「日産をどうみます?」。取材や情報交換先で、こんな質問があいさつ代わりに飛び交った2025年だった。

日産自動車(株)(TSRコード: 350103569)の経営再建の行方を注視する審査マンは多い。TSRの調査では、日産グループの国内取引数は1万3,283社に達する。このうち4割を部品メーカーなど製造業が占める。自動車は1万を超える部品数が示すように、材料などの卸売業やそれらを運ぶ運輸業、工場改修などの建設業、弁当提供などのサービス業他など裾野が広い。

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注目を集める日産自動車
 

 日産は5月、約2万人の従業員削減、世界17工場を10工場への再編など、経営再建計画「Re:Nissan」を公表した。2025年6月にTSRが実施した企業アンケートでは、日産グループと取引がある企業の半数が、再建計画が自社にマイナスの影響があると回答した。

 時間とともに「Re:Nissan」の輪郭が浮かび上がる。横須賀市の追浜工場は2028年3月までに車両生産を終了する。グローバルの生産台数を350万台から250万台(中国除く)に削減し、工場の稼働率アップを狙う。しかし、生産終了や台数の減少は、サプライチェーンに大きな影響をおよぼす。

 トランプ関税や円安、EV新興メーカーの台頭など、日産を取り巻く環境は厳しい。だが、日産の2025年3月期決算で、報酬額1億円以上の個別開示人数が前年と同数の5人いた。

2025年3月に退任した前社長の報酬額は3億9,000万円だ。企業業績と関係ない役員の高額報酬が明らかになり、株主や社員からは高額報酬の見直しを求める声もあがっている。
 また、6月には日産の主要サプライヤーの1社だったマレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)とグループ会社が、米国デラウェア州連邦倒産裁判所にチャプター11を申請した。

 国内倒産法の民事再生や会社更生ではなく、「オートマティック・ステイ」の原則によって世界中の債権者に睨みが利く米倒産法を活用したようだ。国内債権者に馴染みが薄い債務整理に多くの取引先は翻弄された。6月にマレリが開催した限定した取引先への説明会は、申請前の請求分に関する明確な説明がなく、さらに登壇者の「上から目線の態度」(参加者)が債権者心理を逆なでした。同時期に、TSRにはマレリグループの取引先からタレコミにも似た怒りの情報提供が膨れ上がった。

 日産のサプライヤーでは河西工業(株)(TSRコード:291195172)の2026年3月期中間決算(連結)が、売上高931億3,000万円(前年同期比14.9%減)、最終利益12億4,200万円の赤字と苦戦が続いている。
 日産の経営改善が遅れるほど、多くのサプライヤーに影響が深まる。裾野が広い自動車業界で、完成車メーカーと主要サプライヤーの一挙手一投足は業界を超えて駆け巡る。

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