自転車に乗る際、かつては子どもだけのものだったヘルメットが、いまや大人も含めた全世代で「着用に努めなければならない」と法律で定められています。
【どこで見られる?】セグウェイに乗る日本のおまわりさん(写真)
いわゆる努力義務化で、2023年4月の道路交通法改正により、年齢を問わずすべての自転車利用者が対象になりました。
罰則こそないものの、警察はヘルメット着用の呼び掛けや広報啓発を続けており、着用率も少しずつ上がっています。警察庁の調査では、全国の自転車用ヘルメット着用率は2023年7月の13.5%から、2024年7月には17.0%へと上昇しました。
この努力義務化を強力に後押ししたのは、警察庁が公表した事故データです。警察庁によると、自転車乗用中の交通事故において、ヘルメットを着用していない場合の致死率(死傷者のうち死者となる割合)は、着用している場合と比較して約1.7倍高くなっています。
また、自転車乗用中の交通事故で亡くなった人の半数以上が、頭部に致命傷を負っています。これらの数字は、どれほど交通ルールを守っていても、一度転倒して頭を打てば、命を落とす危険が大きく跳ね上がるという現実を示しています。
しかし、ヘルメットの役割は単に「硬い殻で頭を覆う」ことだけではありません。実はその形状そのものが、科学的なアプローチによって、致命傷を避けるための「工夫の塊」だったのです。
「硬さ」よりも「滑り」が命? 衝撃を物理的にいなすヘルメットの秘密自転車用ヘルメットを手に取ると、多くのモデルが流線型で、表面がつるりとしたプラスチックで覆われていることに気づきます。これは単なるデザインではありません。
自転車ヘルメットは「硬さ」よりも「滑り」が命?(画像:写真AC)
転倒時、地面に対して頭が斜めに叩きつけられた際、ヘルメットが地面との接触面で引っかかりにくく「滑りやすい」形状になっていることで、首や脳に加わる回転方向の負荷を軽減しやすくしていると考えられています。
もしヘルメットが滑らずに地面に強く引っかかってしまうと、頭部に大きな回転エネルギーが加わり、脳震盪や脳挫傷のリスクが高まるおそれがあります。
現代のヘルメットは、内側の発泡スチロールが潰れて衝撃を吸収する「クッション」の役割と、外側のシェルが滑りやすく設計されることで衝撃を「いなし」、頭部に伝わる負荷を減らそうとする役割の二段構えで、安全性を高めています。
さらに最近では、ヘルメット内部に「MIPS(ミップス)」など、斜め方向の衝突で生じる回転運動を低減させることを狙った仕組みを備えたモデルも登場しています。
こうした技術の一部は、特定の条件下では従来型ヘルメットに比べて回転加速度や脳へのひずみを減らせることが実験で示されており、「努力義務」という言葉以上の安心材料になりつつあります。
「お金がもったいない」「メンドくさい」「近所に行くだけだから」などの理由という油断が命取りになる自転車事故。ヘルメットを被るというわずかな手間が、明日を分ける境界線になるのかもしれません。

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