イギリス国防省は2026年3月30日、イギリス周辺で沈没した約20隻以上の艦船が「軍事遺産保護法(Protection of Military Remains Act)」の保護対象に追加されたと発表しました。
【画像】ああ、結構キレイに残ってる…これが、イギリスの沖で沈む軍艦です
対象はイギリス海軍の艦船だけでなく、フランスやカナダを含む同盟国の艦船、さらには国際水域にある一部の船も含まれるとしています。
特に今回の追加指定で注目されるのは、未だ発見されていないアメリカ沿岸警備隊のカッター船「タンパ」です。同船は第一次世界大戦末期の1918年9月、船団護衛中にドイツ潜水艦の攻撃を受け、乗組員131名が全員戦死しました。「沿岸警備隊史上最も有名で悲劇的な沈没船」の一つとされています。
同法は1980年に導入され、今回で8回目の追加指定となります。対象には、民間ダイバーによって近年スコットランド沖で発見された第一次世界大戦の艦船「ジェイソン」のほか、第二次世界大戦期のフランス掃海艇「エミール・デシャン」や、イギリス海軍補助艦隊(RFA)のタンカー「カリンデール」なども含まれます。
この法律では、海底に沈む軍事遺産を「保護区域(Protected Places)」または「管理区域(Controlled Sites)」として指定します。前者は潜水による観察は許可されますが、接触や内部への立ち入りは禁止され、後者は国防省の許可がなければ潜水そのものが制限されます。
さらに今回の措置では、第一次世界大戦で沈没した戦艦「ヴァンガード」と、第二次世界大戦初期のスカパ・フロー奇襲で沈んだ戦艦「ロイヤル・オーク」の管理区域も拡大され、これまで船体直上に限られていた規制範囲が周辺海域にまで広げられました。
イギリス国防省によると、過去25年間で戦没した艦艇や徴用船から少なくとも3000点以上の物品が公式に報告され回収されているといいます。ただし、大半のダイバーは責任ある行動を取っているとしています。
今回の保護強化について同省は、軍務で失われた船舶の残骸への不法干渉を防ぎ、違反者には調査や起訴が行われる可能性があると説明しています。将来的には、現在審議中の「軍隊法案」により、戦闘で沈没した艦艇は年数に関わらず自動的に保護対象となる見込みです。
このように沈没艦船を保護する背景には、戦没者の慰霊や尊厳の保護に加え、文化財・歴史的価値の保存といった目的があります。
一方で、1945年7月16日の核実験以前に建造された艦船の金属は、大気中に拡散した放射性同位元素の影響を受けていないことから、ホールボディカウンターやガイガーカウンターなど放射線測定機器に用いられる素材として高値で取引されることがあります。そのため、特に東南アジアなどでは沈没艦船の違法サルベージが後を絶ちません。
なお、日本でも沈没艦船を不法に引き揚げたり破壊した場合、財産犯や文化財破壊などに該当し、刑事罰の対象となる可能性があります。

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