クルマや鉄道など、「乗りもの好き」は男性が多いというイメージがあるかもしれません。そもそもなぜ男性は乗りものに引かれるのでしょうか。
近年、乗りものが趣味であることを公言する女性アイドルや芸能人を目にする機会があります。乗りもの好きの女性は、男性よりも珍しがられ、注目を集めるケースが多く見られますが、これは「乗りもの=男性の趣味」であるという印象によるものかもしれません。
趣味嗜好において性別による偏重はあるのか。写真はイメージ(2011年10月、恵 知仁撮影)。
小さい男の子が、鉄道やクルマのおもちゃ、アニメを好む様子はしばしば見られますが、なぜ男性は乗りものに引かれる傾向があるのでしょうか。発達心理学を専門とする、聖徳大学児童学部教授の相良順子さんに話を聞きました。
――男性は何歳頃から乗りものに興味を示すのでしょうか?
男の子はよちよち歩きを始める2歳前くらいから、クルマのような動くものに興味を示し始めます。そして3歳くらいになり、自分の性別がどちらかであるかを意識すると、子ども自身がクルマや電車のおもちゃで遊ぶことを「男らしい」と考えるようになります。すると、誰に教えられたわけでもなく、乗りもののおもちゃやテレビ番組などを自分から選び取るようになるのです。
――周囲の環境はどのような影響を与えるのでしょうか?
たとえば、電車に興味を示した男の子に電車のおもちゃを与えると、電車をますます好きになる可能性があります。逆に言うと、その男の子にぬいぐるみや人形を与えても、もともと興味がなければ、好きになることはあまりありません。
――女性に比べて男性のほうが乗りものに興味を持ちやすいのはなぜでしょうか?
生物学の観点では、ホルモンや脳の構造上の影響が挙げられます。妊娠8週目前後から胎内で性分化が起こり、男性は精巣がつくられると、男性ホルモンが多量に分泌されます。このホルモンの作用により、男性は動くものや大きいものに興味を持ちやすくなることが、近年の研究で明らかになってきています。実際に、先天性の病気によって胎児期に男性ホルモンを過剰に浴びた女の子が、男の子の好むような遊びへの興味を示すケースが多く報告されています。
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この傾向は人間以外の霊長類にも見られ、たとえばサバンナモンキーの前にいろいろなおもちゃを置くと、オスはクルマなど人間の男の子に向けたおもちゃを選ぶという、テキサスA&M大学の研究結果もあります。男性が大きな動く「乗りもの」の姿に引かれるのは、ホルモンの影響による本能的なものなのかもしれません。ちなみに、男性ホルモンの影響をほとんど受けない女性は、柔らかいものや丸いものを好む傾向にあるそうです。
人間は生まれたときから、周囲の環境や生物学的な要因から複合的な影響を受けています。もちろん個人差はありますが、こうしたさまざまな影響が、男性の「乗りもの好き」に大きく関係しているといえそうです。
子どものために、よく見ると「あるはずのもの」がない「トミカ」

タカラトミーのミニカー「トミカ」シリーズのほとんどの車種には、子どもが遊ぶときの安全性からドアミラーがなく、とがったパーツも極力なくしている(2017年7月、中島洋平撮影)。