近年増加傾向にある「漢字+カタカナ」の駅名は、SNSを中心に「駅のキラキラネーム」などと呼ばれることがあります。
なかでも代表例として挙げられるのが、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅です。
「ゲートウェイ」とは東京の国際的な玄関口という意味を込めたもので、江戸時代の重要な関所であった「高輪大木戸」にもなぞらえて命名されたといわれています。しかし駅名公募では「高輪駅」が最多得票だったことから、一般の意見を差し置いての駅名決定には賛否両論が飛び交いました。
こうした「漢字+カタカナ」の駅名はほかにもあります。例えば、東京モノレールとりんかい線が乗り入れる天王洲アイル駅は、周辺の再開発地区名に由来する駅名です。
「天王洲」とは江戸時代、海中の土砂が堆積してできた洲に、漁師の網へ牛頭天王の面が流れ着いたという伝承に由来するとされています。また英語表記は「Tennozu Isle」であり、「アイル」は英語の「Isle(島)」を意味します。埋立地の再開発に際して名付けられた名称です。
りんかい線にはこのような再開発由来の駅名が多く見られます。東京テレポート駅は臨海副都心の当初の事業愛称「東京テレポートタウン」から、品川シーサイド駅は複合施設「品川シーサイドフォレスト」に由来します。
特定の施設に由来する駅名という点では、東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅も同様です。施設が先に開業し、その後に駅が整備された点は、高輪ゲートウェイ駅とは逆の事例として語られることもあります。
一方、JR武蔵野線の越谷レイクタウン駅は、特定の施設ではなく周辺のニュータウン名に由来します。現在では行政地名自体が「越谷市レイクタウン」となっており、駅名が地域全体に浸透した成功例といえるでしょう。
地域全体に浸透したという点では、「多摩セン」の愛称で呼ばれる多摩センター駅や、「たまプラ」と呼ばれるたまプラーザ駅なども挙げられます。
なお、多摩センターには同名の特定施設があるわけではありません。計画段階では「多摩中央」という仮称が用いられていましたが、駅南側が多摩ニュータウンの「都市センター地区」と位置付けられていたことから、都市機能の中心を意味する「中央」を英語化し、「多摩センター」と名付けられました。
「セントラルパーク駅」ですが、そんなものはありませんまた、たまプラーザの「プラーザ」はスペイン語で「広場」を意味します。一帯を多摩田園都市の中心に据え、広場を中心とした街づくりを目指したことがうかがえます。
ニュータウンっぽい駅名が多いつくばエクスプレス(画像:首都圏新都市交通)
命名に際しては、開設当時の東京急行電鉄(現・東急電鉄)社長であった五島昇が発案したといわれています。「語呂の良さ」「親しみやすさ」「地域のシンボルとなること」などが考慮されたとされ、暫定駅名は周囲の町名に合わせた「元石川駅」でした。
このようにカタカナを含む駅名の多くは、単なる地名ではなく、街づくりのコンセプトや都市ブランドを反映している場合も少なくありません。
こうした街づくりのイメージ戦略は、21世紀に開業したつくばエクスプレス(TX)でも見られます。同路線ではニュータウンのイメージを前面に出した駅名が採用され、柏の葉キャンパス駅や流山セントラルパーク駅などがその代表例です。
柏の葉キャンパス駅は、柏の葉公園や東京大学柏キャンパスがあること、さらに周辺一帯で進められている「柏の葉国際キャンパスタウン構想」に由来します。これは天王洲アイル駅や東京テレポート駅と同様、再開発地区のコンセプトを反映した駅名といえます。
ところが流山セントラルパーク駅の周辺には、「セントラルパーク」という名称の公園は存在しません。同駅が開業する前の市民アンケートでは、市の中心にある公園にちなんだ「流山運動公園駅」が有力とされていました。しかし最終的には都市イメージを重視し、「流山セントラルパーク駅」という名称が採用されました。
流山市は「新しい街づくりの方向性を示す」「未来を担う若い世代の感覚を大切にする」といったコンセプトを掲げ、マーケティング戦略の観点からも街に比較的高級感のあるイメージを持たせることを意図したとされています。こうして開業直前に現在の駅名が決定するという、異例の経緯をたどりました。
駅名変更の例としては、南町田グランベリーパーク駅もあります。同駅は再開発に伴い、それまでの「南町田駅」から改称されました。商業施設「グランベリーモール」を一度閉鎖して全面建て替えを行い、公園や駅を含めた一体的な再整備が実施されたことが背景にあります。
また、2028年には北海道北広島市で新駅「北海道ボールパーク駅」の開業が予定されています。これはプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOを核とするエリア開発「ボールパーク構想」に由来する名称で、現在は仮称ではあるものの、今後の正式駅名の決定が注目されています。
一見すると「キラキラネーム」のように見える駅名も、再開発や都市ブランド戦略の中で生まれたものが少なくありません。駅名は単なる地名ではなく、街の将来像を示す“看板”としての大切な役割も担っていると言えるでしょう。

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