動物との接触事故が全国的に多発するなか、特に北海道では大型のシカとの事故が深刻化しています。衝突した際の被害は大きく、高速道路はシカが侵入した時点で通行止めに。
道路上に飛び出してきた動物との接触事故、いわゆる「ロードキル」が多発しています。高速道路の場合、2018年のロードキル処理件数は年間およそ4万7400件(NEXCO3社および本四高速、首都高速、阪神高速の合計)。その多くはタヌキ、キツネ、イヌあるいは鳥類など比較的小さな動物ですが、特に北海道では、大型のシカとの衝突事故が深刻化しています。
道路を渡るシカ(画像:ookinate23/123RF)。
北海道開発局の道路維持課によると、道内ではシカとの衝突事故が年間2000件ほど発生しているそうです。1年のなかでもピークは10月、降雪期に入る直前だといいます。大型動物のため衝突したドライバーが死亡する事故も発生しているほか、NEXCO東日本北海道支社によると、高速道路では本線内にシカが侵入した時点で、その区間を通行止めにしているそうです。
実際に事故を起こした場合、どうなるのでしょうか。損害保険大手の損保ジャパン日本興亜によると、動物との衝突事故は基本的に「物損事故と同じ扱い」とのこと。自動車保険は適用されるものの、車両保険に入っていなかったら車両の損害は補償されないそうです。また、仮に衝突のはずみでほかの物や人に当たった場合、その責任は事故を起こしたドライバーに発生するといいます。
北海道開発局によると、道内に生息するエゾシカのオスは、肩の高さで1mにも達します。このエゾシカとの衝突事故によるクルマの平均修理費(車両保険の平均支払額)は、52万3000円に上るそうです。
「鹿よけ笛」装着のレンタカーも 効果は?このため、NEXCO東日本は道路の周りにシカの侵入を防ぐ柵を設置したり、シカが嫌がる臭いを発する忌避剤を撒いたりしているほか、北海道開発局では事故多発地点のデータを取りまとめたパンフレット「エゾ鹿衝突事故マップ」を作成。そうした場所で、「動物注意」の標識や道路表示も増やしているといいます。
「被害を抑えるためにも、スピードダウンが重要です。動物注意の標識や道路表示がある地点は、実際にシカがよく現れる場所ですから、周囲に注意を払って走行してください」(北海道開発局 道路維持課)

北海道開発局発行の「エゾ鹿衝突事故マップ」(画像:北海道開発局)。
またニッポンレンタカーでは、道内のレンタカーの多くに「鹿避け笛」を装備しています。2個でひと組になった小さな笛で、フロントバンパーまたはサイドミラー付近に装着、40km/h以上のスピードで走行すると風が通り抜け、特定の周波数の音を発するというもの。人間には聞こえないものの、動物の耳には届くそうです。
この鹿避け笛についてニッポンレンタカーサービスは、「年ごとに生息状況が異なるため、一概に事故件数が減ったとはいえませんが、確かにシカの正面衝突は減りました」と話します。2015(平成17)年に鹿避け笛の装着を開始して以降、大きな事故は起こっていないそうです。