船舶の大小に関わらず、船橋(ブリッジ)の窓を見ると、ハッチのようにも見える円形の枠状の装置が取り付けられている船があります。一見すると邪魔にも思えるこの円形の枠状の装備には、どのような目的があるのでしょうか。
【動画】おお…回転して水滴弾いた! これが「旋回窓」の役割です
あの円形の枠は「旋回窓」と呼ばれています。主に船舶や鉄道車両において視界を確保するため、フロントウインドシールド(操縦席前面の窓)に装備されています。
波をかき分け、嵐や吹雪の中を航行する船舶では、窓に水滴や雪が大量に付着します。自動車であれば、こうした視界を悪くする水滴や雪はワイパーで除去できますが、船舶の場合は、波をかぶった際の圧力や塩害などによってワイパーが破損する可能性があります。
そうした問題に対応するのが旋回窓です。円形ガラスの中心にモーターを取り付け、円盤部分を回転させることで生じる遠心力によって、雨水や雪を振り飛ばす構造となっています。この仕組みにより、円形の枠内だけは常に良好な視界を確保することができます。英語圏では「Clear View Screen(クリアビュー・スクリーン)」と呼ばれています。
旋回窓はもともと1917年に、望遠鏡や光学機器のカバーとして発明されました。その後、船舶用としては、開発者のひとりが取締役を務めていたイギリスの軍需企業ジョージ・ケントで製造されるようになり、さらに鉄道車両向けにも展開されていきました。
なお、旋回窓には大きく分けて、窓が1枚のみの標準タイプと、二重構造の気密タイプがあります。標準タイプは取り付けが容易である一方、モーターの支柱であるアームが視界を妨げる場合があります。
一方の気密タイプは、内部に固定されたガラスがあるためアームが目立ちにくい構造ですが、コスト面では標準タイプに劣ります。そのため、危険物の運搬などで船内の気密性を保つ必要がある船舶に使用される傾向があります。また、特に寒冷地では、着氷や結露を防ぐためのヒーターが内蔵されているものもあります。
ただし、旋回窓を装備する船は減少傾向にあるといわれています。窓のコーティング技術の向上によってワイパーでも十分に視界を確保できるようになったことや、ワイパーそのものの払拭性能や耐腐食性が向上したことが理由として挙げられます。そのため、特に大型船では、メンテナンス費用などを考慮すると旋回窓の方が高価になるケースもあり、ワイパーを装備する船が増えています。また、旋回窓は動作音が大きいため、騒音対策の観点からワイパーが選択されるケースも多いようです。

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