたことから、瞬く間に世界中のタイヤが黒色へと移り変わっていきました。カーボンブラックを混ぜるというのは、まさにタイヤ界の革命だったといえるでしょう。
それから100年以上経ち、タイヤも劇的に進化しているため、「現代の技術なら、カラフルなタイヤも作れるのでは」と思う人もいるかもしれません。確かに、近年は同じ補強材として「シリカ(二酸化ケイ素・砂の主成分)」という白い素材を組み合わせるケースも増えています。
シリカは燃費を良くする効果があるため、最新のエコタイヤなどに多用されています。
しかし、主流となってから一世紀以上経ったいまも、カーボンブラックを完全に代替できるほどの素材は確立されていないのだとか。それほどまでに炭の粉による補強効果は絶大であり、信頼されているのです。
タイヤの黒は、世界中のエンジニアたちが「一番安全で長持ちする」と認めた、信頼の証。

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