ある自治体で、路面電車のような新しい交通システムの社会実験が行われています。車両として使われているのは、ゴルフ場の電動カートです。

公道での自動走行も行われています。

レールの代わりに地中の磁力線 決まったルートで自動走行

 高齢者などの「交通弱者」や観光客などの移動手段確保を目的に、各地で新たな移動手段が検討されています。たとえば名古屋市は2017年1月に、名古屋駅を起点としてLRT(路面電車)とBRT(バス高速輸送システム)を組み合わせたシステムを導入すると発表。自動走行技術などを活用した次世代交通システムの開発も、国の主導で行われています。

 そうしたなか、石川県輪島市では中心市街地の交通手段として、ヤマハ発動機が協力してゴルフ場の電動カートをベースにしたシステム「エコカート」の社会実験が行われています。

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輪島市が社会実験を行っている「エコカート」。ゴルフ場の電動カートをベースにしたもの(写真出典:輪島商工会議所)。

 車両は全長約3mの4人乗りで、運転手が乗車します。200Vの家庭用電源で5~6時間充電し、最高速度19km/h、約45kmの走行が可能だそうです。輪島市街地の商業施設や病院、観光施設を結ぶ3つのコースを、午前、午後の一部時間帯におよそ15~20分間隔で運行しています。小規模の電動カートで、公道上の決まったルートを定時運行するという、ある意味路面電車のようなシステムです。

 うち一部区間では、運転手同乗のうえ、最高速度12km/hでの「自動走行」を実施しています。

道路に埋め込まれた「電磁誘導線」からの磁力を車両が感知し、定められたルートを走るというもので、ゴルフ場などでも同様の仕組みが導入されています。停留所や一時停止の場所にはマグネットセンサーが埋設されており、その上に車両が来ると自動で停止します。

 自動走行区間ではハンドルやブレーキ、アクセル操作もすべて自動に。ただし、ルート上に停まっているクルマを回避する場合などは、人の手が必要です。ハンドルを操作するとすぐに手動運転に切り替わり、電磁誘導線上に車両を戻すと再び自動走行に切り替わるそうです。

お代はタダ

 輪島商工会議所の上野さんによると、「ゴルフ場のカートは本来、公道を走行できないものですが、ウィンカーやバックミラー、灯火類などを取り付けて、2014年11月に軽自動車のナンバーを取得しました。それまでに公道以外での社会実験を積み重ねたうえで、このシステムの有用性を警察庁などにも理解いただいたことで、公道での実験にこぎつけました」といいます。

「エコカート」は20km/h未満というゆっくりなスピードですが、「お年寄りには速さは必ずしも重要ではありませんし、観光客からは、自分がたどって来た道がわかりやすいと好評です。気になる場所があったら次の停留場で降りて『ちょっと寄っていこうか』ということがすぐにできます」と上野さんは話します。街中の移動は「エコカート」で、郊外や他都市へは路線バスやタクシーでといった具合に、交通機関の役割をすみ分けられるともいいます。

ゴルフカートが公道を自動走行 新交通システム、社会実験中

現在は4台の「エコカート」で社会実験中。車両総重量は770kg。
最小回転半径は3.4m(写真出典:輪島商工会議所)。

 なお、「エコカート」の運賃は無料。今後、実験段階を終えて本格的な運用に移行したとしても、経済団体や企業の“受益者負担”を前提とし、運賃の徴収は考えていないそうです。「たとえばバスを導入したり、新しい道路を建設したりするよりも、『エコカート』はずっと安価です。お年寄りも元気に移動できるようになり、街の経済にもプラスになります」(上野さん)といいます。

 上野さんが「ゆっくりとした空気が流れる輪島のような街にはピッタリ」という「エコカート」。ほかの地方にも広がっていくかもしれません。

【画像】輪島の「エコカート」、将来の路線網

ゴルフカートが公道を自動走行 新交通システム、社会実験中

8つのルートを設け、街全体を自動走行するエコカートでつなぐ計画がある(画像出典:輪島商工会議所)。

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