魚釣りでは欠かす事ができないクーラーボックス。もちろん、釣り用の汎用クーラーボックスは冷蔵庫のように勝手に電気で冷える訳ではない。

氷を入れて、ボックス内を冷やす事で中に入れている魚などを冷やす。今回はそんなクーラーボックスの機能をしっかりと発揮できる工夫を紹介したい。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)

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クーラーボックスの仕組み

魚釣りに使うクーラー(以降クーラーと略す)は基本的に箱形で上部にフタが付いている形状だろう。そして、フタを含め、箱の壁面は分厚く保冷効果を上げるようにできている。保冷の役目を果たす6面の壁に囲まれたクーラー内なので冷気を逃がさず保冷する事ができる。

クーラーボックスの基礎知識 保冷力を最大限引き出す使用方法を紹介
釣りにクーラーは必携(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

クーラーの価格差は素材

クーラーと言っても、同じ大きさでも数千円のものから数万円まで、価格帯には大きな差がある。実は価格を決定する大きな違いは、その壁の中にある素材によるところが大きい。

古くは壁の素材としてはウレタンが多く使われていて、特徴は保冷効果があって軽量、そして安価なので、今でも安価なクーラーにはウレタン素材がよく使われている。いわば、クーラーの定番と言える。

その後、真空断熱材を使うクーラーが登場して、保冷力も上がり、その分、高価な商品が発売されている。真空断熱材の保冷力は使っている方ならご存じと思うが、かなりの効果がある。

基本的にはウレタンパネルか真空断熱材を使っているかで、大きな価格差が出てくるが、現在はさらに両者を組み合わせる商品もある。また、フタ部分のみウレタンで、残りの5面が真空断熱材、6面全てが真空断熱材を使用した物など、組み合わせの変化で価格も変化すると考えて良いだろう。

保冷力の比較基準

少し話はそれるが、クーラーの保冷力を比べる規定があるのをご存じだろうか。店頭で商品を見てみると、「保冷力1.7倍」とか「2.5倍」と言った表示がされている事に気付くはず。

何を元に「保冷力○倍」と言う数値が出てくるのかを不思議に思う人もいるだろう。

実はこれはメーカーによっても少し違うのだが、ベースとしてJIS規格に定められている簡便法に基づいている。これはクーラーの本体容量の25%に相当する角氷をクーラーに入れ、外気温40度の中に8時間放置した後に氷の重量を測って残存率を算出する。

メーカーによっては残存率から、完全に氷が溶けるまでの時間を算出して、それをクーラー商品の比較として数値化しているメーカーもある。その仕組みを覚えておけばなんとなくクーラーの比較に役立つだろう。

クーラーのオプション機能

クーラーはもちろん、氷と釣った魚を入れる、または釣行の際の飲食物を入れたり、エサを入れたりもするだろう。その辺りを考慮した様々な機能が付いたクーラーもある。

水抜き栓

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ワンタッチ式の水抜き栓(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

クーラーの底近くの壁面に栓があり、その栓を外す事でクーラーを持ち上げなくても、水を抜く事ができる機能で、大型クーラーにはほぼ備わっている。

便利な機能だが、栓を開けたまま現場から車にクーラーを積み込み、帰宅すると溶けた氷の水が栓から出てきて、トランク内がびしょ濡れ・・・なんて事もよくあるのでご注意を。

内側トレー

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トレーも多用するアイテム(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

古いクーラーには内ブタと言う、上部のフタを開けた時にもう一つ上面を覆うフタが入っていて、それは小物だったり、エサなどを入れるケースにもなっていたが、最近のクーラーにはほぼ付いていない。逆にクーラー内で濡らしたくない物や氷から少し距離を置きたい物を入れるトレーが付属しているクーラーも多い。

また、トレー単体での発売もあり、付属していないクーラーにも使う事ができるが、サイズがピタリ合わないとトレーがクーラー内に落ち込んだり、フタが閉まらない・・・なんて事になるので、本来はそのクーラーのオプション商品の購入をオススメしたい。

格納ボックス

トレーと同じく、クーラー内で別部屋を作るようなモノだが、こちらはフタ付き密閉できるタイプがオススメ。サイズさえ合えば、100均ショップのタッパーなどを利用しても良いだろう。

このケースも濡らしたくない物や、逆にエサなどのクーラー内で他と分けておきたい物を入れるのに役立つ。

小型の投入口

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小型クーラーの投入口(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

これはフタに取り付けられた小型の扉。釣れた魚や飲み物などの出し入れ、特にポイッと投入するだけの場合には大いに役立つ。扉の大きさは様々で、10cm四方程度の小さな投入口もあるが、フタの半分程度を大きく開くようにしているタイプもある。前者は小型クーラー、後者は大型クーラーに多い。

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フタの半分が開くタイプ(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

運搬用のキャスター

これはクーラーの底にキャスターが付いていて、キャリーカートのように引っ張って移動させる事ができるシステム。特に重たくなる大型クーラーでは欲しい機能だ。

基本的には左右のどちらか片方にキャスターが付いていて、片方を持ち上げる事でキャスターを利用して引きずりやすくなる。最近では安価なクーラーにも採用されているので、大型クーラーを購入の際は確認したおきたい部分だ。

クーラーの機能的な部分は、他にもいろいろと工夫されていて、それぞれのメーカーの売りなどもあるので、ちょっとした細部の工夫まで見ていただきたい。

機能を最大限引きだす使用方法

ここからは、そんなクーラーの機能を最大限引きだす使用法について紹介したい。

そもそもクーラーを使うための基本的な理念は「保冷」である。特にこれから気温がグングンと上昇してくる時期には、冷やしておきたい物を入れるケースとしての使用法がほぼ100%を占めるだろう。ここで言う、機能がその保冷であり、最大限引きだしたいのも保冷力であり、ちょっとした工夫でその機能を効率よく使える。

1、外気温の低い場所に置く

クーラーの内部は、事前に入れている氷や保冷剤などの冷気を利用して、室内の温度を下げた状態をキープする。そのため、まず最初にクーラー内を冷やすエネルギーが居る。そして、保冷の妨害となるのが、外気温である。

外気温はクーラーの壁を温め、内部まで温度を上昇させる。それを遮断するのがクーラーの壁内に入っているウレタンパネルであったり、真空断熱材である。一般的な保冷の効果が高いのは、やはり高価な断熱材を使用したクーラーである事にかわりない。

ただ、どんなに断熱効果の高いクーラーでもその断熱効果は100%ではない。50度の外気温下と10度の外気温下では、クーラー内の保冷効果も大きくかわってくる。普段の使用ではできるだけ、外気温の低い場所に置く事を意識したい。

釣りの最中なら日陰であったり、船釣りなどなら濡れたタオルなどを掛けて、随時、海水をかけてクーラーの壁そのものの温度を下げる工夫をするだけで保冷効果がずいぶんとかわってくる。

2、開閉は最小限に

クーラーの構造上、まずは氷などでクーラー内を冷やし、それをキープする・・・と言うのが基本機能である事は前述した。と言う事は、フタを開けっ放しするとクーラー内の温度が上がってしまうのは当然理解できる。

基本的に冷気は下へ流れるので、上部のフタを開けても冷気が上昇する事はないのだが、温かい外気がクーラー内の空気と混じって結局、温度が上がってしまう。これを再び冷やすには氷の力が必要になり、結果、氷が溶けるのも早くなる。

それを最小限にする工夫が、前述のフタに付いた投入口である。開閉スペースを小さくする事で、クーラー内の冷気をできるだけ中に止める工夫だ。

小型の投入口がないクーラーの場合は、開閉の回数や時間をできるだけ減らす事。魚が入れ食いなので、開けっ放し…と言うのは良くない。傷まない程度に数匹をためてからまとめて放り込むと言うのはいかがだろうか。

3、溶けた水は適度に排水

クーラー内の氷はどうしても徐々に溶けてくる。ただし、潮氷のように海水と氷で、クーラー内に非常に低温の海水をキープして魚を締めたりする場合には必要ない。

この場合も、氷はどんどん溶けてくるので、塩分濃度が下がってきて、真水に近い状態になってしまうと、魚が傷みやすくなるので注意したい。

潮氷を使った場合には、釣りが終了したらクーラー内の水を1度捨て、氷が少なければ新しく購入するなどして温度が上がらないようにする。新しく氷を入れる際には、ひとつかみの塩を入れるとほんの少しだが温度が下がるのでなおヨシである。

気を付けたいのは潮氷を作っていない時でも1日釣りを続けていれば氷は徐々に溶けてくる。溶けてくると当然、水がクーラー内に溜まってくるので、食べ物やエサなどが溶けた水に浸かってしまう事も多々あるので、水抜き栓を時々開けて、排水をしておきたい。

<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>

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