陸上自衛隊が装備する各種車両のなかで屈指の小ささを誇るのが、偵察用オートバイです。国産の2輪車がベースですが、陸上自衛隊が用いるにあたり専用の改良が施されています。
陸上自衛隊の車両のなかでは屈指の小ささを誇るのが正式名称「オートバイ(偵察用)」、いわゆる偵察用オートバイです。同車は陸上自衛隊の専用装備ですが、歴代の車両も含めて、国内メーカーが生産した市販車をベースに、必要な装備を増設のうえ納入されています。
陸上自衛隊の偵察用オートバイ。ベースは川崎重工製のKLX250(2020年6月、中野英幸撮影)。
2020年現在、偵察用オートバイに用いられているのは、川崎重工製のKLX250です。カラーリング以外にも、市販車とは異なるポイントがいろいろあります。
まず、市販車にはないライトガードやエンジンガード、リアガードなどが付いている点です。これは転倒時に乗員を守るためのものです。また多くの装備を積めるよう、シートの後ろにはリアキャリアが付き、さらに無線機用のキャリアも右側面に設置されています。
ヘッドライトなどの灯火類も市販車にはない機構となっています。
切り替えは、後輪右わきの無線機用キャリアの付け根にある、灯火管制スイッチを回して行います。なお全消灯だけでなく、「BOライト」と呼ばれるごく小さなライトだけを点けることも可能です。
自衛隊ならではの過酷な使用にも耐えうる改良が多数またフレームには、剛性強化のために補強用パーツが溶接で取り付けられています。リアのスイングアームも形状が異なるのは、過酷な使用状況を鑑みてのことなのでしょう。

偵察用オートバイの右側面。車体後部のキャリアに積まれているのは無線機(2020年6月、中野英幸撮影)。
ほかにも、KLX250のモデルチェンジに合わせて川崎重工製の偵察用オートバイも細かな仕様変更が行われており、たとえば導入当初はアナログメーターだったのが、デジタルメーターに変わっています。
ちなみにKLX250自体は、2016年のファイナルエディションを最後に日本国内の販売を終了しています。2019年には新型のKLX230が発売されましたが、同車はまったくの新規設計のため、自衛隊の偵察用オートバイとは異なります。
そのため、偵察用オートバイも近い将来、他社製のオフロードバイクがベースになることも含めて、大きくモデルチェンジする可能性は否定できないでしょう。