~ 全国「IPO意向企業」業績動向調査 ~
東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、IPO(新規株式公開)の予定や意向がある企業が、全国で2,667社あることがわかった。前回調査(2022年3月、1,857社)から810社増加した。
IPO意向のある企業は、コロナ禍後の景気回復を追い風に2期連続で増収増益を達成したが、業歴10年未満が4割(40.4%)と新興企業が多い。
産業別では、情報通信業が833社(構成比31.2%)で最も多く、次いで、サービス業他が795社(同29.8%)で続き、成長分野や参入障壁の低い産業に集中している。規模別は、売上高50億円未満が8割(83.1%)を超え、従業員50人未満が約6割(57.3%)など、小規模から中堅規模が主体になっている。
日経平均株価は2025年3月の3万円台から、同年11月には5万2,000円台を超えて市場最高値を記録。株式市場は活況を呈している。だが、同年のIPO企業数は66社(前年比23.2%減)と2013年(54社)以来、12年ぶりの低水準となった。これは東証グロース市場の上場維持基準の見直し(時価総額40億円から100億円以上へと引き上げ)などが背景にあるとみられる。
さらに、ことし2月、米国とイスラエルのイラン攻撃による中東情勢の悪化などで、世界経済に混乱を招いている。先行きの不透明感で株価が乱高下し、今後も投資環境の冷え込みが予想され、その影響が懸念される。
※ 本調査は、東京商工リサーチの面談調査で、新規株式公開(IPO)の意向を示した2,667社を抽出し、分析した。
※ 調査は2022年3月に次いで2回目。
売上・利益合計は2期連続で増収増益
最新決算から3期連続で業績が比較可能な1,190社を対象にした集計では、最新期の売上高合計は8兆8,168億円(前期比9.0%増、7,311億円増)で2期連続の増収となった。
また、最新期の当期利益の合計は2,020億円の黒字だった。
アフターコロナの景気回復の波に乗り、成長を加速させた企業が多かったようだ。
前期との売上高の比較では、最新期は増収が71.3%(前期72.8%)に達した。増収企業率は2期連続で7割超えの高水準を維持した。一方、減収企業率は26.8%(前期25.6%)だった。
ただ、増収企業率は前期と比べ1.5ポイントダウン、一方で減収企業率は1.2ポイント上昇し、伸びがやや鈍化した。
赤字企業が3割超え
1,190社の損益別では、最新期は黒字企業の比率が66.4%に対し、赤字企業の比率は33.5%だった。
赤字企業率は前々期の35.8%から前期36.3%にやや上昇したが、最新期は前期を2.8ポイント下回り、改善がみられた。
IPO意向企業は設立が浅く、初期投資の負担ものしかかるため、もともと赤字企業の構成比が高い傾向にある。また、前々期から3期連続の赤字計上は243社で、全体の20.4%を占めた。
産業別 情報通信業とサービス業他で6割
IPOの意向がある企業の産業別内訳は、最多が情報通信業の833社(構成比31.2%)。次いで、サービス業他の795社(同29.8%)が続き、上位2産業で全体の6割(61.0%)を占めた。
2025年のIPO企業66社では、最多は情報通信業の21社(構成比31.8%)、次いで、サービス業他の18社(同27.2%)と続き、IPO意向企業の上位2産業の構成比とほぼ一致する。成長が見込め、市場性が高いほか、比較的参入障壁が低い分野に集中している。
以下、製造業の331社(構成比12.4%)、卸売業の228社(同8.5%)、小売業の172社(同6.4%)、建設業の107社(同4.0%)、不動産業の103社(同3.8%)が続いた。
最少は農・林・漁・鉱業の15社(同0.5%)で、金融・保険業の36社(同1.3%)、運輸業の47社(同1.7%)が100社未満だった。
売上高50億円未満が8割超え
最新決算の売上高別(対象2,044社)では、最多が売上高10~50億円未満の678社(構成比33.1%)で、3割を占めた。
次いで1~5億円未満が469社(同22.9%)、5~10億円未満が286社(同13.9%)、1億円未満が266社(同13.0%)と続く。
売上高50億円未満の中堅規模が1,699社(同83.1%)で、全体の8割を超えた。
従業員数別50人未満が約6割
従業員数別では10~50人未満が1,060社(構成比39.7%)で4割を占めた。次いで100人以上が608社(同22.8%)、50~100人未満が505社(同18.9%)、5人未満が241社(同9.0%)、5~10人未満が228社(同8.5%)の順。
従業員50人未満が1,529社(構成比57.3%)と約6割を占めた。また、不明(25社)を除く2,642社の平均は従業員113人、中央値は38人と、少人数での運営が多数を占めた。
業歴平均は17年
業歴別では10~50年未満が最多で1,420社(構成比53.2%)と5割を占めた。次いで、5~10年未満が811社(同30.4%)、5年未満が269社(同10.0%)と業歴が浅いレンジに集中し、業歴50年以上の老舗企業は166社(同6.2%)と1割に満たなかった。業歴の平均は17.0年で、新興企業が中心となっている。
IPO意向の企業数は、東証の市場再編を目前に控えた前回調査の2022年3月から、4年間で810社増えた。これは、東証が市場再編の目的に掲げた「魅力的な現物市場の提供」への各種施策に対する効果が表れたほか、景気回復の追い風に乗り、業績拡大に向けた資金ニーズの高まりが背景にあるとみられる。
だが、2025年7月に民事再生法の適用を申請したAIベンチャーの(株)オルツ(当時東証グロース、その後、破産に移行)は、売上の最大9割におよぶ架空計上が発覚。株式上場後、わずか10カ月で経営破綻し、経営陣の逮捕に発展した不祥事は、上場ゴールを目的とした悪質さとともに、証券会社や監査法人の上場審査・チェック体制の不備も指摘された。
オルツ事件をふまえて日本証券業協会は3月18日、「新規上場時の会計不正事例を踏まえた引受審査に関するガイドライン」を公表。不正リスクに応じた取引実態の確認等を幹事社に求めた。
こうした取り組みを通じて、低下したIPOの信用回復が急がれる。
一方、中東情勢の悪化による世界経済の混乱が深刻化している。今後、投資環境の冷え込みが懸念されるほか、さらなる円安や資源不足による経営環境の悪化が長引くと、予定していたIPOを断念するケースも発生しかねない。流動的な情勢のなか、引き続きIPO意向企業の動向が注目される。

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