5月23日、大阪の緊急事態宣言の解除を受け、久々に落とし込みでチヌ(クロダイ)を狙って岸和田一文字へ釣行した。狙いのチヌは不発に終わったが、良型のカンダイ(コブダイ)を仕留めることができ、久々の釣りを満喫したのでその模様をリポートしたい。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)
釣り自粛は辛い決断
釣り業界は休業要請の対象外であり、業界側と釣り人側の活動はそれぞれ、最終的には自身の判断に委ねられていたが、緊急事態宣言による不要不急の外出と、都道府県境界域をまたぐ移動の自粛要請を受け入れ、私は3月14日の釣行を最後にストップした。釣りをストップした約2か月間は、本当に辛い期間だった。
そして関西都市3府県の緊急事態宣言が5月23日0時に解除されることが発表された時、これを自身の区切りとして、釣行再開を決めた。
釣行は自制と自己防衛が条件
緊急事態宣言が解除されても、今までのことがなかったかのような安全で自由な釣行が一転して許されるはずはない。1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、2.密集場所(多くの人が密集している)、3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)の、いわゆる「3密」を避ける自制的な行動と、感染の可能性に対抗する自己防衛がお互いに求められる。
今回の釣行に際し、釣具・釣り餌店、遊漁船・渡船店、釣り場管理者などの業界側からの注意喚起に従うのは当然のこと、感染症予防のために手指消毒液、薄手のゴム手袋、アルコールティッシュなどを持参した。

岸和田沖一文字でチヌ落とし込み釣り
緊急事態宣言解除直後の様々な状況を考慮した結果、釣行再開の場として今回私が選んだのは、大阪府内屈指の有名釣り場である岸和田の沖防波堤。渡しているのは忠岡に乗船場と受付事務所を移転した岸和田渡船。
移転先と乗船手続きなどは、ホームページに詳しく記載されているので、初めて釣行される方や不慣れな方は、是非とも目を通していただきたい。3密を避ける意味でも、必要な情報はできる限り事前に調べておき、乗船手続きは手短に済ませたい。駐車場もエリアが指定されているので注意が必要だ。

主に渡しているのは、沖一文字(通称:沖の北)と旧一文字。2本の防波堤は目に見える距離にあるが、水深や潮通しなどが異なるので、釣行時期や目的の魚によって適したほうを選びたい。
船長からは、「沖一文字での落とし込みは、沖向きが基本。この時期は壁面にはワカメが多く付着していて釣りづらいが、ワカメの下の層でチヌがアタックしてくることが多い」とアドバイスを受けた。

チヌ落とし込みのエサとタックル
釣りエサは当日幸運にも、岸和田渡船でイ貝とパイプ虫(カンザシゴカイ)を販売していた(※常備ではないので事前に要確認)ので購入した。また、近辺の釣りエサ店で岩ガニも購入して持ち込んだ。

タックルは、落とし込み専用ザオ4.2mとリールに、ストライプカラーの落とし込み・ヘチ専用の2号ライン。ラインの先には市販の目印仕掛けとハリスは1.5号を直結する。ハリスは硬めのものがよい。ハリはチヌ針3号で、チモトにはガン玉2Bをかませる。

当日の状況
一番船は40人余りの釣り客を乗せて朝5時に出船。船内密度は定員の6割ぐらいに抑えられていた。全員がマスクを着用しており、ファミリーも何組かいて、多くの釣り人が今まで釣りを自粛していた様がうかがえた。
旧一文字で降りた人は少なく、大半の人は私と同じ沖一文字に渡った。当日は船着き場付近と北端までのエリアが人気で、場所はすぐに埋まってしまい、ルアー組は沖向き、ファミリーを中心としたサビキ釣り組は内向きに分かれて釣り座を構えた。

落とし込み釣りの私は広く探り歩けるエリアを求めて、南向きに歩を進め、人の少ない場所に釣り座を構え、タックルの準備にかかった。エサはビニールバケツに海水を汲んで生かしておき、持ち歩く分だけ小分けする。
ほどなくして、外向きでキャスティングしていたルアーマンのお父さんにハマチがヒット。サビキ釣りに興じていた子供達は手を止めて、お父さんの勇姿とハマチに目を輝かせて大喜びだ。
ワカメ対策
私は6時前から釣りを開始し、沖向きを南側に向かって探り歩くことにした。チヌの落とし込み釣りは、波止の外側の壁際からハリスと目印仕掛けをできるだけ離さず、エサを縦に真っ直ぐに、文字通り落とし込んでいく釣法。海中の魚に違和感を与えないようなエサの落とし方ができるかどうかが腕の見せ所だ。
ただし、沖向き壁面はワカメが付着しているので、今回は仕掛けを着水させる時は壁面からいったん30cmほど離して、ハリスの全部が海中に収まって潮に馴染んでから、サオ先操作で仕掛けを壁面に寄せてくる方法をとった。

常連釣り師の圧巻の姿
当日は大潮ながら、6時半ごろの満潮から後は昼1時半ごろまで下げ潮となるコンディションなので、朝の時合いを逃すと苦戦を余儀なくされる。船長からのアドバイスをもとに、海中のワカメの下まで、海面から7mぐらいまでを探る範囲として釣り歩いたが、アタリのない時間帯が続く。
外向きにキャスティングの列をなすルアーマンたちも大苦戦で、早くも諦めモードの人も現れ出した。そうした中、特に目を引いたのは、泉州エリアでは名の知れたグループの常連釣り師の圧巻の姿だった。エビまきの2人組のうち1人がサオを曲げ、40cm級のハネを釣って涼しい顔。その後30分もしないうちに、今度はサオの胴までひん曲がるかのようなファイトを展開。
その後、もう一人もハネを釣り上げ、苦戦する多くの釣り人たちとの格の違いを見せていた。後に知ったが、このグループの他のメンバーたちも、スズキ級に迫るハネとポン級のアブラメ(アイナメ)など、見事な釣果をあげていた。常連達は、釣れるポイントだけでなく、そこに効果的にまきエサを効かせ、仕掛けを流す術も熟知しているようだ。
一方、内向きのサビキ組は好調。小サバがメインながら、アジ、イワシも交じり、あちこちでファミリーたちの笑顔の花が咲いていた。

51cmのコブダイがヒット
常連達とサビキ組だけが元気な状態の中、辛抱の釣りが続く。満潮を過ぎ下げ潮一方の時間帯に入り、条件は徐々に悪くなっていく。当たりエサが何なのかを早くつかまないと、丸ボウズに終わってしまう。
そうした中、8時ごろに違和感のあるイトふけの反応があった。聞きアワセを入れたが反応はなく、仕掛けを上げてみると、エサが取られていた。硬い石灰質のパイプ虫が取られていたということは、エサ取りの仕業ではないと判断。
すると8時半ごろにイトふけがスッと引き込まれ、サオ先にコツンという感触が伝わってきた。確信を持って鋭くアワせるとヒット。強い引きにサオは大きく曲がった。壁面のワカメや着生物に魚とイトが掛からないように、魚を遠くに引き離すイメージでやりとりを続ける。
魚は底へ潜ろうと抵抗し、海面になかなか浮かせられない。かなりの大物と期待感を込めたが、ようやく海面に姿を見せたのは本命のチヌではなくカンダイ(コブダイ)だ。なるほど引きが強いはずだ。慎重にやりとりして無事タモ入れに成功。コブはなくサイズも51cm、本命のチヌではなかったが、ずんぐりした重量感のある魚体に内心ニンマリ。タナは4ヒロと深め。エサはパイプ虫だった。

貴重なアタリを2度逃しタイムアウト
タナもエサも分かったので、さあこれからという気持ちでこの後も釣り続けた。しかし、食い上げのアタリ、止めアタリと2度もチャンスがありながらヒットさせられずタイムアウト。結局、カンダイ1匹の釣果で納竿した。周りではジュニア達も食傷気味の小サバの猛ラッシュが続いていたが、フカセ釣りの人がチヌを釣り、周りから羨望の眼差しを浴びていた。
波止を後にした11時の迎えの便の船内でも、全員がマスクを着用しており、自己防衛に努めようとする意識の高さがうかがえた。
今後の展望
6月から7月にかけては、チヌの活性が上向いてくるほか、波止際を探り歩くタコ釣りが本格化する。7月に入ると豆アジが釣れ始め、それをバイトにする青物も姿を見せるのが例年のパターンだが、回遊魚はここ2年近く、例年にないパターンが勃発しており、釣果情報をまめにチェックしておきたい。
今後、蒸し暑くなる時期を迎え、時の経過とともに世間の警戒心は薄れていくかもしれないが、釣りをするのは自分自身。周りに流されず、新型コロナウイルス対策を続け、釣りを続けられる環境を自分達の手で守ろう。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>
▼この釣り場について岸和田渡船