JALがエンブラエル170型機、190型機の整備士訓練について、仮想現実(VR)を試験的に導入。市販PCで訓練可能で、コックピットはミリ単位で再現されているほか、首や手、目の動きにも追従。
JAL(日本航空)が2019年7月17日(水)、仮想現実(VR)を活用した整備訓練を報道陣に公開しました。エンブラエル170型機、190型機の2機種において、一等航空整備士の資格を取得する際の訓練の一部として、試験的に導入するものです。
VR整備訓練の様子(2019年7月17日、乗りものニュース編集部撮影)。
訓練教材は、JALと東芝システムテクノロジーが共同開発したもの。ソフトは汎用品のパソコンでも使用できるよう設計されていて、時間や場所にとらわれず実機に近い環境で、体を動かしながら訓練ができるといいます。

ノートパソコンは市販のもの。

ディスプレイの表示。

手元のコントローラーを使って操作する。
訓練できる整備作業は、コックピットからエンジンを操作し始動させる「エンジンの試運転」。整備訓練で最も難易度が高い作業のひとつのため、そこにスポットを当て導入したとのこと。この訓練では、30分で200以上の動作を行います。
今回、訓練の一部を体験することができました。CGで作られたコックピットは、実機の写真をベースにミリ単位で寸法を合わせ、再現しているとのこと。覗き込むように首を前に動かすと、ディスプレイや各計器類がアップで現れ、表示されている数字なども読み取れます。
コックピットのボタンやスイッチ類は、手元のコントローラーをクリックすることで反応。また目線に追従する機能も搭載し、訓練の動作のひとつである「目視で確認」もできます。
エンブラエルの機種でなぜテスト?今回、VR訓練教材がテストされているエンブラエル製の2機種は、JALグループが保有している機種のなかでは小型のもの。座席数は、エンブラエル170型機は76席、エンブラエル190型機は95席。国内線において、主要な都市と地方都市の路線や、地方都市同士の路線に就航しているといいます(運航はJ-AIR)。

エンブラエル190型機の実機(2019年5月、伊藤真悟撮影)。
この2機種のVR訓練教材が試験導入された理由について、JALエンジニアリングの酒井敏行人財開発部長は「エンブラエルの機種が飛んでいる路線は、将来的な増便が見込まれていますが、JALの整備士およそ3000人のなかで、この機種の一等航空整備士資格を持つ人は約230人しかおらず、資格者を増やす必要があります。また、飛行機は壊れにくくなっていて、不具合に対面する機会も減っていることから、自主的なトレーニングで技量を維持していますが、座学で知識をつけても、動作を習得するのが難しいので、VRで補完して訓練しようと考えました」と話します。
また、JALのエンブラエル機の拠点空港が伊丹空港であるため、羽田、成田在籍の整備士は実機に触れる機会が非常に少ないことも、導入した理由のひとつということです。
VR訓練機材は今後、訓練のバリエーションを増やしていきたいとのこと。また、ディスプレイ表示を4Kに進化させたモデルも制作中で、早ければ8月ごろから導入できる見込みだそうです。