アメリカの「エリア51」といえば、UFO関連の話題になるとその名が挙がる、日本でも広く知られる場所です。さまざまに噂されますが、実際どのようなところなのでしょうか。
世界中のUFOマニアが注視する「エリア51」とは、アメリカ合衆国のネバダ州にある、アメリカ空軍の基地がある地域(あるいは基地そのもの)のことです。周囲を小高い山と砂漠に囲まれ、人里離れた場所に位置することから、中で何が行われているのか、謎のベールに包まれているのです。
謎すぎる荒野の「ブラック・メールボックス」は名物のひとつ。エリア51への道しるべでもある(武若雅哉撮影)。
1947(昭和22)年7月、アメリカのニューメキシコ州にて、現場に近いロズウェル陸軍飛行場(当時。現・ウォーカー空軍基地)が、「墜落した空飛ぶ円盤を回収した」というプレスリリースを出しました。世に広く知られる「ロズウェル事件」の発端です。
数時間後、「回収されたのは観測用気球だった」とプレスリリースは訂正されましたが、一方でやはりアメリカ軍はUFOやエイリアンを極秘裏に回収しており、それらはエリア51で保管されていると噂されました。そして「へき地に基地を作る以上、何かしらの“見られたくない”研究や実験が行われているのではないか」と、数多くの噂が噂を呼び、21世紀になったいまも、多くのUFOマニアが訪れる場所となっています。
エリア51とされる地域には、アメリカ軍のグルーム・レイク空軍基地があり、当然ながら基地へ続く道もあります。通常であれば正門側へアプローチするのが筋でしょうが、今回はエリア51に裏門側から接近してみました。
筆者(矢作真弓/武若雅哉:軍事フォトライター)は、戦闘機が谷間を勢い良く飛び抜ける場所として有名なデスバレー国立公園での撮影を終了し、そこから北上したトノパーという町を経由して、ルート6(アメリカ国道6号線)を東へ向かいました。途中にあるワーム・スプリングスという町から、375号線(エクステーターレストリアル・ハイウェイ)に乗り換え、進路を南に取ります。この道こそが、エリア51の「裏門」へと通じる、知る人ぞ知る道なのです。

何もないまっすぐな道をひたすら進む(武若雅哉撮影)。

道中には「牛、放牧中」と注意を促す看板が(武若雅哉撮影)。

エリア51のみやげ店も見られる(武若雅哉撮影)。
道中はひたすら続く一本道で、すれ違うクルマの数は非常に少なく、時折、放牧されている牛や馬を見かけるくらいでした。日中でも交通量は少なく、夜間はほぼなくなるため、星が非常にきれいに見えるといいます。満天の夜空に輝くのは星だけではなく、飛行機や人工衛星、そしてUFOもあるいは、と思わせてくれます。
375号線をしばらく南下すると、右手に黒い物体が見えてきました。マニアのあいだで有名な「ブラック・メールボックス」です。

エクステーターレストリアル・ハイウェイの看板。

荒野にたたずむ「ブラック・メールボックス」(武若雅哉撮影)。

大きな南京錠で施錠してあるため、開けることはできなかった(武若雅哉撮影)。
荒野の真ん中に、ポツンと立つメールボックス(郵便受け)。周囲の見える範囲に人家はありません。いったい誰が何のために設置したのでしょうか。UFOマニアたちによると、「このメールボックスに手紙を入れると、エイリアンに届く」と噂されているようですが、筆者が訪れた時に見たメールボックスは、投函口もないただの黒い箱でした。しかも大きな南京錠で施錠されているので、中に何かを入れることも、出すこともできません。
横には、壊れたプラスチック製の「白いメールボックス」もありましたが、こちらはすでに使われていないようです。
世界中から訪れたマニアたちによって、落書きされたメールボックス。実は、このメールボックスこそが、今回の目的地であるエリア51の「裏門」への道しるべだったのです。
果てしなく続く荒野の先に「例のトラック」「ブラック・メールボックス」がある場所は、375号線から枝分かれする形のT字路になっています。

エリア51の周辺図。ラスベガスの北西に位置する一帯(乗りものニュース編集部作成)。
砂利道の幅は6mほどで、すれ違うクルマもいないため、道路の真ん中を快適に走り続けることができました。
しばらく進み、最初の十字路を越えてさらに南下すると、少し幅の広い十字路にぶつかりました。交差しているのは、「裏門」まで続く「51ロード(グルームレイク・ロード)」です。右折し、南西に向かって走り出します。
ずっと砂利道が続き、途中で軽くアップダウンします。よく見ると、水はけを良くするための暗渠(あんきょ)が設置されています。このような雨の少ない地域に、しかも複数、いったい何のための暗渠なのでしょうか。謎が深まります。
やがて、何もない荒野に低いフェンスが姿を現しました。そのフェンスの看板には、「この先はアメリカ空軍の管理下」である旨が書かれています。撮影することはできませんでしたが、丘の上には監視カメラも設置してありました。
そのまま道を進むと、小高い丘の上に白いピックアップトラックが停まっています。このトラックこそが、「ブラック・メールボックス」に次いで、UFOマニアのあいだで広く知られる「例のトラック」です。
24時間監視が続く裏門、帰り際には「アレ」が来た…!こちらの様子をうかがうように停まる「例のトラック」を横目に奥へ進むと、アップダウンする道になり、いったんトラックの姿が視界から消えます。さらに500mほど進むと、目の前に警告看板が飛び込んできました。

エリア51の「裏門」にある警告看板。この先が正真正銘の「エリア51」で、関係者以外は入れない(武若雅哉撮影)。
この警告看板には「不法侵入者には1000ドルの罰金が科せられる」「ドローン禁止」「写真撮影禁止」などの警告文が書かれています。ここから先が「エリア51」の施設であるということを示唆する内容であり、筆者はついに「裏門」と呼ばれる場所にたどり着いたようです。
おもむろに周囲を見渡してみると、先ほどまで北上していた筆者のクルマに正対していた(南を向いていた)「例のトラック」が、今度はゲートの方(北)に向いています。

「例のトラック」。今回は白だったが、いつもは黒いトラックがいるという(武若雅哉撮影)。

南を向いていたトラックが、いつのまにかこちら(北)側を向いていた(武若雅哉撮影)。

空軍施設があることを示す看板(武若雅哉撮影)。
敵意が無いことを示すために、筆者が車内からトラックに向かって手を振ってみるも、特に反応はありません。警告看板の横には監視カメラがこちらを向いており、どうやら遠隔で様子を見ているようです。ただならぬ重圧を感じた筆者は、長居は無用と、2、3分ほど警告看板の前で様子をうかがってから、乗って来たクルマをUターンさせ、「裏門」を後にしました。
特になにごともなく375号線まで引き返し、そこから東方、93号線方面へ走り出した筆者のクルマ。後方を確認しても、追いかけてくるようなクルマはいません。何かしらの発信機を取り付けられたような形跡もありません。どうやら、無事にエリア51から離れることができたようです。
と、ひと息ついた約15分後のこと。後方からなにやら、低空を飛翔するものが近寄ってきました。「まさかUFO!?」と思い確認すると、なんと、アメリカ空軍のF-16戦闘機が、筆者の乗ったクルマを追いかけてきたのです。
F-16は筆者のクルマの右側100mほど横を低空で飛び抜け、右旋回して離れていきました。まさかの展開に、カメラを用意できなかったのが悔やまれます。
果たして、F-16はたまたま通過しただけなのでしょうか、それとも筆者の行動を監視しに来たのでしょうか。
UFOが見られなかったのは残念ですが、F-16に追われるというスケールの大きい体験ができた、エリア51の裏門探訪でした。
【写真】お約束すぎる「エイリアン」に遭遇

道中に遭遇した、巨大なエイリアン。日本なら「エイリアンまんじゅう」などが売っていそうな、エリア51近くのみやげ店にて(武若雅哉撮影)。