茨城空港と東京駅を結ぶ直通高速バスの「航空機利用者に限り運賃500円」という施策が廃止される見込みです。茨城県が運賃補助を打ち切る方針で、背景には「県内にお金が落ちない」という懸念があります。

「高速バス500円」茨城空港の誘客に成果もなぜ廃止?

 茨城県の大井川和彦知事が2020年1月22日(水)の定例会見で、茨城空港と東京駅を結ぶ高速バスへの運賃補助を2019年度いっぱいで打ち切る方針を発表しました。茨城空港の航空便利用者に限り、同区間の運賃を片道500円にするというものです。

 この施策は、成田や羽田に比べて交通機関が少ない茨城空港の利用促進を目的に、2010(平成22)年の開港当初から実施されています。全国的に見ても、高速バスの運賃が500円というのは破格といえますが、県の空港対策課はこの補助制度について次のように話します。

茨城空港「東京直通500円高速バス」廃止へ 背景に茨城県の懸...の画像はこちら >>

東京駅を発つ茨城空港行き高速バス。関東鉄道が運行(2020年1月、中島洋平撮影)。

「『高速バス500円』は、東京から利用客を呼びこむことには一定の成果を上げました。もともとは航空運賃の安いLCCとの相乗効果を狙ったもので、空港までの足も含めて、成田をしのぐ割安な価格を打ち出し、お金はなくても時間に余裕がある学生さんなどのニーズを汲み取ろうとしたのです」(茨城県空港対策課)

 ただ、この制度は空港から東京への便でも利用が可能です。大井川知事は、特に外国人観光客が「ほとんど地元である茨城県で消費することなく、そのまま東京へ行って、また東京から茨城空港を使って帰っているのではないか」という懸念があるとし、税金を使って東京へ観光する人を補助していることに問題があると指摘します。

 東京駅直通バスの通常運賃は1530円で、補助を利用していた人にとっては1000円以上の値上がりにつながります。しかし大井川知事は、補助をなくしても「利用者の増減にはほとんど影響しない」との見解を示しました。

「高速バス500円」廃止しても問題なし?

 大井川知事によると、東京都心から茨城空港までの所要時間は、成田空港までと比べても10分程度の差であり、東京駅直通バスの500円施策を廃止しても成田に対する競争力が大きく損なわれることはないと話します。

その自信は、茨城空港の好調な業績にも裏打ちされています。

 2019年における茨城空港の利用者数は80万人を突破し、過去最高を記録しました。その要因として知事は、国内線でスカイマークが1日1便増の3便体制になったほか、中国を中心に海外からのチャーターが相次いでいることを挙げ、発着枠が満杯となっている羽田や成田の代替として、東京近郊の茨城空港に注目が集まっていると分析します。

 茨城県空港対策課によると、「『高速バス500円』をいつまでやるか、という議論のなかで廃止の方針を決定しました」といい、今後は、空港利用者に茨城県内を周遊してもらう交通施策に舵を切っていくとのことです。

 ちなみに、茨城空港の利用促進策には、空港利用者の「駐車場無料」や、到着便利用者でかつ県内の宿泊施設で1泊する場合に限り、空港からの「レンタカー1000円」といったものもあります。県空港対策課によると、前者はおもに北関東の利用者を取り込んでいるほか、後者は日本人だけでなく、台湾から来た人の利用も多く、県内の周遊に役立っているそうです。

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