八戸から苫小牧へ向かう「シルバーフェリー」で、トラックを対象にETCを活用した乗降実験を実施します。乗船手続きを簡略化できますが、シルバーフェリーと入れ替わるように、ETCを活用した乗船サービスを終了する会社もあります。

ETC利用も、窓口での乗船手続きは必要

 川崎近海汽船が運航する八戸~苫小牧間の「シルバーフェリー」で、乗降にETCを活用する実験が行われます。開始日は2019年3月中を予定しているとのこと。

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2018年4月に就航したシルバーフェリーの「シルバーティアラ」(画像:川崎近海汽船)。

 対象となるのは、八戸港から乗船する特定の業者のトラックです。ETCのセンサーがフェリーターミナル入口と、船の車両積載口付近に設置されます。従来は搭乗者の氏名や運送会社、車両の情報を記入した乗船申込書と車検証を乗船窓口に提出し、運賃を支払い乗船券を発行してもらう流れですが、ETCの活用でどう変わるのでしょうか。川崎近海汽船に聞きました。

――ETCにより、乗船手続きが不要になるのでしょうか?

 乗船申込書をご記入いただく必要がなくなります。車両の大きさや会社などがETCで読み取られ、その情報が乗船窓口に送信されますので、窓口で運賃をお支払いいただき、車両などの情報を印字した乗船券をお渡しします。

――ドライブスルーで乗船はできないのでしょうか?

 今回の実験は、機器が正常に車両の情報を読み込めるかを試すもので、窓口での乗船手続きは必要になります。将来的には決済もETCで行うほか、乗用車にも対象を広げる計画があります。

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 一般的にフェリーの乗船手続きは時間がかかることもあり、川崎近海汽船では事前予約をしている場合でも、車両を載せる際は出航の90分前までに乗船窓口へ来るよう案内しています。

実験を踏まえて本運用に移行すれば、集合の目安時間も変わってくるかもしれません。

「フェリーでETC」の先駆、サービス終了のワケ

 シルバーフェリーと入れ替わる形で、ETCが使えなくなるフェリーもあります。神戸~高松間を運航する「ジャンボフェリー」です。同社は日本で初めて、2006(平成18)年から「IBAサービス」と呼ばれるETCを用いた決済サービスを行っていましたが、2019年3月末でこれを終了します。

 IBAサービスは、コインパーキングなどの会社であるパーク24が管理運営するもの。車検証情報とクレジットカード情報を登録すると、IBAサービスの会員証が発行され、(新規会員登録はすでに終了)その会員の車載器に限り、フェリー乗り場でETCによる決済が行われ、窓口での手続きなしで乗船が可能です。ジャンボフェリーによると、「『同乗者無料』などの割引をしていることもあり、利用はまずまず」といいますが、パーク24がIBAサービス自体を終了するのにともない、利用できなくなります。

「フェリーでETC」は広まるか 乗船手続き簡略化、ETC以外でも可能?

ジャンボフェリーが発着する高松港(画像:photolibrary)。

 IBAサービスは、街なかの駐車場などでETCによる決済を可能にするものとして誕生しましたが、2019年2月現在で使えるのは、ジャンボフェリーと、神奈川県の有料道路「アネスト岩田ターンパイク」(箱根ターンパイク)における通行料金決済のみです。ジャンボフェリーによると、IBAサービスが利用しているのはETCの情報のごく一部(利用車番号のみ)とのことで、ETCとは別のシステムを構築、運用するコストがかかり、ユーザーにとってもETCとは別の会員登録が必要になるなどの手間から、あまり普及しなかったといいます。

 とはいえ、ジャンボフェリーでは13年間の知見を活かし、ETC決済に近いサービスを検討しているといいます。ただ、それはETCにはこだわらないとも。

「現在はいろいろな決済方法があります。車両のサイズや運賃を割り出すのは、お客様の申告によらずともできるので、手軽な方法を検討します」と話します。

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