夜、バス停に止まったバスの車内がフワッと暗くなる光景。これから乗り降りしようとする乗客にとっては明るい方が助かると感じるかもしれませんが、これには安全上の重要な理由があります。
主な目的のひとつは、フロントガラスへの「映り込み」を抑えることです。
夜間に明るい室内から窓の外を見ようとすると、ガラスが鏡のようになり、自分の姿や室内の様子が映り込んで外が見えにくくなった経験はないでしょうか。
これと同じ現象が、バスのフロントガラスでも起こり得ます。車内が明るすぎると、ガラスに車内の光や乗客の動きが映り込んでしまい、運転士から前方の道路状況が見えにくくなるおそれがあるのです。
こうした映り込みは、前方の歩行者や障害物の発見を遅らせる原因になりかねません。
そのため事業者によっては、停車中や発車前に運転席まわりの照明を抑えるなど、映り込みを減らす工夫が行われています。
また、車両の基準類でも、灯火類の直射光や反射光が運転者の視界や運転操作を妨げないよう配慮する、という考え方が示されています。
こうした考え方も踏まえ、夜間は車内照明をいきなり真っ暗にするのではなく、運転席まわりを中心に明るさを落とす「減光」で、運転士のクリアな視界を確保しようとする運用が見られます。
暗い道でもすぐ見えるように! 人間の目の仕組み「暗順応」への配慮もうひとつの理由は、私たちの目の仕組みに関係しています。
暗順応は明順応より遅い(画像:写真AC)
明るい環境から急に暗い環境へ移ったとき、目が慣れて周囲が見えるようになるまでには一定の時間を要します。これを専門用語で「暗順応(あんじゅんのう)」と呼びます。
もし停車中に運転席まわりが明るい状態だと、運転士の目はその明るさに適応してしまいます。
実は、同様の工夫は飛行機でも見られます。夜間の離着陸時に客室の照明を落とすのは、万が一の事態に備えて、乗客や乗員の両方の目をあらかじめ暗さに慣らしておくという安全上の考え方があるためです。
バスにおいても、停車中や発車前のタイミングであらかじめ照明を抑えておくことは、走行を開始した瞬間から周囲をできるだけ見やすい状態に保つための、理にかなった工夫といえます。
もちろん、車内全体を常に真っ暗にするわけではありません。照明を抑える範囲や、ドアの開閉、パーキングブレーキの作動など、どのようなタイミングで自動的に明るさを変えるかは、車両の仕様やバス会社のルールによって異なります。
乗客の安全を確保しつつ、運転士が夜道を走り出す瞬間から前方を見やすい状態に整える。夜のバスで見られる「スッと暗くなる照明」には、安全性と利便性の両立を図るための知恵が詰まっているのです。

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