列車に乗っていて、「ガタンゴトン」という音を聞く機会が減りました。音と振動を減らすため、レールに「ロング」と「斜め」の改良が加えられたためです。

レールの長さは25mが基本

 列車に乗っていると、ときおり「ガタンゴトン」「ダダンダダン」といった音が聞こえ、列車が上下に揺れます。レールとレールが接続する部分(継ぎ目)の隙間に、車輪が当たるためです。

列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロ...の画像はこちら >>

レールとレールの継ぎ目。わずかに隙間がある(2018年2月10日、草町義和撮影)。

 工場で製造されるレールの長さはさまざまですが、現在は25mの長さで出荷されることが多く、業界では25mのレールを「定尺(ていしゃく)レール」と呼んでいます。

 この定尺レールを金具で接続したとき、継ぎ目で発生する「ガタンゴトン」の音が聞こえる間隔で列車の速度を推測することができました。1秒ごとに「ガタンゴトン」が聞こえれば、レールの長さは25mですから速度は25m/s。時速に直せば90km/hです。

 しかし、最近は列車に乗っても「ガタンゴトン」という音を聞く機会が少なくなりました。

全長60kmのレールも! 「長いレール」で音と振動が減少

 レールの継ぎ目は多ければ多いほど、音や振動の発生する回数が増えます。とくに新幹線のように高速運転を行うと、音や振動も大きくなります。また、列車の乗り心地は悪くなり、線路の周囲にも大きな音や振動をまき散らしてしまいます。

列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロング」と「斜め」

東北新幹線では長さが60kmもあるロングレールが使われている(2011年11月、恵 知仁撮影)。

 そこで考えられたのが、レールをできるだけ長くすること。これにより継ぎ目自体を減らし、音や振動の発生源を少なくしたのです。

 1本の長さが200m以上のレールを「ロングレール」と呼びます。全長2kmの区間に定尺レールをそのまま設置すると、継ぎ目は79か所。200mのロングレールを使えば、継ぎ目はわずか9か所に抑えられます。

 ロングレールは高速運転を行う新幹線で、とくに普及しています。東北新幹線・いわて沼宮内~八戸間で使われているロングレールは、なんと全長60.4km。東海道本線・東京~平塚間の63.8kmに匹敵します。

ロングレール、どうやって運ぶ?

 しかし、60kmに及ぶレールを製造して工場から線路の敷地まで運ぶのは不可能です。そのため、短いレールをたくさんつくって現地に運び込み、その場で継ぎ目を溶接して1本のロングレールにしています。

列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロング」と「斜め」

総武本線(越中島支線)を走るレール輸送列車。
この貨車は定尺レール用だが、複数の貨車をまたいでロングレールを搭載できる貨車もある(2014年6月、草町義和撮影)。

 ただ、200m程度なら列車を使って運ぶことも可能です。レール搭載用の荷台を設けた貨車を10両くらい連結し、複数の車両をまたぐようにしてレールを載せます。

 直線を走るだけならともかく、カーブに差し掛かったらレールが貨車からはみ出してしまうのでは、と思うかもしれません。しかし、レールは意外と弾力性があり、貨車に載せたレールもカーブに合わせて曲がってくれるのです。

 とはいえ、載せただけでは曲がりませんから、レール輸送用の貨車にはレールを支えて誘導するための棒(ガイド)が設置されています。

「レールの斜めカット」で乗り心地向上

 レールの継ぎ目をなくせばなくすほど音や振動が減り、乗り心地も良くなります。しかし、継ぎ目を完全になくすことはできません。

列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロング」と「斜め」

線路を斜めに切ってつないだ伸縮継目(2017年10月、草町義和撮影)。

 レールは温度の変化で伸び縮みします。とくに猛暑のときなどは、レールが膨張して曲がってしまうこともあります。伸縮するエネルギーの「逃げ場」として、ある程度は継ぎ目を設けなければならないのです。

 そこで、線路の継ぎ目に「伸縮継目」と呼ばれる技術が使われることも増えました。レールの先端を浅い角度で斜めに切り取って外側に伸ばし、もう一方のレールを斜めの線に沿って密着させます。こうするとレールが膨張しても外側に伸びるため、曲がりにくくなります。また、斜めに接続させると段差や隙間も少なくなり、騒音や振動を減らすことができます。

 このように、騒音の軽減や乗り心地を良くするための技術開発が進み、「ガタンゴトン」の音が少なくなったのです。

【写真】「ガタンゴトン」ではなく「ダンダン」の場合も

列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロング」と「斜め」

車軸が4本(2軸台車ふたつ)ある鉄道車両は「ガタンゴトン」「ダダンダダン」だが、2軸の貨車が多かった昔の貨物列車は「ダンダン」という音を発していた(2005年5月、草町義和撮影)。

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