ロシアの戦車T-14がアップグレードされ、開発元はあることを大々的に誇りました。それは、戦車にトイレが付いたこと。
2019年3月、ロシアの主力戦車「T-14」のアップグレードが行われ、重大な問題のひとつが解決されたと報道がありました。それは、同車にトイレが標準装備になったということです。
ロシアのT-14戦車。写真は2017年、赤の広場でのパレードにて撮影されたもの(画像:ロシア大統領府)。
なぜトイレが、と疑問に思うかもしれませんが、当事者たちはいたって大真面目です。トイレを戦車に常設したことに関して、T-14の開発を担当したウラルヴァゴンザヴォート社の役員のひとりは「トイレがあれば戦車内の兵士の生活の質が格段に向上する」とアピールしています。
実際、現場からはトイレを我慢しなければいけない現状を改善して欲しいという声があったようで、今回の改良は、かなり画期的なことだったとうかがい知ることができます。
実は、トイレが標準装備されている戦車はほかにもあり、イギリスの主力戦車「チャレンジャー2」に付いています。しかし世界的に見ると、トイレが標準装備という戦車は珍しいようで、アメリカのM1「エイブラムス」や、陸上自衛隊の10式戦車にはトイレがありません。なお兵員輸送車に関しては、トイレを装備している車両も戦車よりは見られるようです。
自衛隊の戦車乗員はいつトイレを済ませているのか?冷静に考えてみると、戦車にトイレがないというのはかなり大変です。
この点について、第2次世界大戦におけるドイツ軍の戦車エース、オットー・カリウスは、何日も車内暮らしをしなければならなかったときのトイレ事情を自著などで明かしています。それによると、昼は外で排泄するのは危険なので、大きい方は、ひとりずつ深夜に外で済ませ、小さい方は砲弾の空薬きょうを尿瓶がわりにしていたといいます。

陸上自衛隊の10式戦車(画像:アメリカ陸軍)。
では、陸上自衛隊・機甲科の戦車乗員は、任務中のトイレはどうしているのか、陸上幕僚監部の広報担当に聞いてみました。
それによると、実は公式で「このようにしなければならない!」という明確なルールはなく、関係者のあくまで“一般的な見解”にはなるそうですが、長時間訓練の際は「戦車乗員間で警戒しながら、交代でトイレを行っています。携帯トイレを使用する隊員もいます」とのことでした。これは仮に有事の場合でも変わりがないようで「戦車乗員間で警戒しながら、交代でトイレにいったり、携帯トイレを使用したりすることになると思います」という回答でした。
明確なルールはありませんが、ひとりずつ交代で用を足すことは、オットー・カリウスの回想にもあるように、安全の確保やリスクの軽減のために重要なようです。
なお、自衛隊が現在運用している戦車にトイレがつく可能性についても聞いてみましたが、「現在のとことろ、その様なプランはございません」とのことです。