横断歩道の手前からの「斜め横断」は、思っている以上にリスクの高い行為かもしれません。付近に横断歩道がない場所で道路を横断するよりも、事故発生時における歩行者の過失割合が高くなる場合もあります。
横断歩道の手前で歩道から車道に出て、横断歩道の途中へ斜めに入っていく「斜め横断」。このような「正しくない横断」で自動車との事故が発生した場合、歩行者側にも過失が生じることがあります。
しかも、「横断歩道付近を横断中」の事故は、横断歩道から離れた場所を渡っていたケースよりも、歩行者の過失割合が高くなる場合があるそうです。損害保険大手の損保ジャパン日本興亜に詳しく話を聞きました。
「横断歩道付近を横断中」の自動車との事故は、歩行者側に過失が生じることもある。写真はイメージ(画像:写真AC)。
――横断歩道外での事故において、歩行者と自動車の過失割合は、どのように考えられるのでしょうか?
信号機のない道路を横断していたときの事故では、まず次のように歩行者が「どこを渡っていたのか」で過失割合を判断します。
(1)横断歩道上:横断歩道の端から2m以内を含む
(2)横断歩道付近:片側2車線以上の「広い道路」ならば横断歩道から50m以内、それ以外は30m以内がひとつの目安
(3)「横断歩道付近」以上に離れた地点
(1)であれば歩行者の過失は0%、(2)であれば30%、(3)であれば20%を基本とし、事故に影響を与えたその他の要素を加味して判断していきます。
信号機がある横断歩道の場合には、そのときの信号の色によって過失割合が変わってきます。横断歩道から離れた地点を横断していても、おおむね5mから10m以内であれば、そのときの信号の色を考慮します。
「横断歩道付近」の事故、なぜ歩行者の過失が重くなるのか?――なぜ「横断歩道付近」のほうが、そこから離れた場所での事故より歩行者の過失が重くなるのでしょうか?
「歩行者は横断歩道がある場所の近辺においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない」と法律で規定されています。歩行者は横断歩道上を横断しているときには、法律上の強い保護を受けるのに対し、横断歩道が付近にあるにもかかわらず、これによらない横断の場合には、歩行者にも一定の注意義務が課され、過失として問われる可能性があるでしょう。
また、斜めに道路を横断することは道路交通法上も禁止されていますし、歩行者の横断距離が増えること、運転者が歩行者の行動を予測し対応することが難しくなることから、「斜め横断」は危険度を増す行為といえます。
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日が短い10月から12月にかけては、1年で最も事故の多い時期で、いわゆる薄暮時間帯における横断中の事故が増えます。警察庁がまとめた2017年までの5年間の統計では、この薄暮時間帯における自動車対歩行者の死亡事故のうち、「横断歩道以外」での事故は約7割、「横断歩道付近(横断歩道の側端からおおむね30m)」での事故は約1割を占めるとのこと。このような横断は「乱横断」とも呼ばれ、特に近年、高齢者で増えていることから、警察も指導や警告を強化している状況です。