操縦席を丸ごと撤去!? 前から車も積める異形の無人ヘリ「U-HAWK」

 戦場における航空機の無人化は、いまや小型ドローンの領域にとどまりません。大型の輸送機、さらにはヘリコプターにまでその波は及びつつあるようです。

【写真】無人ヘリ「U-HAWK」閉じた姿や機内をイッキ見!

こうした潮流を象徴する新たな試みとして、ヘリコプターメーカーのシコルスキーが提示したのが、半自律式の無人回転翼機「U-HAWK」です。

 同社は、航空宇宙大手ロッキード・マーチンの子会社です。「U-HAWK」は、2025年10月13日、米陸軍協会(AUSA)が主催する年次技術展示会において、初公開されました。

 原型は世界中の軍隊で運用されている多用途ヘリコプターUH-60「ブラックホーク」です。U-HAWKは完全にパイロット無しでの運用を前提とした新しい航空機コンセプトとして設計されているのが特徴です。

 最大の特徴は、コックピットの撤去という思い切った構造変更にあります。従来のヘリコプターでは当然の存在であった操縦席とウインドシールドを取り払い、機首部分は貨物区画の一部として再設計されました。これにより、機内容積は25%も拡大。加えて、機首には新たに観音開き式のカーゴドアが設けられ、効率的な物資の積み下ろしや、これまで不可能だった車両の搭載を、迅速に行える構造となっています。

 従来のブラックホークは側面ドアからの積載が基本でしたが、U-HAWKでは前方向の物流動線が確立され、輸送機としての効率は大きく向上しています。

 操縦を担うのは人間のパイロットではなく、自律飛行システムです。シコルスキーは長年にわたり自律飛行技術の研究を進めてきましたが、その成果として開発されたのが、タブレット端末による操作を可能とする高度な飛行管理システムです。

オペレーターは地上または遠隔拠点から簡潔な操作で任務を入力するだけでよく、機体は自律的に航路を設定し、離陸、巡航、着陸までを自動的に実行します。

タブレットで簡単操縦! 既存機を「低コストで無人化」する驚異のシステム

 この種の自律飛行技術はすでに試験段階を越え、実機によるデモンストレーションも重ねられています。特にシコルスキーが開発した「ALIAS(Aircrew Labor In-Cockpit Automation System)」と呼ばれる自動操縦システムは、既存のヘリコプターに後付け可能なモジュールとして開発され、すでに飛行試験まで進んでいます。U-HAWKは、こうした技術の延長線上にある存在と言えるでしょう。

操縦席が消えた「顔なしヘリ」間もなく初飛行!? 無人版「ブラ...の画像はこちら >>

ALIASプログラムによって改修を受けたUH-60ブラックホーク。パイロット無しで飛行試験を行っている(画像:DARPA)。

 興味深いのは、このコンセプトが完全な新造機ではなく、既存の「ブラックホーク」に対する改修として実現可能である点です。世界各国で数千機が運用されている「ブラックホーク」ファミリーは、アメリカ軍だけでも膨大な機数を抱えています。もし既存の生産ラインを比較的簡便な改修で無人機化できるのであれば、その戦略的な意義は極めて大きいでしょう。

 改修コストは公表されていないものの、シコルスキー関係者は「比較的低コストで実現可能」であると示唆しています。完全な新型機を開発するのに比べれば、既存の機体構造、エンジン、ローター系統を流用できることは大きな利点であり、軍事予算の制約を受ける現代の防衛計画においては魅力的な選択肢となり得ます。

 無人化された「ブラックホーク」がもたらす戦術的利点は明白です。

最も重要なのは、危険地域への物資輸送や補給任務において人命リスクを排除できる点です。前線近くの補給拠点や、敵の防空火器が存在する地域への飛行は、従来ならば熟練パイロットに大きな負担を強いる任務でした。しかし無人機であれば、最悪の場合機体を失っても人的損失は発生しません。

 また、長時間の待機飛行や繰り返しの補給任務といった単調な作業も、自律システムにとってはむしろ得意分野です。将来的には有人機と無人機が混在する「有人・無人チーミング」の一環として、U-HAWKが兵站輸送や前線補給を担う構想も十分に考えられます。

 シコルスキーによれば、U-HAWKは2026年の初飛行を目標に開発中とのこと。もし計画通りに実証が進めば、「ブラックホーク」という半世紀近い歴史を持つ名機は、新たな時代の航空機へと生まれ変わることになるでしょう。

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