クルマを運転中、長い坂道などで強めにエンジンブレーキをかけるためシフトダウンすると、一時的にエンジンがうなるような音を立てることがあります。燃費に影響したり、クルマに負担がかかったりしないのでしょうか。

低速ギアほどエンジンブレーキ強、うなるクルマ

 クルマで長い下り坂を運転する際、フットブレーキを多用しないようエンジンブレーキを効かせるため、「D」レンジから2速あるいは「S」「B」などのレンジにシフトダウンすると、うなるような音が聞こえてくることがあります。燃費が悪くなったり、クルマに悪影響を与えたりはしないのでしょうか。

 エンジンブレーキの仕組みは、かんたんに言うと、タイヤの回転力でエンジンを動かしている状態になり、そのエンジンを動かす負荷でタイヤの回転が衰え、減速するというものです。ギアが低速なほどエンジンが高回転になり、強いブレーキをかけられますが、そのぶん、うなるような音も出ます。

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シフトレバーを操作するイメージ(画像:PaylessImages/123RF)。

 東京都世田谷区の自動車教習所、フジドライビングスクールの田中さんによると、これによる燃費悪化はまずない、とのこと。というのも、いまのクルマはアクセルペダルを踏んでいないときには、エンジンへの燃料噴射がカットされるからだそうです。

「ギアを下げることでどれほどエンジンの回転数が上がるかは、クルマによって異なります。しかしながら、日本車に多いCVT(連続可変トランスミッション)で『D』より下のレンジ(『S』や『B』など)に落とした場合や、ハンドルの手元の『パドルシフト』で変速した場合も、速度に合わせてコンピューターが自動で変速を調整しますので、いまのクルマで過度なエンジンブレーキがかかることはないでしょう」(フジドライビングスクール 田中さん)

 ただし、電子制御ではない昔のAT車では、たとえば4速から2速に落とした場合など、いきなり回転数が上がり、強いショックをともなうこともあるとのこと。クルマにも負担がかかるので、まずオーバードライブをOFFにし(シフトレバーの「O/D」ボタンを押す)、その後に2速、1速へ落とすなど、段階的な変速でエンジンブレーキを効かせていったほうがよいといいます。

エンジンブレーキ目的の急なシフトダウンは危険なことも

 フジドライビングスクールの田中さんによると、「なるべくエンジンブレーキを使おう」と意識しすぎるのは、かえって危険なこともあるといいます。

「エンジンブレーキを意識して使うのは、たとえば栃木県日光市の『いろは坂』など、本当に長い下り坂だけと教えています。

シフトダウンにより強い制動がかかることもありますが、そうしたときエンジンブレーキではブレーキランプが点灯しないので、特に高速道路の下り坂では後続車に追突される恐れもあるからです」(フジドライビングスクール 田中さん)

 エンジンブレーキはあくまで、長い坂道でフットブレーキの負担を軽減するため「補助的に使う」と考えたほうがよいと、田中さんは話します。

うなるような強いエンジンブレーキ、燃費やクルマに問題ないのか?

長い下り坂では、エンジンブレーキを効かせたほうがよいことも(画像:写真AC)。

 ちなみに、田中さんによると、長い下り坂で燃費をよくしようと考え、ギアが全くかみ合わない状態の「N」レンジにする人もいるといいます。これは絶対にNGだそうです。「エンジンブレーキが全く効かなくなりますし、何より危ないのは、タイヤの接地圧力が弱くなることです。クルマは、加速中には後輪に、減速中には前輪に圧力がかかり、ピタッと地面に吸い付いて走りますが、『N』レンジでは重心が常に動いている状態になり、安定性が極端に悪化します」といいます。

 なお、「N」レンジではアクセルペダルを踏んでいない状態でも、エンジンへの燃料供給がカットされずアイドリングは継続するので、燃費がよくなることもないそうです。

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