東日本の高速道路のうち、特に長い渋滞が発生する傾向にあるのが関越道の埼玉県内区間です。なかでも高坂SA付近や花園IC付近は、2017年夏休みも激しい渋滞が発生しましたが、どのような特徴があるのでしょうか。
年末年始やゴールデンウイーク、お盆期間などを前に、全国的に高速道路の渋滞予測が発表されますが、関東で特に渋滞距離の長い予報が出ることが多い区間のひとつに、関越道の埼玉県内区間があります。
渋滞する関越道上り、東松山IC付近(画像:写真AC)。
2017年末から2018年始にかけての予測でも、1月2日(火)12時から23時のあいだに上り線で高坂SA(東松山市)付近を先頭に35kmとされています。2017年夏休み期間の実績値では、下り線で8月11日(金)に花園IC(深谷市)付近において48.4km、上り線で8月6日(月)に鶴ヶ島IC(鶴ヶ島市)付近において50.2kmと、NEXCO東日本のなかでも特に長い渋滞が発生しました。関越道における渋滞の特徴について、NEXCO東日本の「渋滞予報士」、外山(とやま)敬祐さんに聞きました。
――関越道の渋滞はどのような特徴があるのでしょうか?
休日や、年末年始などの交通混雑期に多く発生しています。高坂SA付近や花園IC付近における渋滞が大きな割合を占めており、いずれもサグ(下り坂が上り坂に変わる箇所)での速度低下が原因です。上下線とも、一番のボトルネックは高坂SA付近、次点が花園IC付近となります。
また冬季は、雪の降り方によって渋滞が増減するという特徴があります。関越道沿いには多くのスキー場があるためです。暖冬だった2015年度は、関越道の渋滞も例年より少なくなりました。

高坂SA付近、花園IC付近は上下線ともに渋滞ポイントとされている(画像:NEXCO東日本)。
――下り線と上り線でどのようなちがいがあるのでしょうか?
下り線は出かける際の出発時間が人によってある程度ばらつくため、ふだんの休日であれば、上り線ほど渋滞が大きくならない傾向にあります。一方の上り線は、帰宅のタイミングが夕方の時間に集中しやすいため大きな渋滞に発展します。
渋滞名所「高坂」「花園」対策は? 1月2日は特に注意!――高坂SA付近や花園IC付近について、これまでにどのような対策をされてきたでしょうか?
花園IC付近では2011(平成23)年3月、上り線に「ゆずり車線」(編集部注:遅いクルマが速いクルマを避ける登坂車線と同じようなもの)方式の付加車線を整備し、一定の効果をあげました。現在はこの付加車線と花園ICからの加速車線(合流車線)を連結する工事を行っています。また下り線でも、花園ICへの減速車線(流出車線)を延伸する工事を行っています。
高坂SA付近については、高速道路会社や国、警察、地方自治体などで構成される「ボトルネック検討ワーキンググループ」において、高坂SAおよび坂戸西スマートIC(埼玉県坂戸市)に付加車線を設置する対策案が打ち出されました。渋滞緩和に向け鋭意取り組んでいるところです。
――サグは全国にたくさんあると思いますが、どこでも渋滞しやすいのでしょうか?
確かに、サグでの速度低下を原因とする渋滞は全国的に見られますが、渋滞するサグとしないサグがあります。「サグ渋滞」の最も厄介なところは、ドライバーが坂の変化に気づきにくいため、無意識のうちに速度を落としてしまうことです。サグの視認性、つまり坂の変化を認識しやすいかどうかは、勾配変化量(坂がどの程度変化するか)と勾配変化位置(坂がどこから変化するか)の視認性が関係しますが、これらは道路の線形や遮音壁の有無といった周辺環境によっても異なります。

高坂SAおよび坂戸西スマートIC付近への付加車線設置が検討されている(画像:NEXCO東日本)。

渋滞ポイントに設けられている「速度回復表示板」「速度低下抑制標識」(画像:NEXCO東日本)。

近年設置を進めているという「渋滞ポイント標識」(画像:NEXCO東日本)。
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外山さんによると、NEXCO東日本では、渋滞するサグに速度回復を促す表示板や標識を設けるほか、『渋滞ポイント』と書いた標識も順次設置しているとのこと。「こうした標識を見かけたら、無意識な速度低下に注意して運転していただければと思います」と話します。
ちなみに、NEXCO東日本では1月2日を「渋滞の特異日」と呼んでいるそうです。2018年のように1月4日に仕事始めとなる年が多いことから、最後の1日を自宅でゆっくり過ごそうと、2日がUターンラッシュのピークになるほか、初売りや初詣の移動も活発になるため、上り線だけでなく下り線でも渋滞が発生しやすいそうです。
【グラフ】年末年始、1月2日は下りも混雑!

NEXCO東日本関東支社管内における過去3年間の年末年始渋滞実績値と2017年度予測。1月2日は上りだけでなく下りも混雑する(画像:NEXCO東日本)。