5叉路、6叉路と、多くの道が集まる交差点は全国に見られますが、東京にはなんと「11叉路」が存在します。なぜそのような交差点が誕生したのでしょうか。
5本以上の道が集まる交差点を「多叉路」といいます。5叉路、6叉路くらいは珍しくないかもしれませんが、東京都江戸川区にある「菅原橋交差点」は、なんと11叉路です。
11もの道が集まる菅原橋交差点の地図(国土地理院の地図を加工)。
場所はJR総武本線の新小岩駅から南東におよそ1.5km、南西から北東方向に千葉街道(国道14号)、北西から南東方向に鹿骨(ししぼね)街道が交わり、その合間を縫うように大小7本もの道が交差点に合流しています。なぜこのような場所が誕生したのか、江戸川区郷土資料室に話を聞きました。

東京都江戸川区にある菅原橋交差点。

仲井堀通りから北方向に菅原橋交差点を見る。車両用信号は千葉街道と鹿骨街道、同潤会通りに設置されている。

仲井堀通りから南方向に菅原橋交差点を見る。菅原橋交番の警官によると、同潤会通りから千葉街道に入るクルマが特に、迷ってスピードを落とす傾向があるという。
――11叉路はやはり日本一の「多叉路」でしょうか?
それはわかりませんが、テレビなどでも取り上げられて話題になったことはありますね。
――そもそもどうしてこのような複雑な交差点が誕生したのでしょうか?
もともと江戸時代からあった街道は千葉街道だけです。
やがて、田んぼのなかに鹿骨街道が整備されます。さらに同潤会通りや、街区をつくるときにできた小道が接続し、用水路の大部分も埋め立てられて道になり、現在の形になりました。
――道を聞かれることは多いですか? 迷う人もいると思いますが。
大きな道としては千葉街道と鹿骨街道のふたつで、あとは地元の方が通る道でしょう。交番もありますし、それほど困るようなことはない気がします。
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交差点のそばにある菅原橋交番の警官も、「環七通りや京葉道路など、大きな道に抜けられる道が多いこともあり、道を聞かれるようなことはあまりない」と話します。
ここまで複雑な交差点は、どのように交通整理されているのでしょうか。
意外にも事故は少ない そのワケとは?菅原橋交差点について、小岩警察署の交通規制係に聞きました。
――11叉路をどう交通整理しているのでしょうか?
特に変わったことはなく、信号で制御しています。しかし、もし仮に手信号で制御するとなれば、それはかなり難しいでしょう。
――事故は起きないのですか?
それが、不思議と起きないのです。少なくともここ3年間は聞いていません。青信号に従って交差点に進入したクルマが、「さてどう進んだらいいのだろう」と迷ってスピードを落とす傾向があり、周りのクルマの動きをよく見ながら進んでいるために事故が少ないのだと思います。
――この複雑さを解消しようとする計画はなかったのでしょうか? ずっとこのままですか?
新しい道がつくられていった一方で、旧道がつぶされなかったためにここまで変則的になったのだと思います。現在、千葉街道の拡幅とともに、この交差点も線形を改良する計画があります。

1909年の菅原橋交差点付近(時系列地形図閲覧ソフト「今昔マップ3」〔(C)谷 謙二〕にて作成)。

1936年の菅原橋交差点付近。現在の鹿骨街道ができている(画像:国土地理院)。

1975年の菅原橋交差点付近。用水路が埋め立てられ、仲井堀通りが現在の姿になっている(画像:国土地理院)。
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ちなみに、東京都大田区にある7叉路、その名も「七辻」交差点は、信号機もなく、「日本一 ゆずり合いモデル交差点」という看板が区によって立てられています。あまりに複雑な交差点だと、逆に全員が気を付けるため、事故が少ないのかもしれません。