2001(平成13)年に発売されたホンダのエイプ、ズーマーといった原付バイクは、新旧のバイクユーザーから「こんなバイクを待っていた」と支持を得て、双方とも2017(平成29)年までの16年間にわたり生産され続ける、ロングセラーとなりました。
【ヒットならずも意義深い1台】ホンダ「Nプロジェクト」が生み出したバイトを写真で振り返る(画像)
そして、エイプ、ズーマーの好例に続けとばかりに、その翌年にはさらなる原付バイクとしてバイトを発売します。
エイプ、ズーマー、そしてバイトといったモデルは、2000年代初頭にホンダ社内で立ち上がった「Nプロジェクト」のチームによって開発されました。「Nプロジェクト」は若手研究者たちで構成されており、おそらくは1990年代にホンダが失いつつあった「多様化するニーズへの呼応」「遊び心」を再燃させるために立ち上がったプロジェクトでしょう。
現にエイプは、1990年代に流行ったカスタムバイクのベースモデルに合っていたし、ズーマーもまた、やはり1990年代に流行ったダートラ的な雰囲気を持ち合わせていました。結果的にエイプ、ズーマーをヒットさせた「Nプロジェクト」は、その第3弾のモデルとしてバイトを誕生させます。
バイトはズーマー同様、外装に無駄なく、古き良きパーツを継承しながら、新しいデザインパーツも上手く混在させていて、またも「こんなバイクを待っていた」的な、ホンダらしい1台でした。
外観はそぎ落としながらも、細部や中身はかなり手の込んだモデルでした。乗る人の体格や、好みのライドポジションを自由に変えられるよう、シート高を7段階に変更できるアジャスタブルシートを採用。これはBMXから発想を得たと言われており、今でこそ浸透した「バイクのチャリ風カスタム」が少なかった時代でいえば、かなり斬新な試みでした。
また、2001年に初代モデルが発売されたファッションスクーターであるクレアスクーピー同様の、環境性能に優れた水冷4ストロークエンジンを搭載。足回りは前後輪連動ブレーキを採用しており、その個性的な外観だけでなく、全体構造自体も画期的でした。
言い換えれば、バイトは「見た目・環境・乗り味」三方において優れたモデルだったわけですが、結果的には一度のマイナーチェンジを経て、発売から2年後の2004(平成16)年には生産終了に至ります。
発売後に若者ユーザーの間で相応の支持を受けながらも、エイプやズーマーほどの評価を得ることができなかったのは、個性的すぎたモデルのコンセプトおよび外観と、対象がライトなバイクユーザーだったことで、「メットイン機能がない」など他車種よりも合理性に欠けていたためであるように思えます。
バイトはヒットには至らず短命に終わったものの、意義ある開発だった(2024年、松田義人撮影)。
ただし、バイトがエイプ、ズーマーほどのヒットに至らないことを「Nプロジェクト」はあらかじめ予想していたようにも思えることがいくつかあります。
近年でもなお、当時の関係者がバイトの開発秘話の取材に応じているほか、ホンダ・コレクションホールでも短命だったエイプを目立つように展示していて、「ヒットはしなかったが、ホンダのバイクの可能性と矜持が込められたモデル」として位置付けされているきらいがあります。
「ヒットしなかったバイク=失敗作」というわけではなく、短命に終わりながらも意義ある開発がなされたモデルこそがバイトであり、実はホンダらしい遊び心が詰まっているように感じます。そして、こういった挑戦的なモデルにこそ「バイクの楽しさの新しい提案」「バイクの未来の可能性」があるようにも思います。

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