爆撃機が「空対空ミサイル」を大量搭載!? 激変する空中戦の常識

 ステルス爆撃機という存在は、本来、敵の防空網を突破して地上目標を破壊するために構想されたものです。しかし、現代の空戦はネットワーク化されたセンサーと長射程ミサイルの発達によって大きく変貌しつつあり、航空機の役割そのものが再定義されつつあるようです。

【日本で見せました】アメリカ海軍の長射程空対空ミサイルです(写真)

 アメリカ空軍が開発を進める、次世代ステルス爆撃機B-21「レイダー」に関して明らかになりつつある「空対空ミサイル搭載構想」は、その象徴的な例といえるかもしれません。

 アメリカ空軍によると、B-21の内部兵器倉に空対空ミサイルを数十発規模で搭載できないか検討されているといいます。爆撃機はあくまでも地上目標や水上目標に対し攻撃を加えるのがメインのため、空対空目標に撃ち込むためのミサイルを大量に積むというのは、従来の爆撃機の概念からすれば異例といえるでしょう。

 ただ、将来戦の様相を考慮すると、この発想は必ずしも突飛なものではない模様です。構想の核心は、ステルス戦闘機と爆撃機を一体化した分散型空戦システムにあります。

 すなわち、前線に展開したF-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」などの味方戦闘機、または空中早期警戒機が敵機を探知・追尾し、そのデータを後方に位置するB-21と共有します。これにより、B-21は自らレーダーを照射することなく、その情報を基に大量の空対空ミサイルを発射する、いわば「ミサイル母機」として機能するものです。

 この構想が浮上した背景には、将来の大国間戦争、とりわけ中国との高強度紛争を想定した場合に生じる「手数不足」の問題があります。

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 ステルス戦闘機は高い生残性を持つ一方で、内部兵器倉に搭載できるミサイル数には厳しい制約があります。

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F-35戦闘機と様々な無人機が行動する様子のイメージ図(画像:ロッキード・マーティン・スカンクワークス)

 例えばF-35がステルス性を維持したまま携行できる空対空ミサイルは4発しかありません。機体サイズの大きなF-22であっても、その数は6発+短射程2発に限られており、長時間にわたる大規模航空戦では手数が不足する恐れがあります。

 そこで、極めて大きな兵器搭載量を持つB-21を配置し、戦闘機が発見した目標に対してミサイルを撃ち込むことで、戦闘全体の火力密度を飛躍的に高めようという発想が生まれたと考えられます。

 搭載されるミサイルとして想定されるのは、現在アメリカ軍の主力中距離空対空ミサイルであるAIM-120 「アムラーム」です。このミサイルはアクティブ・レーダー誘導方式を採用しており、発射後は自律的に目標を追尾する能力を備えるため、ネットワーク化された交戦環境との相性が良いと言えるでしょう。

 しかし、より注目したいのは、現在開発が進められている次世代長距離空対空ミサイルAIM-260JATMです。

 JATMは、近年急速に性能を向上させている中国の長射程ミサイルに対抗するために開発された兵器で、射程は200kmを超えると推定されています。このような長射程ミサイルをB-21が多数搭載した場合、爆撃機は敵機のはるか後方からでも攻撃を加えることが可能となります。

 前線のステルス戦闘機がセンサーとして機能し、後方のB-21が火力を担当するという分業体制が確立すれば、空戦は従来の戦闘機同士空中戦から、ネットワーク化された遠距離射撃戦へとさらに進化することになるでしょう。

冷戦期の夢「空飛ぶミサイル庫」が、現代のネットワークで現実へ

 もっとも、大型機に空対空ミサイルを搭載するという発想自体は決して新しいものではありません。冷戦期には爆撃機や大型迎撃機に多数のミサイルを搭載し、敵編隊を遠距離から撃破する構想がしばしば検討されてきました。

爆撃機に「空対空ミサイル」てんこ盛り!? 未来のステルス機の新たな使い方 米軍の次世代戦コンセプトとは?
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2025年9月11日、エドワーズ空軍基地に到着した2機目のB-21試験機。背景の倉庫内に最初のB-21試験機も見えている(画像:アメリカ空軍)

 いくつかの試験的計画の中には、いわば「空飛ぶミサイル庫」とも呼ぶべき機体を想定したものも存在しています。しかし、当時はセンサー融合やデータリンクが未成熟であり、複数機が連携して戦う現在のようなネットワーク中心の戦闘環境は存在しませんでした。そのため、当時は構想こそ出ても概念段階にとどまり、実戦的な体系として確立されることはなかったのです。

 ひるがえって今日では、状況は大きく異なっています。高度なデータリンクとセンサー、そして長射程ミサイルの組み合わせによって、航空戦は単一の航空機ではなく「システム全体」で戦う時代に入っています。

 B-21の空対空ミサイル搭載構想は、まさにその思想の延長線上にあります。爆撃機と戦闘機という従来の役割区分は次第に曖昧となり、航空機はネットワークの中で与えられた機能を果たす武装ノードへと変貌しつつあると言えるでしょう。

 この計画が実際に運用段階へと進むかどうか、現時点では定かではありません。もし実現すれば、爆撃機が空戦の火力支点として機能するという、これまでにない戦術概念が誕生することになるでしょう。ただ、B-21は次世代爆撃機という概念を超えて航空戦そのものの構造を変えうる潜在力を秘めた、未来の空戦システムの一角としての潜在能力を有しているのです。

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