いよいよ具体化 中部横断道の「山梨-長野」

 中部地方を南北に結ぶ高規格道路「中部横断道」が、全通に向けて大きく動き出しています。

【キツい!】これが「中部横断道」未開通区間と“過酷な現道”です(地図/写真)

 中部横断道は静岡市清水区の新東名を起点とし、中央道を経由して長野県小諸市の上信越道を終点とする道路です。

中央道より南側は「新清水JCT−双葉JCT」までの区間が2021年までに順次開通、静岡県と山梨県が直結しました。

 北側は「佐久南IC−佐久小諸JCT(上信越道)」が2011年、「八千穂高原IC−佐久南IC」が2018年に開通し、上信越道から長野県佐久穂町や小海町へのアクセスが大きく改善。残す区間は中央道に新設される「長坂JCT(仮称)」と八千穂高原IC間、約34kmです。

 この未開通区間については、2023年に国交省が具体的なルートおよびIC位置の原案を公表。さらに2026年に2月から3月にかけては都市計画案の縦覧が実施されました。今後はこの縦覧による住民や利害関係者からの意見を集約したのち、都市計画が正式に決定します。

地図ではわからない「難所の連続」国道141号

 現在、この未開通区間の道路交通は、中央道の須玉ICもしくは長坂ICから八千穂高原ICまでを国道141号が担っています。流れが順調であれば、通過所要時間は約1時間ですが、国道141号の最高地点の標高が1300mを超えることもあり、とくに冬季は地図から想像する以上に複数の難所を抱えるルートです。

 以下、実際の国道141号の道のりに沿ってご案内しましょう。

 国道141号は、甲府盆地の北西部に位置する北杜市から、高原の避暑地「清里」に向かい、八ヶ岳の裾野を長く緩やかな坂で登っていきます。その道中でまず現れる難所が、須玉川を「月の木上橋」で渡るところからはじまる急坂です。ここはS字カーブで約2.5kmかけて約100mの高低差を上るため、凍結時に車速が落ちると、スタックも発生する地点です。

 このS字カーブをクリアしたあと、国道141号はほぼ直線で標高を上げていきます。大型トラックには辛い上りで、各所に登坂車線が設けられていますが、流れは遅くなりがちです。またこの直線部分も、降雪時にはスタックのおそれがある区間です。

 中部横断道の「清里IC(仮称)」は、この上り坂の途中、「丘の公園入口」交差点付近に設けられる予定となっています。

標高1300m付近で「最大の難所」に

 長い上り坂が終わるのはJR小海線をオーバーパスする「清里跨線橋」のあたりで、ここからは日本の鉄道最高地点の駅となる「野辺山駅」を過ぎるあたりまでほぼ平坦な道が続きます。

 しかし、野辺山駅の6kmほど先から、最大の難所がはじまります。それは「市場坂」です。

 ここで国道141号は、千曲川が削った崖線を左右に曲がりながら降ります。その高低差は約3kmで約150mです。崖線が北向きであることから、路面には日が当たりにくく、冬季の降雪時、凍結時にはスリップ事故が多発します。また小海町方面からは急な上り坂となるため、スタック車両が滞留し通行止めになることもあります。

 市場坂を下ったあと、国道141号は千曲川に沿って北に進みますが、この区間は幅員も狭く、原付バイクなどクルマの流れに乗れない車両は大型トラックとの混合交通に危険を感じるほどです。

そして「小海駅」の手前から八千穂高原ICまでは、小海町の市街地の真ん中を国道141号が抜けるため、生活交通と通過交通の混交も課題となっています。

静岡からスキー場直結! 全通のインパクト

 中部縦貫道の長坂JCT−八千穂高原ICが開通すれば、こうした国道141号の課題はすべてクリアされ、約1時間から「約25分程度」へと短縮される所要時間以上に、便利でかつ安全になることが期待されます。

太平洋と日本海をつなぐ「最後の未開通区間34km」全通へ前進...の画像はこちら >>

国道141号の西側は千曲川の崖線が続く。ところどころロックシェッドが設けられるが、一部は幅員が狭小だ(植村祐介撮影)

 そして中部横断道の全通は、地元、さらには長野県の観光にも大きな効果を与えそうです。

 先に述べたように清里は夏の避暑地として知られていますが、冬季には野辺山周辺から小海にかけてのスキー場が、スキーヤーやスノーボーダーで賑わいます。

 中部横断道の南側区間が全通したことで、これらのスキー場は静岡方面からの集客増につながりましたが、それでも小海町まで足を伸ばす人は限定的でした。八千穂高原ICまで高規格道路がつながれば、凍結の多い市場坂、狭い小海町市街地を走る必要はなくなり、小海町のスキー場へのアクセスが容易になります。

 さらに新東名から上信越道方面へのアクセスが改善されることで、静岡県から菅平エリア、そして志賀高原など北信エリアのスキー場もぐっと近くなります。長野県のスノーリゾートに与える影響は大きいでしょう。

 現時点ではこの区間の開通見込みは明らかではありませんが、できるだけ早くの工事着手、開通を期待したいと思います。

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