クルマの運転で、車庫入れ時などのバックがどうにも苦手という人がいます。苦手意識の原因は、技術的なことというより、物事の捉え方に由来するという指摘もあります。
クルマの運転で、車庫入れ時などのバックに苦手意識を持つ人が一定数いるようです。コインパーキングの「タイムズ」などを展開するパーク24(東京都千代田区)が2018年に実施し、会員8930人から回答を得た運転テクニックについてのアンケート結果では、運転が「上手ではない」と答えた人のうち、27%が苦手な運転技術として「バック」を、22%の人が「駐車」を挙げています。
誘導を受けてバックで車庫入れするイメージ(画像:Satjawat Boontanataweepol/123RF)。
ペーパードライバー講習や免許の再取得に向けた教習を、25年以上にわたり行ってきたフジドライビングスクール(東京都世田谷区)の田中さんによると、このことは物事の捉え方が影響しているといいます。詳しく話を聞きました。
――バックに苦手意識を感じる原因はあるのでしょうか?
バックが苦手という人は、「空間的に物事を捉えるのが苦手」という人に多いです。空間把握に長けている人は、外から見たクルマの動きを想像して、「このあたりからハンドルを切れば、クルマがこう動いて車庫に入る」ということを感覚として掴めるのですが、その想像ができず、ハンドルを右に回せばいいのか、左に回せばいいのかわからなくなるのです。
逆に、このような人は言語能力に長けている傾向があり、たとえば道の覚え方などでも違いが見られます。空間的に物事を把握する人は、頭のなかに地図を想像し、空間を上から把握してだいたいのルートを覚えるのに対し、言語的に物事を把握する人は、「〇〇の位置までまっすぐ行き、そこの角を曲がって……」と、言葉と記憶で覚える傾向があります。
「苦手の克服」は可能なのか?――教習ではどう教えているのでしょうか?
「この位置まで来たら停まって、ハンドルをめいっぱい左に切って下がります」というように、なるべく情報量を少なくして、クルマの「動き」ではなく、「動かし方」を教えます。このように言語と経験によって「ここでこうやればうまくいく」と掴めたら、その感覚を長く記憶する人もおり、5年後くらいに「あの方法でこんなにうまく車庫入れするのか」と、感心することもあります。
逆に、空間把握に長けている人は、こうした教わり方を嫌う傾向です。
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田中さんによると、自宅の駐車場にバックで入庫するのに目印をつけてほしいと人に呼ばれ、道路標識のポールを目印にハンドルを切る方法を教えたところ、後日に道路工事でそのポールが移設されたため、別の目印をつけてほしいと再度呼ばれたこともあるとのこと。それほど、バックに難しさを感じる人がいるようで、「苦手の克服には、かなり覚悟して練習が必要でしょう」と話します。

車庫入れを補助するバックモニターのイメージ。カメラ映像を合成し、クルマを上から見たような映像を表示するものもあるが、こうしたモニターに頼らない人も多いという(画像:Dmitry Guldin/12RF)。
「これは一種の個性ですので、免許を取る前から、人の運転を見てイメージができ、いざ教習でいきなり車庫入れができてしまう人もいます。一方で、苦手意識を持っていた人でも、入庫のコツを言葉で覚えて何度もやっているうち、クルマの動きのイメージに変換されて、ほかでも応用できるようになるケースもあります」(フジドライビングスクール 田中さん)
バックが苦手という人は、ふだんスーパーの駐車場などを利用する際にも、店の入口から遠い駐車マスなど、なるべくクルマ通りが少ない場所を選んで、何度もトライするのがいいと田中さんは話します。
【写真】安心してください「自動で駐車」

メルセデス・ベンツの一部車種に搭載されている「アクティブパーキングアシスト」のイメージ。ディスプレイに駐車可能スペースが表示され、OKを選択すると自動で駐車を開始する(画像:メルセデス・ベンツ日本)。