ナンバープレートを取得せず、自賠責保険にも加入しないまま無免許で走る電動バイクなどが社会問題化し、警察が取締りを強化しています。そのような“無保険車”が、車検のあるバイクやクルマでも増える可能性が出てきています。
【え…!】「無保険」で捕まった車両が「栃木県警察」と書いてあるんだが…(写真)
2025年末頃、関西地方のあるバイクショップが、保険会社から電話連絡を受けました。
「代理店契約は今年度で打ち切ります。自賠責保険のステッカーを、3月末までに返却してください」
書面による事前説明はなく、保険会社は続けてこう告げたといいます。
「継続を希望されても、これは金融庁の指導なので保険会社としてできることはありません」
自動車業界は、車両登録を行い、法律で加入が義務付けられた自賠責保険に加入した車両を販売することで、未保険車の横行を防いできました。自賠責保険は被害者保護のためにあり、自分自身のケガや物損は対象外です。損害保険会社にとっては、加害者としての補償を万全にするため任意保険の加入を促進する上で、顧客との接点となる自動車販売・整備業者は有力な代理店候補とされていました。
本来、車両登録(届出)や自賠責の加入は車両の所有者に義務がありますが、購入の動機を考えると、販売事業者が代行するほうが、無保険車を1台でも減らすという視点で見ると、最良の選択です。eコマースで販売される特定小型原付のように、自賠責保険への加入を“購入者任せ”にすると無保険車の歯止めがなくなり、社会問題を助長する可能性があります。
ではなぜ、代理店と保険会社の関係が変化したのか。2023年7月に発覚したビッグモーター事件が発端となっています。
ビッグモーターは顧客の自賠責加入を特定の保険会社に誘導する見返りに、任意保険の保険金請求審査を甘くしてもらうという関係を築いていました。金融庁はこれが組織ぐるみの不正請求事件につながったとして、損保業界に代理店監督の強化を求めました。
例えば、同じように見える任意保険でも各社で補償内容や対象が異なります。代理店には、単にA社の保険がいいと顧客に説明するだけでなく、顧客が要望する補償内容を聞き取り、比較対比して合理的に説明する能力が求められたのです。
しかし、自賠責保険の保険料や補償内容は、どの損保会社の保険でも一律であり、本来、そうした説明能力は不要です。
「自賠責は本来もうけるためのものではない」と保険会社トップは明言したが契約を打ち切られる代理店の多くは、バイクショップや自動車整備業者です。これらの事業者は、車検が不要な車両を扱っていたり、販売を副業としていたりするため、保険会社の販売強化には直接つながりにくいと見なされています。
旧ビッグモーターの店舗(中島みなみ撮影)
自賠責保障制度を共同で担当する国土交通省も、監督強化のなかで代理店が減っていることを把握しているとしつつ、次のように話します。
「代理店の質の向上は評価できますが、自賠責加入率への影響は否定できません」(保障制度参事官室)
代理店統合によるコスト削減は、任意保険では保険料引き下げとして契約者に還元できます。しかし、自賠責保険は被害者救済を最優先とする社会的なセーフティーネットであり、アクセスのしやすさこそが制度の根幹です。
電動キックボードやペダル付バイクなど、新しいパーソナルモビリティの登場時、販売事業者の多くは自賠責制度を共に守る方向には動きませんでした。購入者の判断と責任で加入すべきだと問題を先送りした結果、未加入車両の摘発という警察の手法に頼らなければ、社会不安を払拭できない状況に陥っています。
車検と自賠責保険加入がセットになっている車両でも、車検を受けずに無保険で運行する事件が起きています。自賠責保険加入の義務があるにもかかわらず、購入者の自己責任で加入を徹底することは、現実的な被害者救済策にはなりません。
ビッグモーター事件の不正の本質は、保険会社とビッグモーターが自賠責保険を“道具”として利用し、特定の保険会社の任意保険加入へ誘導したことにあります。そして、任意保険に付帯する車両保険で不正請求を行い、両者の利益を最大化したのです。代理店管理の強化が必要な任意保険とは根本的に異なる自賠責保険で、同様の代理店整理を進めてもよいのでしょうか。
事件の当事者となった損保ジャパンの当時の経営者は「自賠責保険は本来儲けるためのものではない」と発言しました。自賠責保険で保険各社が自由な利益を設定することはできませんが、毎年開催される審議会で、保険会社と代理店双方に適正な手数料が上乗せされています。
自賠責保険の保険料率(=保険料)を決める金融庁は、この事態をどう考えているのでしょうか。金融庁は「代理店の整理を進めるという指示はしていない」、日本損害保険協会も「そのようなガイドラインは作っていない」と、自賠責保険の代理店整理に関与していることを否定します。
しかし、金融庁は自賠責保険の代理店数もその増減も把握していません。保険代理店の契約は保険会社に一任され、任意保険と自賠責保険を取り扱う代理店で求められる能力にどの程度の違いがあるのかについても、把握していません。金融庁、国交省、損保業界、自動車業界、保険加入者、すべての関係者が自賠責保険制度は何のためにあるのか、今一度共通認識を持つ必要があります。

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