過去に米ロも失敗した「斬首作戦」なぜ今回は開戦初日で成功した?

 2026年2月28日、アメリカとイスラエルが連携してイランに対する軍事攻撃を開始しました。

【イスラエルの切り札?】実戦で使われたかもしれない「空中発射弾道ミサイル」です(写真で見る)

 本作戦の主力は地上部隊ではなく航空戦力であり、広域にわたる精密爆撃が集中して実施されました。

そうしたなか、開戦初日に早くも世界を驚愕させる一報が流れます。イランの最高指導者であるハメネイ師が爆撃によって殺害されたというのです。攻撃を実行したのはイスラエル空軍であったとされます。これは敵指導部を直接排除する、いわゆる「斬首作戦」の成功を意味していました。

 とはいえ、斬首作戦は簡単ではありません。2022年にロシアがウクライナに対して試みたものの失敗しています。また、さかのぼると2003年にもアメリカがイラクに対して試み、やはり失敗しました。

 ですが、なぜこれほど困難な任務が、しかも開戦直後という極めて短い時間の中で成功したのでしょうか。その背景には、21世紀型空軍の特徴ともいうべき作戦体系の進化が存在します。すなわち、情報と火力を一体化したネットワーク中心の戦闘システムです。

 かつて航空攻撃は、現在よりもはるかに時間を要する作戦でした。飛行機が兵器として用いられるようになって以降、21世紀初頭にかけての最初の100年間の典型的な手順を見ればそれは明らかです。

 まず偵察機が目標地域を飛行し、写真偵察や電子情報収集によって目標の位置や防空状況を把握します。それで得られた情報は分析部門へと送られ、複数の専門家による評価が行われます。そのうえで作戦計画が立案され、航空機の兵装、飛行経路、電子戦支援、給油計画などを詳細に調整します。このようなプロセスを経るためには少なくとも一日、場合によっては数日を要します。こうしたステップを踏むからこそ、大規模な作戦ほど慎重な準備が不可欠でした。

 しかし21世紀に入り、この構図は根本から変化しました。鍵となったのは、センサー、通信、指揮統制を結び付ける軍事ネットワークの発達です。人工衛星、無人機、電子偵察機、さらには地上に潜む人的な情報源、こうした様々な「ツール」が収集したデータは、リアルタイムで指揮統制システムへと送られます。そこでは分析ツールによって瞬時に評価が行われ、攻撃の可否が判断されます。

1日がかりの作戦が「わずか数分」! 現代航空戦の要「キルチェイン」とは

 決断される(命令が下る)と、その情報は空中の航空機へ即座に共有されます。戦闘機のパイロットは新たなミッションデータを受信し、飛行中であっても攻撃目標を更新できるのです。目標座標、攻撃角度、兵装の選択までがデータリンクを通じて提供され、航空機はほとんど即応的に攻撃行動へ移ることが可能です。

米・イスラエルの「斬首作戦」はなぜ即座に成功したのか? 現代...の画像はこちら >>

イラン攻撃のために爆装を施されたF-15「イーグル」。イスラエル空軍のF-15は対地攻撃が可能な仕様へ改修されている。(画像:イスラエル空軍)

 この一連のプロセスは軍事用語で「キルチェイン」と呼ばれます。目標の発見、識別、決断、攻撃、そして戦果確認までを一本の連鎖として結び付ける概念です。かつては日単位で進行していたこの連鎖が、現在では瞬時(秒単位)にまで圧縮されるまでに至りました。

 今回の斬首作戦も、おそらくはこのキルチェインの高速化によって実現したと考えられます。情報機関が得た位置情報がネットワークを通じて指揮系統に伝達され、即座に攻撃判断が下され、空中で待機していた戦闘機に目標が割り当てられます。このような流れで、極めて短時間のうちに精密誘導兵器(「ブルースパロー」空中発射弾道ミサイル)が投下されたと考えられます。

 結果として、政治指導者(今回はハメネイ師)の位置が特定されてから攻撃までの時間は、極めて短かったのではないでしょうか。恐らく数分の範囲だった可能性すらありえます。

 ここに示されているのは、航空攻撃という軍事行為そのものの変質です。かつての爆撃は、周到に準備された計画的作戦でした。

ですが現在の爆撃は、情報ネットワークによって即座に実行される「リアルタイム戦闘」へと変貌しています。

 いまや航空戦力は巨大な情報システムの一部となっており、センサーが目標を見つけ、ネットワークが判断を伝え、航空機が瞬時に攻撃する。その速度と連携こそが、現代空軍の真髄と言えるでしょう。今回のハメネイ師暗殺の作戦成功は、その真の戦闘力が存分に発揮された結果だったと捉えることができるのです。

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