TV(テレビ)やPC(パソコン)のような略称が多くあります。同じような略称は陸上自衛隊にも存在し、英単語を用いない国産の戦車や装甲車などについてもアルファベットのみの表記が定められ、現場部隊で使われています。
陸上自衛隊の戦闘車両は、10式戦車や16式機動戦闘車、96式装輪装甲車や99式自走155mmりゅう弾砲など各種ありますが、陸上自衛隊の公式webサイトには、それらの略称として「90TK」や「89FV」、「20HSP」というのも記されています。これらアルファベットのみの略称は、どんな意味があるのでしょう。
富士総合火力演習で展示される陸自の3種類の戦車。向かって左から74式戦車、90式戦車、10式戦車(2010年8月、柘植優介撮影)。
TK
TKとは「Tank」の略で、戦車を指す通称です。陸上自衛隊には74式、90式、10式の3種類の戦車があり、それぞれの数字の部分をTKの前に付けて、74TK、90TK、10TKとすることで区別します。
TRTRとは「Tank Recovery」の略で、戦車回収車のことです。陸上自衛隊には74式戦車と90式戦車の2車種をベースに作られた78式と90式の2種類の戦車回収車があります。そのため、戦車と同様に数字をTRの前に付けて、78TR、90TRと呼ばれます。
MCVMCVは、「機動戦闘車」の英訳である「Mobile Combat Vehicle」の各単語の頭のアルファベットを繋げた略称です。16式機動戦闘車のことを指し、MCVの前に16を付けて「16MCV」と呼ばれますが、機動戦闘車という車種は2019年現在、16式しかないため、単に「MCV」だけでも通じます。
数字なしでも通じる略称各ジャンルで1車種しか運用していないものについては、数字を付けずに呼ぶこともあるようです。
FVとは「Fighting Vehicle」の略で、直訳すると「戦闘車」となり、陸上自衛隊の89式装甲戦闘車のことを指します。数字の部分を前に付けて「89FV」と呼ばれることもありますが、装甲戦闘車は2019年現在、この車両しかないため、単にFVと呼ばれることも多いです。

訓練展示でグラウンドに展開した軽装甲機動車(手前)と96式装輪装甲車(2017年4月、柘植優介撮影)。
APC&WAPC
APCは「Armoured Personnel Carrier」の略で、装甲兵員輸送車のことです。陸上自衛隊では「装甲車」のことで、73式装甲車を指します。一方のWAPCは、そのAPCに「Wheeled」の意味をもつWを付けた単語であり、よって「Wheeled Armoured Personnel Carrier」の意味です。こちらは「装輪装甲車」、すなわち96式装輪装甲車のことです。各々数字を付けて、「73APC」や「96WAPC」ということもありますが、両車とも2019年現在は1種類ずつしかないため、APCといえば73式装甲車を、WAPCといえば96式装輪装甲車と、数字なしでも用いられます。
LAVLAVは軽装甲機動車を指す言葉です。英語名の「Light Armoured Vehicle」の略ですが、ほかの車両がTKなら「ティーケー」、FVなら「エフブイ」とアルファベット読みするのに対して、LAVだけは「ラブ」と呼ぶことが多いです。
海外でも使用される英語略称日本語の車種名を直訳した英語名称を基に付けられていることもあります。
CCVCCVは、「Command Communication Vehicle」の略称で、日本語では指揮通信車となります。

観閲行進を行う82式指揮通信車。後方には87式偵察警戒車が続いている(2015年4月、柘植優介撮影)。
RCV
RCVとは「Reconnaissance Combat Vehicle」の略で、日本語にすると偵察戦闘車となります。陸上自衛隊では87式偵察警戒車の略称として用いられており、やはり本車も、RCVと呼称されるのは87式以外にはないため、87式と付けず単に「RCV」と呼ばれています。
HSPHSPは、「Howitzer Self-Propelled」の略で、自走りゅう弾砲を指します。「Howitzer」とはりゅう弾砲の英訳で、「Self-Propelled」が自力走行、すなわち自走という意味です。陸上自衛隊の自走りゅう弾砲は、99式自走155mmりゅう弾砲と203mm自走りゅう弾砲の2種類あるため、それぞれの数字を頭に付けて、99HSP、20HSPとしています。
※ ※ ※
なお上述した10種類以外の装備についても、各々英訳から用いたアルファベットの略称が付けられています。