都営バスの新型車両「フルフラットバス」が登場し、半年が経ちました。車内後方に段差が存在する従来型「ノンステップバス」の課題を解決し、最後部付近まで床面をほぼフラットにしたこのバス、都内で増えています。

「段差なし」「奥まで詰めやすい」がメリット

 都営バスで、「フルフラットバス」と呼ばれる新型車両が徐々に増えつつあります。前扉から最後部座席付近まで通路の段差をなくしたバスで、2018年12月に東京都交通局が日本で初めて導入したものです。

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小滝橋車庫と新橋駅前を結ぶ「橋63」系統のフルフラットバス(2019年4月、乗りものニュース編集部撮影)。

 都営バスで主流の「ノンステップバス」は、前扉から中扉付近までは段差がないものの、そこから車内後方にかけては段差があり、床が少し高くなっています。エンジンなどの位置関係によるものですが、フルフラットバスはエンジンルームを車体の背面へ垂直に配置することで、段差を解消しました。なお、一般的な日本の路線バス車両は国産ですが、フルフラットバスはスウェーデンのスカニア製です(車体の製造はオーストラリアのボルグレンが担当)。

 フルフラットバスに期待されている役割は、大きくふたつ。ひとつは車内混雑の緩和です。車内の中ほどに段差のあるノンステップバスでは、立っている人が段差の手前に留まる傾向があり、前方ばかりが混むことで乗降に時間を要し、遅れにもつながっていました。

 もうひとつは、段差につまずくことによる転倒の防止。いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる「超高齢化社会」に突入する2025年を見据え、路線バスの安全性を高める狙いがあります。

 東京都交通局が2018年12月、初めてフルフラットバスを導入したのは、大塚駅と錦糸町駅を結ぶ「都02」系統でした。

乗客の多さは都営バスでもトップクラスの系統で、東京都交通局によると、高齢の利用者も多く、フルフラットバスの導入で効果が期待できる路線のひとつとして選んだそうです。

増備が進むフルフラットバス、都バス以外は?

 東京都交通局によると、フルフラットバスはデビューから約半年が経った2019年5月9日(木)時点で、29両まで増備されているとのこと。いまでは「CH01」(新宿駅西口~都庁循環)、「上69」(小滝橋車庫~上野公園)、「草63」(池袋駅東口~巣鴨駅~浅草寿町)、「渋66」(渋谷駅~阿佐ヶ谷駅前)など、車両が配置された各営業所の所管路線で運行しているといいます。

 ただ、フルフラットバスは既存の車両より全長が60cm長いほか、ウインカーレバーが運転手から向かって左側にあるといった、輸入車ならではの特徴もあります。そのため、車両が配備されたとしても運転の習熟訓練が必要で、それが済んだところから運行しているそうです。

都バスの新顔「フルフラットバス」導入進む 人が中で詰まる路線バスの課題解決なるか

「フルフラットバス」は、従来の都営バスよりも車体に白い部分が多い(2018年12月、中島洋平撮影)。

 東京都交通局によると、ラッシュ時における利用状況や、乗客からの意見は現在検証中とのこと。今後、検証や改良を進め、導入の拡大を検討していくものの、具体的な増備計画は未定だといいます。

 メーカーであるスカニア・ジャパンも、「本格的な運行が始まったばかりでもあり、これから様々な意見を集め、今後の販売に生かしていきたい」としています。ただし、都営バス以外での導入予定は、現在のところないとのこと。フルフラットバス、しばらくは「東京ならでは」の存在でありそうです。

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