2025年1-9月 上場企業「早期・希望退職募集」状況
2025年1月-9月30日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は34社(前年同期46社)で、前年同期から約3割(前年同期比26.0%減)減少した。だが、パナソニックHDやジャパンディスプレイなど大手メーカーの大型募集が底上げし、対象人数は1万488人(前年同期8,534人)と前年同期の約1.2倍に増加した。年間募集が1万人を超えた2024年(1万9人)を8月ですでに上回り、2019年(1万1,351人)を超える可能性も出てきた。
なお、募集人数は明らかになっていないが、三菱電機や三菱ケミカルグループが9月に募集実施を公表した。早期・希望退職の募集は、業績が黒字の企業が全体の6割(64.7%)を占める。一方、経営再建に取り組む日産自動車も国内外で2万人規模の人員削減を打ち出している。大手メーカーが中長期的な競争力強化のため、構造改革に本格的に動き出し、2025年以降の早期・希望退職の募集人数は大幅に増えそうだ。
製造業を中心に、競争力強化や業績改善に向けた構造改革の動きが本格化している。日産自動車は7月15日、追浜工場の車両生産を2027年度末までに終了し、日産自動車九州への統合を発表している。国内の詳細は明らかでないが、数千人規模が見込まれている。
上場区分では、東証プライムが27社(構成比79.4%)と圧倒的に多く、直近決算の黒字企業は22社(同64.7%)と6割超を占めた。判明した34社は、30社が製造業で、人数は9,789人に達した。
トランプ関税や海外移転などの進行次第では、自動車など製造業を中心に、輸出産業の動向も注目される。今後も、構造改革を進める企業が増える流れのなかで、事業部門の閉鎖・売却や工場再編など、事業再構築に向けた早期・希望退職の募集が加速する可能性が高まっている。
※ 本調査は、早期・希望退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。
※ 2025年9月30日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの独自調査に基づく。
電気機器が最多
2025年1月-9月30日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は34社に達した。
業種別では、国内5,000人規模の募集を発表したパナソニックHD、満53歳以上かつ勤続年数3年以上の従業員を対象に募集を発表した三菱電機など、電気機器が15社(前年同期11社)と4割(構成比44.1%)を占めた。
次いで、金属製品(前年同期2社)、機械(同3社)が各3社で続く。

市場区分別 34社中、27社が東証プライム
「早期・希望退職募集」が判明した上場34社の市場区分は、東証プライムが27社で、約8割(構成比79.4%)を占めた。東証スタンダードは6社(同17.6%)だった。
市場区分別の募集人数は、東証プライムが1万98人で9割超(構成比96.2%)を占めた。東証スタンダードは390人だった。

損益別 黒字企業が6割超
「早期・希望退職募集」を実施した34社の直近決算期の最終損益(単体)は、黒字22社(構成比64.7%)、赤字12社(同35.2%)で、黒字が6割を超えた。
黒字企業の募集人数は8,018人で、全体の7割(同76.4%)を超えた。黒字の22社のうち、19社が東証プライム上場だった。
赤字12社の募集人数は2,470人で、ジャパンディスプレイや太陽誘電、サンデンなど。
