2006年放映のアニメが、12年の時を経てブルーレイBOX化、しかも関係者が集まりトークイベント開催という、ファンにとっては奇跡のような展開でしょう。アニメ『よみがえる空』発売記念イベント、大盛況でした。
2018年7月14日(土)、都内でアニメ『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』のブルーレイBOX発売記念イベントが開催されました。
2006年のテレビ放映から12年を経てブルーレイBOXの発売が決まったアニメ『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』(画像:バンダイナムコアーツ)。
航空自衛隊には、航空機事故や大規模災害、さらには遭難などさまざまな事態に際して捜索救難を行う「航空救難団」という専門部隊が存在します。「よみ空」の通称で知られるアニメ『よみがえる空』は、そんな救難団に属する部隊のひとつである、石川県の航空自衛隊小松基地に所在する「小松救難隊」で、戦闘機パイロットを目指しながらも念願かなわず救難ヘリコプターUH-60Jのパイロットとなった主人公の内田一宏(CV:宮崎一成)が、さまざまな経験を通して成長していく姿が描かれるリアリスティックレスキュードラマです。アニメ自体の放送は2006(平成18)年でしたが、2018年11月22日に本作のブルーレイBOXが発売されることとなりました。

アニメ『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』より(画像:バンダイナムコアーツ)。


イベントではトークパートが二部構成になっていて、パート1は制作に携わったスタッフによるトーク、パート2では元航空自衛隊救難隊員の方々を交えたトークとなっていました。パート1では、プロデューサーの杉山潔さん、制作プロデューサーの松倉友二さん、CGを担当した松浦裕暁さんと河野達也さん、プロモデラーの二宮茂幸さんが、制作の裏話なども交えながら本作についての想いを語りました。
リアリティを追求した「よみ空」「(DVDは)当時ぶっちゃけ売れなかったので(笑)」
と、いきなり大胆な発言で会場の笑いを誘いつつ、「自分としてはアニメ史に残る良いものを作ったという自負がありました」と語る制作プロデューサーの松倉さん、このとき会場に集まった百人近いファンの方々は、心の中で大きくうなずかれたと思います。

『よみがえる空』トークイベントパート1の様子。写真左から二宮茂幸さん、松浦裕暁さん、河野達也さん、松倉友二さん、杉山潔さん(画像:バンダイナムコアーツ)。
さらに、話の内容は本作でのリアリティの追及へと移っていきます。
また、杉山さんによれば、ヘリコプターの上についているローターブレード(回転翼)も、エンジンが止まっているときには下に垂れ下がっていて、これがエンジンを回してローターも回転を始めると、徐々に遠心力と揚力によって上反りになっていく様を正確に描いているそうです。
本作は航空機ファンからの人気も高いことで知られていますが、その理由のひとつにはこうした制作スタッフの方々によるリアリティの追及があるのかもしれません。
救難部隊のなかの人はじめ、関係者が感じる「よみ空」の魅力パート2では、本作の舞台である小松救難隊で隊長をつとめられた櫻田秀文さん、いち早く現場に駆けつけて要救助者を発見するための航空機U-125Aのパイロットなどをつとめられた藤原明治さん、要救助者を救助する救難員をつとめられた栗燒哲也さん、軍事評論家の岡部いさくさん、雑誌「航空ファン」編集次長の神野幸久さん、そしてパート1に引き続いてプロデューサーの杉山潔さんが、実際の救難活動のお話も交えながら、本作への想いや救難活動の現実を語りました。

トークイベントパート2には、空自OBも出演。写真前列右から、櫻田秀文さん、藤原明治さん、栗燒哲也さん(2017年7月14日、乗りものニュース編集部撮影)。
元救難員の栗燒さんによれば、本作の描写は「映像も内容も非常にリアル」だといいます。また、救難隊だけではなく救助される側(サバイバー)の立場もしっかり描かれている点が非常に役立つのではないかとも指摘されました。
一方で、元パイロットの藤原さんは、「(もともとは)航空自衛隊でしか飛ばせない飛行機である戦闘機を操縦することを目指した」という自身の経験を踏まえながら「(戦闘機パイロットを目指していた)主人公の内田三尉(三等空尉:自衛隊の階級)の気持ちが分かる」といいます。戦闘機部隊ではなく救難部隊のパイロットとなった当初は「自分には戦闘機はダメなのか」という気持ちがあったそうですが、徐々に救難という任務のやりがいや尊さを感じていき、「最終的には救難が大好きになった」そうです。
さらに、櫻田さんは、本作を「若者が社会に出て直面する葛藤を描いていて、メッセージ性のある本当に素晴らしい作品」と高く評価しました。
トークショーではまた、実際に自分が救助される側になったらどうすればいいのか、という話題にも触れられました。2011(平成23)年の東日本大震災や2015年の関東東北豪雨、さらに2018年の西日本豪雨など、私たちの生活はいつ自然災害によって脅かされるかわかりません。もしこうした災害に巻き込まれてしまったときに、どうすれば救難隊の航空機などに発見してもらいやすくなるのでしょうか。
まず、前提として「上空を飛行する航空機から地上の人間を発見するというのは大変難しい」(藤原さん)そうです。そこでじっとせずに色のついた布を振って動きをつけたり、ライトや鏡で光を発したり、さらにSOSでも何でもいいので文字を書くなどして、「とにかく救難員の目に留まることが大切」(栗燒さん)だといいます。ただし、火をつけて煙を出すというのは火災を引き起こす可能性もあるので危険とのことです。

航空自衛隊のUH-60J(手前)とU-125A(画像:航空自衛隊)。
元救難隊員の方々もそのリアリティさと内容に太鼓判を押す「よみがえる空 RESCUE WINGS」のブルーレイBOXは、2万2800円(税別)で2018年11月22日(木)発売です。また、映像特典として今回の発売記念イベントの様子も収録されるとのことです。