四輪車にはない、二輪車ETCだけの「登録規約」

 NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)と首都高速、阪神高速、本四連絡の6会社が、ライダーの個人情報取得の根拠とした「二輪車ETC登録規約」を2026年3月31日で廃止します。同年3月9日に公表しました。

【え…!】これが20年間「バイクETCだけ個人情報を取得した」理由です(写真)

 二輪車ETCのサービスが2006年に始まってから約20年間。「これまでに蓄積したライダーの個人情報は約270万件ある」と、代表するNEXCO中日本が話しました。このすべての個人情報を2026年3月31日までに廃棄します。高速道路会社が運営し、個人情報の提供を一元管理する「二輪車ETC登録事務局」も同日、閉鎖します。

 四輪車のETCにはない、二輪車だけの“個人情報の収集”はなぜ行われ、なぜ終わろうとしているのでしょうか。

 本来、ETC利用における個人情報の収集について、高速道路会社は慎重に対応してきました。

 ETCは移動情報を記録するための単なる通信機器ですが、ETCカードの利用規約には、「カードの使い回しは不可」「必ず運転者または同乗者名義でなければならない」と明記されています。つまり、料金請求先は必ず高速道路の利用者であることが、利用者に求められています。そのためETCは個人情報を取得しないことが前提で、高速道路会社も個人情報を取得しないことを説明していました。

 この個人情報と移動情報を組み合わせてプロファイリングすることで、正確なプライバシー情報を取得することが可能となるからです。個人情報はETCカードを発行するクレジットカード会社が保持し、高速道路会社はETCカード番号に料金請求しているだけ。プライバシーが侵害されることは、システム上ありえない――

 しかし、これは高速道路会社が「二輪車ETC」と呼ばないものに限った話でした。

「(二輪車ETCで)プライバシーを侵害するような利用はしてこなかった」と、どの高速道路会社も否定しますが、不要な個人情報なら蓄積しておく必要がありません。これに対して、6会社を代表してNEXCO中日本料金課が答えました。

「二輪車ETC登録規約には、個人情報の取得が明記されている。承諾することが申込書に記載されている」

申込書をよく見てみると…

「二輪車ETC車載器セットアップ申込書」には、申込者が氏名や住所を記載する最初の項目に、《私は「ETCシステム利用規程」及び「二輪車ETC登録規約」を承諾し(後略)》と書かれています。

 二輪車ETCの推進に尽力したライダーにも聞いてみましたが、こう話します。

「言われて読み直したが、申込書の裏面に記載されているのは二輪車登録規約ではなく、ETCシステム利用規約。そこに個人情報取得の記載はない。二輪車ETCが始まった当初から利用しているが、まったく知らなかった」

 大多数のライダーは、高速道路6会社が個人情報を取得していることを認識していないのではないか。こうした指摘を続けたことで、2025年11月6日、ETCシステム利用規約でも個人情報の取得がわかるように規約は改定されましたが、それは個人情報廃棄直前のわずか5か月だけです。

個人情報をとっていた本当の理由は?

 そもそもなぜ、高速道路会社はライダーに限定した個人情報の取得を続けていたのでしょうか。NEXCO中日本料金課は二輪車特有の扱いを強調します。

バイクETCだけの「個人情報収集」なぜ20年間も行われていた...の画像はこちら >>

料金所にてセンサーとカメラで通過車両を監視。
なぜバイクだけ個人情報を取得し続けたのか(中島みなみ撮影)

「二輪車ETCがサービスを開始した(2006年)当時は、ナンバープレートから車両の所有者を割り出す制度が整っていなかったため、個人情報の取得が必要だった」

 加えて料金所における二輪車への対応の違いも挙げます。「(※通信不良や課金不良で開閉バーが閉じていても)二輪車は料金所内での追突防止を避けるため、その場では通過していただき、あとで(不具合を)申告していただくことになっている」

 つまり、個人情報を取得していたのは、こうしたトラブル時に利用者の申告がない“突破車”を想定していた、ということになります。

 実は、料金不払いが発生した場合の対応は普通車と軽自動車・二輪車とで大きな違いがありました。国にナンバープレートなどの情報が登録される普通車(登録車)の場合は、高速道路会社が運輸支局へ直接、車籍を照会できますが、軽自動車や二輪車は軽自動車検査協会へ弁護士を介して情報照会をする必要がありました。

 四輪車に遅れてETCが始まった二輪車の場合は、こうした状況を想定し、あらかじめ個人情報を取得しておこうとしたと考えられます。しかし、この情報照会の取り扱いは2023年の構造改革特別区域法施行令の改正で普通車と同様に改められています。

 さらに、取得されたライダーの個人情報は、利用したことのない高速道路を管理する高速会社でも共有されていました。料金回収のためと話しますが、6会社以外のETCを利用する高速・有料道路では、今も昔も個人情報を取得することなく運営を続けています。

不要になった個人情報を保持し続けて一転、全削除

 こうして蓄積された個人情報は、取得そのものが目的化していた可能性があります。個人情報を保持し続ける理由は、いずれにしても消滅しているのです。そして6会社は個人情報登録制度の廃止を明らかにしました。その理由はこうです。

バイクETCだけの「個人情報収集」なぜ20年間も行われていた? 一転して「270万件“全削除”」の不可思議 何に使ってたの?
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個人情報登録制度の廃止を知らせる高速6会社(中島みなみ撮影)

「二輪車ETC車載器のセットアップ登録が(※紙の申込書から)完全なデジタル化に移行できたため」

 個人情報を保有した「二輪車ETC事務局」の実態は、その責任者も所在地も利用者に公開されていませんでした。破棄を決めた今になって「責任をもって破棄する」と言われても、“覆水盆に返らず”ではないでしょうか。

 ただ一方、高速道路料金の改定について議論する国交省の国土幹線道路部会の利用者ヒアリングでは、有識者の委員が利用者団体に対して、利用車の排気量などの状況を聞く場面がありました。二輪車ETC車載器の270万件におよぶデータを精査すれば、その状況は緻密に深堀りすることができるはずです。

 こうした情報の存在も部会に知らされてきませんでした。活用もなされないまま破棄されるのは不可解です。

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