飛行機のエンジンが回る方向は、世界的には「反時計回り」が多数ですが、日本で飛んでいるジェット旅客機にはどちらもあり、なかには同じ機種でも回転方向が逆のものまであります。なぜこのようなことが生じるのでしょうか。
現代のジェット旅客機のエンジン、その大きなファンが回る方向はどちらなのでしょうか。
ANA(全日空)はその結論を「どちらもある」としています。なぜこのようなことが発生しているのでしょうか。
ロールスロイス「Trent 1000」を搭載したANAのボーイング787型機(2019年、伊藤真悟撮影)。
JAL(日本航空)によると、この違い差はエンジンの製造国によって生じるものといいます。日本やアメリカなど多くの国では、エンジンを機首側、つまり前から見たとき左側方向に回る「反時計回り」を採用している一方、イギリスやロシア製のものは反対で、前から見たとき右側方向に回る「時計回り」なのだそうです。これらは、かつてのレジシプロ(ピストン)エンジンのプロペラ機からの伝統にならったもので、それがそのまま現代に引き継がれているとしています。
多くの国で「反時計回り」が採用されているのは、かつてプロペラを回すことでエンジンを始動させる際、右利きの人が多いことから右手を使うことが多く、回しやすかったからという説もあります。
ところが多くの国で「反時計回り」のアメリカ式を採用しているにもかかわらず、先述のとおり少なくとも日本の航空会社のジェット旅客機では、「時計回り」を含む両方のエンジンが使われています。この大きな理由が、イギリスには航空機エンジンの大きなシェアをもつ、ロールスロイス社があることでしょう。
同じ787なのにエンジンが「逆回り」現象 製造メーカー元が関係航空会社が旅客機飛行機をメーカーから導入するとき、多くのモデルの旅客機ではロールスロイス製エンジンも含む複数のタイプ種類から選ぶことができます。また、一部モデルでは、エンジンはロールスロイス製のみが単独供給しているものなどもあります。

ゼネラルエレクトリック「GEnx」を搭載したJALのボーイング787型機(2020年3月、乗りものニュース編集部撮影)。
もちろんアメリカ製のエンジンも、長いあいだ大きなシェアを誇っています。ロールスロイスとならび、いわゆる「世界三大航空エンジンメーカー」とも称されるゼネラルエレクトリック社、プラットアンドホイットニー社はいずれもアメリカの会社です。そのため、ゼネラルエレクトリックのエンジンを使っているJALのボーイング787型機は、ロールスロイス製エンジンを搭載したANAのものとは異なり、エンジンのファンはアメリカ式の「反時計回り」に回ります。
このほか、たとえばLCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンが保有するのエアバスA320型機などでは、先述のいずれの会社でもないIAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)製のものが使われています。IAEはロールスロイス、ゼネラルエレクトリックがほぼ同じ比率で出資する国際共同会社ですが、IAE製エンジンのファンの製造を手掛けるIHIによると、アメリカ式の「反時計回り」が用いられているとのことです。
なお、現代のジェット旅客機は、エンジン2発の双発機が多数ですが、両翼のエンジンが回る方向は、左右で違いがないのが一般的です。これは、回転を統一することで製造作コストを削減でき、整備のしやすさも向上することなどが、おもな理由として挙げられます。