複数の交通手段の検索、予約、決済までをスマホで完結できるというトヨタのアプリ「my route」、その横浜版がリリースされました。複数の交通事業者や地域の商店街などが連携したサービスですが、その旗振り役は、トヨタ販売店です。
トヨタ自動車が「マルチモーダルモビリティサービス」と称して展開する、スマートフォンアプリ「my route」の横浜版のサービスが、7月22日(水)から提供されます。同日に記者発表が行われました。
これは、利用者が目的に応じて行きたい場所を選択でき、その移動手段が複数提示され、さらに予約や決済までをスマートフォンで完結できる、といったコンセプトのアプリです。鉄道やバス、タクシー、自転車など、あらゆるモビリティ(移動)をひとつのサービスと捉える概念「Mobility as a Service」、略して「MaaS(マース)」の取り組みのひとつといえます。
横浜臨海部で7月23日から運行される連節バス「ベイサイドブルー」。「my route」のサービスで横浜ならでの乗りものとして紹介されるもののひとつ(画像:横浜市交通局)。
サービスは横浜臨海部を中心に展開。AからB地点までのルート検索に対し、鉄道やバスだけでなく、タクシーやカーシェア、シェアサイクルなど、街に存在する様々な移動手段を組み合わせた検索結果が提示されます。検索時に人数を入力することで、たとえば「電車だけで移動するよりも、電車とタクシーのほうが100円高いが10分早く移動できる」といったこともわかるそう。
このうちバスについては、横浜市営バスと地下鉄ブルーラインのフリー乗車券「みなとぶらりチケット」などのデジタル版をスマートフォン上で購入できるほか、タクシーも配車アプリと連携することで、配車から決済まで行えるといいます。シェアサイクルも「my route」で予約から決済まで可能。カーシェアについては「my route」から提供各社のホームページにリンクしますが、駐車場の予約と決済はアプリ内で可能だそうです。
さらに、横浜臨海部の回遊性を高めるため、イベント情報やスポット情報、地元商店街の情報もアプリ上に提示。テイクアウトができる店や、そこまでの移動手段も検索可能とのこと。また、横浜ならではの移動手段として、水上交通などとも連携しているといいます。
地元の交通に関わる事業者や商店などと、ひとつひとつ連携し、様々なデータをアプリに集約することで実現したサービスですが、これら事業者に話を付けていったのは、神奈川のトヨタ販売店です。
トヨタ販売店が公共交通にどっぷり 日産も連携のワケ「my route」によるマルチモーダルモビリティサービスは、これまで福岡市、北九州市、水俣市で導入され、横浜市が4例目になります。福岡などでは西日本鉄道という地場の交通事業者が主たるパートナーとして事業を進めてきましたが、今回は、KTグループとウエインズグループという、神奈川のトヨタ販売店を束ねるふたつの親会社どうしが共同出資して設立した「アットヨコハマ」という会社が運営します。
もともと、横浜市が臨海部において「移動自体が楽しく感じられる多彩な交通サービス」を公募し、それに採択された「神奈川県オールトヨタ販売店」の案として、トヨタが開発した「my route」のサービス展開に向けた準備を2年半かけて進めてきたとのこと。「my route」の開発担当であるトヨタの天野成章さんは、次のように話します。
「トヨタはあらゆるモビリティサービスを手掛ける会社を目指しています。それらひとつひとつを生活者に選んでもらうには、その人のニーズに合ったものを提示する必要があるのです。そのためのステップゼロとして、『あらゆる移動手段をひとつにするインターフェイス』がどうしても必要でした」(トヨタ自動車 天野さん)

「my route」のサービスを説明するKTグループの上野健彦社長(2020年7月22日、中島洋平撮影)。
また今回は、レンタカーおよびカーシェアのサービスで、日産レンタカーと日産「e-シェアモビ」が連携していることも特徴のひとつ。
KTグループ社長の上野健彦さんは今回の事業について、「地域の生活者によりよいサービスを提供することが目的であり、必ずしも儲けにはならない」と話します。事業化に向けた準備のなかで、「地域の人の話を聞けたのが何よりの財産」とのこと。新会社であるアットヨコハマの今後については、今回のサービスから発生する様々な情報を活用して収益事業を展開するつもりだそうです。