ミサイルといえば、鉛筆のように鋭く尖った形を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
【弾体に小穴がいっぱい!】これがペトリオット「PAC-3」ミサイルです(写真で見る)
確かに空気抵抗を切り裂いて速く飛ぶには、尖っている方が有利に見えます。
なぜ、一見すると空力的には不利に思える丸い形を、あえて採用しているのでしょうか。
その理由は、先端部分がミサイルの「目」として機能しているからです。主に近距離で相手を追いかけるタイプ(AIM-9系など)のミサイルには、熱を追いかける「赤外線シーカー」というセンサーを先端に積んでいるものが多く見られます。
この「目」は、目標を追従するために、広い角度で目標方向を捉えられるよう設計されています。
このとき、先端を半球状のドームなど光学的に扱いやすい形にしておくと、シーカーが広い角度で目標方向を変えても、ドーム窓に起因する光学的な誤差を管理しやすくなります。
もちろん、尖った形状でも補正設計によって成立させることは可能ですが、光学補正や温度影響の考慮が増えるぶん、設計や製造が複雑化しやすくなります。
そのため、確実に相手を捉え続けることが求められる近距離用のミサイルでは、光学的に扱いやすい丸い形が選ばれることが多いのです。
尖った先端はマッハの世界を飛ぶため! 衝撃波を操るスピードの秘密一方で、遠くから超高速で突っ込んでいく中・長距離ミサイル(AIM-120など)の多くは、先端が尖っています。こちらは視界の確保だけでなく、超音速での長距離飛翔が想定されているので、このような形状になっています。
陸上自衛隊の81式短距離地対空誘導弾。左手前が光波弾、右奥が電波弾。
音速を大きく超えるマッハの世界で長距離を飛ぶとき、ミサイルの前には空気が激しく圧縮されて「衝撃波」が発生します。
先端を細長い円錐などの尖った形にすることで、この衝撃波の当たり方をコントロールし、空気抵抗、特に「造波抵抗」と呼ばれる抵抗を抑えやすくなります。長距離を短時間で駆け抜けるためには、この尖った形が空力的に非常に有利なのです。
ただし、とにかく尖らせて速くすれば良いというわけでもありません。超音速で飛翔すると、先端部は空気との摩擦や圧縮による「空力加熱」を受けます。赤外線センサーを用いる場合は、この熱によって先端の窓やセンサー自体の温度管理などが設計上の制約になり得ます。
ミサイルの形状は、単なるデザインではなく、空力、光学、熱、そして内部機器の配置を総合的にバランスさせて決定されます。そのため、先端形状だけでなく、材料や冷却を含めた総合設計でバランスを取る必要があります。
ミサイルの先端を見れば、そのミサイルが「粘り強く追いかける格闘家」なのか、「電光石火で突き進むスナイパー」なのか、その性格が見えてくるはずです。
ミサイルの形状1つにも、性能と機能が凝縮されているといえるでしょう。

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