現代のジェット旅客機が飛行中に受ける圧力は、1平方メートルあたり5トンから6トンといわれていますが、それを10年以上受け続ける外板の厚みは、100円玉と同じぐらいの厚さしかないそうです。なぜそれでも大丈夫なのでしょうか。
現代のジェット旅客機が飛ぶ高度1万mの気圧は、地上の4分の1といわれています。そのようななかで、客室内を地上とほぼ同じような環境に保つため、機内の気圧は高められています。
この機内と機外で生じる気圧のギャップによって胴体にかかる力は、1平方メートルあたり5トンから6トンとされ、フライトのたびに胴体の外板はそのギャップにさらされるわけですが、この外板、厚さはどれくらいなのでしょうか。
羽田空港に駐機寸前のボーイング777型機(2020年1月、乗りものニュース編集部撮影)。
機種や部位で差がありますが、現代のジェット旅客機における外板の厚さは、およそ1.5mmから2mmが一般的とされています。この厚みは、身近な例だと100円硬貨(厚さ1.7mm)に相当します。飛行機は軽さを重視して作られているので、安全を確保しながらも、胴体の外板はギリギリまで薄く削られています。
ところが、通常の飛行で胴体の外板が割れるようなことは、ほぼありえません。こういった事故は世界でも歴史上数件しかなく、かつそれぞれ適切な運用がされていなかったことが原因と見られます。
なぜ薄い外板でも問題がないのでしょうか。これには、胴体の構造に施された工夫が関係しています。
外板の内側に施された補強「セミモノコック構造」とは現代の旅客機では、胴体部分が「セミモノコック」という構造になっているのが一般的です。
機首側から尾翼側にかけて前後方向に取り付けられている「ストリンガ(縦通材)」と、これと垂直に胴体断面に沿って取り付けられている「フレーム(円框)」、そして外板の3つを組み合わせ、胴体を軽くしながら高度1万mでもびくともしない胴体が作られているのです。

成田空港にほど近い航空科学博物館に展示されている、ボーイング747の胴体断面。外板は非常に薄い(2019年7月、乗りものニュース編集部撮影)。
なお、多くの旅客機において胴体外板で使われている素材は、「超々ジュラルミン」と呼ばれるアルミニウム系の素材です。このほかボーイング787や、エアバスA350 XWBなど一部のモデルでは、超々ジュラルミンより軽くて強いという炭素繊維複合素材(カーボン素材)を使っています。
ちなみに、これら両方の素材がよく用いられている製品として挙げられるのは、野球のバットです。このほか「超々ジュラルミン」はクルマのホイールなどで、炭素繊維複合素材はテニスラケットなどで使われています。
※一部修正しました(2月12日19時00分)。