300kgの重量増に「苦労しました」

 ダイハツ初の本格量産BEV(バッテリー式電気自動車)の「e-ハイゼットカーゴ」は、軽商用バンの「ハイゼットカーゴ」を電動化したモデルです。働く人のためのクルマが、BEVになることで何がどう変化するのか、そしてメリットはあるのか、試乗を通じて検証していきます。

【工具、充電できるじゃん!】これがダイハツ「軽商用EV」の専用装備です(写真で見る)

 既に多くのビジネスユーザーに支持されているハイゼットですが、ダイハツはBEV版を開発するにあたり、「愛されている理由は変えず、かつ働く人の“嬉しい”が増えるような車を目指した」といいます。

 その“変えない”こだわりが最も表れているのが荷室空間です。最大積載量はもちろん、各部の寸法までもがガソリンモデルと全く同じになっています。これは通常の既存ユーザーだけでなく、自身の業務で使いやすいオリジナルの棚などを作り、車内に設置しているユーザーの使い勝手も考えた工夫です。

 また、運転感覚についてもガソリンモデルと変わらないようこだわったそうです。BEVのなかにはモーターによる鋭い加速や、回生ブレーキに由来する独特の減速フィールを強調した乗り味のモデルも数多くあります。しかしダイハツは「そのようなクルマでこれまで通りの乗り方をしたら、積み荷を崩してしまう」と考えました。そこでガソリン車と同じ乗り方で、同じ反応が返ってくるクルマを目指したといいます。

 とはいえ、大型の駆動用バッテリーを搭載するeハイゼットカーゴは、ガソリン版に比べ車両重量が約300kgも増加しています。そうしたなかで従来モデルと同じ乗り味を実現するのは、実はかなり難しいことです。実際、開発陣は300kg重い車体で同じ運転感覚を再現することに、とても苦労したそうです。

働く人が嬉しくなる「BEVならではの長所」も

 実際に運転してみると、開発陣が苦労したという「不変な運転感覚」はすぐに実感できました。

重さ300kg増しでも「ガソリン車と何も変わらない」本当か?...の画像はこちら >>

電動化された商用バンの「e-ハイゼットカーゴ」(西川昇吾撮影)

 特にアクセルは、40%程度の開度までは街中で多用されるため、コントロール性を重視したマイルドなセッティングです。ブレーキも回生システムの介入を感じさせず、ガソリン版と同じ感覚で踏めます。「これなら積み荷を積載していても安心」と、筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)も好印象を抱きました。

 加えて、e-ハイゼットカーゴには働く人々が「嬉しい」と思える、BEVの利点を活かした特色も持っています。

 前述のアクセルの操作感覚は、半分以上踏み込むと一転。今度はシームレスで素早い加速を見せてくれます。これは高速道路での合流加速などでは心強いポイントで、必要な時にはBEVのメリットである鋭いダッシュ力を発揮してくれます。

 また、重量増に伴う重量配分の適正化によって、走行中の安定性や乗り心地が大きく向上しています。今回は首都高でもテストを行いましたが、幅が狭く背の高い軽バンでは、こうしたシーンでドライバーは時折「横転するかも」と不安を覚えます。ところが、e-ハイゼットカーゴはカーブでも軽バンとは思えないほどロール感が少なく、安定した姿勢をキープしました。これなら怖い思いをする場面も減るでしょう。

 さらに、乗り心地のよしあしはドライバーの疲労度に直結しますが、こちらもしっとりとしていて快適です。

また当たり前ではありますが、BEVになったことで走りが静かにになり、停車中のアイドリング騒音もなくなりました。

 特に後者については、すでに導入を検討しているビジネスユーザーからも大きな関心を集めているとのこと。「配送時の待ち時間や伝票の作成時に、周囲を気にせずエアコンを使える」など、具体性のあるアピールポイントになっているようです。

 加えて、e-ハイゼットカーゴのセンターコンソールには、最大1500Wまで対応する100V電源も装備されています。工具のバッテリーなどを充電しながら走ることができるなど、実際の使用シーンのことがよく考えられているなと感じました。

 変えてはいけない部分を守りつつ、BEV化の利点を働く人々の快適・安心性の実現につなげたe-ハイゼットカーゴ。単なるエコカーとしてだけでなく、よきビジネスパートナーになる軽商用バンとして、積極的に選びたくなる1台だと感じました。

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