大型車の車輪が、走行中に脱落する事故が急増しています。そのほとんどが、歩道や路肩に近い左後輪の脱落で、冬期に多発しています。
大型のトラックやバスの車輪が脱落する事故が急増しています。国土交通省自動車局によると、2000年代以降、一時は件数が減りましたが、2015年度以降は毎年10件以上増えており、2018年度は81件、発生しています。これは、過去最も件数が多かった2004(平成16)年度の87件に迫る勢いです。
大型車の車輪脱落事故が急増している。写真はイメージ(画像:Tewin Kijthamrongworaku/123RF)。
同局が2019年11月に発表した資料によると、2018年度に起こった車輪脱落事故には、次のような特徴があります。
・冬期に集中。全体の約67%が11月から2月に発生しており、最多は12月の24件。
・積雪地域で多発。全体の約57%が北海道、東北、北信地域で発生しており、四国や沖縄ではゼロ。
・タイヤ交換後が多い。
・脱落車輪は「左後輪」がほとんど。全体の91%が左後輪の脱落によるもの。
これらの傾向は、2017年度とおおむね同様です。また、国土交通省自動車局は2018年度の取りまとめで、新たにわかった過去4年間の傾向として、事故車両は「車齢4年から6年の車両が約4割」ということも発表しました。車齢7年以降の車両になると、実際に走行している車両総数との因果関係は不明ですが、事故件数が大幅に減少するそうです。
原因は「整備不良」に尽きる?国土交通省自動車局は、冬タイヤへの交換が特定の時期に集中し、慌てて交換するケースが多いのがおもな理由と見ています。その多くはホイールを固定するボルト、ナットの締め付け不良や、タイヤ交換後の「増し締め」(50kmから100km走行後、緩みを確認し再度ナットを締めること)が行われていないことなどによるもので、不適切な交換作業や保守管理の不備に起因するといいます。
加えて、新たにわかった「車齢4年から6年の車両で脱落が多い」という事実については、現在調査中としつつ、特に積雪地域の車両でボルトやホイール、ハブの錆が進行し、その確認や交換が不十分なままタイヤ交換が行われている可能性が考えられるそうです。

車輪脱落事故防止の啓発チラシ(画像:国土交通省)。
また、脱落車輪のほとんどが「左後輪」ということについては、やはり2018年度の発表から引き続き調査中としつつ、次のような原因が推定されるといいます。
・右折時の遠心力により、積み荷の荷重が左の車輪に大きく働く。
・左折時は左後輪がほとんど回転しない状態で旋回するため、回転方向に対して垂直にタイヤがよじれるように力が働く。
・道路は中心部が高くなっていることが多く、車両が左(路肩側)に傾き、左輪により大きな荷重がかかる。
・後輪に対して前輪の異常は、ハンドルの振動などによりドライバーが気づきやすい。
トラックやバス、タイヤや機械工具などの業界団体からなる「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る連絡会」では、2018年度の事故傾向を踏まえた「緊急対策」を取りまとめ、大型車ユーザーなどに対して周知を図っています。また今後、より実態に即した啓発方法や点検整備方法などを検討するワーキンググループを設置するそうです。