JALの新型機エアバスA350-900がデビュー。低騒音、そして「地上に近い(気圧が高い)」客室がウリという、この初便に搭乗しました。
JAL(日本航空)が2019年9月1日(日)、羽田~福岡線に投入した新鋭機「エアバスA350-900型機」。その初便となる羽田発、福岡行きのJL317便に実際に搭乗しました。この機種は「低騒音」と「地上に近い(気圧が高い)」客室がウリといいます。
JALのA350-900型機の初便(2019年9月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
ジェット旅客機が飛ぶ高度9000~1万2000mの上空は気圧が低いため、機内は与圧されています。しかしそれでも客室内の気圧は地上より低く、JALによると標高2000~2500m(富士山の5合目程度)の山の高さに等しい状態といいます。この地上との気圧差が離着陸時における耳の痛みなど、体の不調をきたすこともあります。
「揚げ餅」と「菓子パン」で差圧を検証!

検証に使った揚げ餅と菓子パンの袋(2019年9月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
気圧差を検証するため、記者がA350-900型機初便と同日・同路線の従来機種に搭乗。「揚げ餅」と「菓子パン」の袋を機内に持ち込みました。
山で標高が高いほど密閉された袋が膨らむのと同じく、飛行機の客室気圧が低くなるほど、袋の膨らみは大きくなるはずです。

A350-900型機水平飛行時の、揚げ餅と菓子パンの袋(2019年9月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
まずA350-900型機で、水平飛行に入ったときに揚げ餅と菓子パンの袋を確認。揚げ餅の袋は膨らんでいるものの、シワが入っていてまだ空気が入る余裕があります。菓子パンの袋は、かなりいっぱいまで膨らんでいます。
ボーイング777でも上空検証! 違いが生じる理由とは比較するのは従来機材のボーイング777-200型機。福岡発、羽田行きのJL322便です。ちなみに国内線用ボーイング777型機は順次機材更新を迎え、A350-900型機をはじめとしたA350 XWBシリーズに置き換えられます。

ボーイング777-200型機水平飛行時の、揚げ餅と菓子パンの袋(2019年9月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
ボーイング777型機でも同じように、水平飛行に入った状態で確認しました。揚げ餅の袋はシワがなくなり、パンパンになっています。菓子パンの袋も、A350-900型機のときと比べると膨らみが「高く」なっている状態でした。
袋の膨らみの差はなぜ生じるのでしょうか。おもな理由は飛行機の胴体の素材が変わったからです。エアバスA350-900型機は、胴体のメイン素材(全体の50%以上)に炭素繊維複合材(カーボン素材)を採用。これまでのメイン素材だったアルミニウム合金より剛性が上がりました。JALが導入している機材ではボーイング787型機に次ぐ、カーボン素材メインの機体です。
エアバスによると、A350-900型機の機内与圧は約1800m(6000フィート)相当。これまでより高さ約600m分機内の圧力を上げ、地上に近づけることができるとしています。
JAL会長の「おすすめポイント」も体験!与圧のほかにも違いが。JALの植木義晴会長が「おすすめポイント」としたエンジン音の静かさです。客室からも「静かだね」という声が聞こえましたが、エンジン音が小さいからか、他の搭乗者の声もよく聞こえます。A350-900型機の機内サービスで飲み物を頼む際、声を大きめに出さなくてもCA(客室乗務員)に通じたのが印象的でした。

機外モニターの様子(2019年9月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
植木会長が「もうひとつのおすすめポイント」というのが機外モニターです。垂直尾翼からの視点が加わりました。画質は滑走路のタイヤの跡が見えるほどクリアです。全席に装備された個別のモニターでその映像を確認できます。
A350-900型機は、エアバスの最新鋭旅客機「A350 XWB」シリーズのひとつです。JALはA350-900型機18機、同シリーズの長胴型であるA350-1000型機13機、あわせて31機の確定発注と、さらにオプションとして25機の購入契約をエアバスと締結しています。
水平飛行中に機長から「私たちは、皆様とA350-900型機でフライトできることを長いあいだ楽しみにしてきました。優れた安全装備、環境性能、快適な客室が特長のA350-900型機を、これからのJALの新しい姿として育ててまいりたいと思います」とのアナウンスが。A350-900型機初便の搭乗者数は369人で、満席でした。