導入が計画されている羽田空港の新ルートでは、南風のときC滑走路へ北側から着陸する運用が含まれていますが、これで思い出されるのは、かつての「羽田カーブ」。こうした低空を急旋回するルートは、伊丹空港福岡空港などでも見られます。

C滑走路に北側から下りていく「羽田カーブ」

 羽田空港では2019年11月現在、実際に飛行して検証するなど、都心上空を通る「新ルート」に関する動きが活発化しています。発着回数を増やす目的が背景にあり、これには「南風のとき、東京湾に隣接する『C滑走路』へ、向かい風状態で北側(16L側)から南側へ降りる」運用も含まれています。

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羽田空港のC滑走路を北側から南側へ離陸するJALのボーイング767型機(2016年3月、恵 知仁撮影)。

 実は羽田空港に、南風のとき「C滑走路へ北から着陸」する航路は、“夏の風物詩”として、かつて日常的に行われていたものでした。「チャーリーアプローチ」などとも呼びますが、もっとも馴染み深いのは「羽田カーブ」という呼び名でしょう。

「羽田カーブ」は、羽田空港の南東側より飛んできた飛行機が着陸直前、当時設置されていたナビゲーションシステム「江東VOR/DME」から、お台場、城南島上空の低高度で大きく旋回し、C滑走路に北から着陸するというルートです。旋回を始める高度は、およそ300メートルで、旋回角度は180度近くになるときも。なお「羽田カーブ」の着陸は、パイロットが手動で行っていたそうです。

 飛行機は原則、風に向かって離着陸しますが、羽田空港の北には東京都心があります。「羽田カーブ」は、その上を飛行するのを避けるためとられたルートだといわれています。

「羽田カーブ」なぜ廃止? 「低空急旋回」はほかの国内空港でも

「羽田カーブ」は2010(平成22)年、D滑走路の新設に伴い廃止され、南風時に着陸する滑走路は、B滑走路とD滑走路に移行します。深夜早朝の時間帯や、滑走路の工事などやむを得ないケースでは、いまもC滑走路の北側から着陸することはあるものの、ナビゲーションシステムが「江東VOR/DME」から「台場VOR/DME」に移ったため「似て非なるもの」のようです。

 ちなみに、ほかの国内空港でも「低空急旋回で着陸」は、風などの状況によって行われていることがあります。幹線では伊丹空港や福岡空港などで、中規模空港では、神戸空港も知られています。

羽田空港かつての名物「羽田カーブ」とは? 低空で急旋回しつつC滑走路へ北から着陸

伊丹空港。奥側が北で、山と住宅街が迫る(2019年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

 伊丹空港は、騒音防止の観点より、極力南側から着陸するようにしているとのことですが、南風や東風が強いときなど、やむをえないケースでは、背後の山を避けるため低空で旋回し、北側から降りることがあります。市街地に近い福岡空港でも、強い北風時などやむを得ない場合に限り、滑走路の南側で180度旋回をして着陸することがあります。

 なお、「スリリングな着陸」という意味で世界的に有名だったのは、1998(平成10)年に閉港した香港の啓徳(カイタック)空港。ビルすれすれの高さで、あいだをすりぬけるように急旋回せねばならないことから、一部では「世界一着陸の難しい空港」と呼ばれていたそうです。

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