近年、公用車に「カーシェア」を取り入れる自治体があります。公務で使わない時間に一般の観光客も使えるようにしたり、公用車の不足を補ったりと、活用方法は様々です。
近年、自治体が公用車に「カーシェア」を取り入れる動きがあります。
沖縄県名護市役所に設けられた「NISSAN e-シェアモビ」のステーション(画像:日産)。
たとえば沖縄県名護市は2019年3月26日(火)、日産が展開するカーシェアサービス「NISSAN e-シェアモビ」を導入し、市役所の駐車場に日産のEV(電気自動車)「リーフ」を4台配備。平日は市役所の公用車として利用、公務の時間外である金曜日(または祝日の前日)の19時から、月曜日(または祝日の翌日)7時まで、一般会員も利用することができます。
名護市企画調整課によると、これは1年間を目途とした実証実験で、車両は市が所有するものではなく、日産からのリース車両とのこと。カーシェア導入の目的について、次のように話します。
「公用車不足を補いつつ、観光客の2次交通(空港や駅、バスターミナルといった拠点から観光地までの移動手段)対策を兼ねるという、複数の問題を解決する手段として導入しました」(名護市企画調整課)
名護市によると、公用車を新たに所有するより低コストで、同市役所の目の前に那覇方面からの高速バスが停車するバス停があり、カーシェアのステーションとしての利便性もよいとのこと。「e-シェアモビ」をPRしたい日産ともメリットが合致し、導入に至ったといいます。
一方、公用車の不足を補う目的でカーシェアを導入する名護市の事例とは反対に、公用車を「減らす」目的で導入する自治体もあります。
カーシェアで公用車削減、しかし懸念も2018年10月には、東京23区の自治体で初めて、世田谷区が公用車にカーシェアサービス「タイムズカープラス」を導入。ただこちらは、一般のカーシェアサービスを公用に使う形です。
「庁舎の建て替えにあたり、公用車の台数を減らさなければいけないことから、カーシェアでバランスを取ろうと試行的に導入しています。
現在は一部職員を対象に、カーシェアの使い勝手や、費用対効果を検証しているとのこと。ただ、カーシェアの利用にあたっては一人ひとりに会員カードを発行し、それぞれが利用予約をしなければならないうえ、予約が埋まっていれば使えません。「各課の業務に必要な(公用車の)台数は保有しなければなりませんし、それを減らしすぎれば、災害時などに機動的な対応ができなくなる恐れもあります」といい、使い勝手をリサーチしながら今後の導入を検討していくとしています。
「タイムズカープラス」を展開するパーク24によると、同社では2010(平成22)年から翌年にかけて行われた福岡市による公用車のカーシェアを皮切りに、自治体との連携を積極的に進めているといいます。
同社によると、(マイカー利用の削減による)環境への配慮、EVの普及促進、公用車の維持管理コスト削減、観光客へ向けた二次交通の提供など、自治体がカーシェアを導入する理由は様々。前出した名護市のように、公用車の維持管理コスト削減と二次交通の提供を目的としてカーシェアを導入し、その後も公用車の増車をせず職員がカーシェアをうまく利用している自治体もあるそうです。
【写真】鉄道利用でカーシェア優遇 「PASMO」履歴活用

小田急は「タイムズカープラス」と連携し、小田急線を利用してカーシェアに乗り換える際、「PASMO」の乗車履歴からカーシェア利用料を割引する取り組みを行っている(画像:パーク24)。