梅雨の気配がする頃、大阪湾岸の波止や一文字でマダコ釣りが本番を迎える。そこで今回は、波止のマダコ釣りで主流となっている、タコジグを使った垂直護岸の釣りを紹介したい。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)

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波止マダコ釣りシーズン

マダコは1年でその一生を終える年魚であるとされている。例年、大阪湾の波止では梅雨を迎える頃に100~300gのいわゆる新子サイズのマダコが数釣れる。実はマダコ釣りのシーズン自体はさらに早くから始まっていて、プレシーズンの相手は親ダコとも呼べる1kg以上の大型だ。

元々、波止周りには大型のタコ自体は数が少ないので、なかなか狙っても釣れないこともあり、コアなベテランの対象魚とされているイメージだ。親ダコはシーズンの進行とともにさらに数が減り、新子マダコが数多く釣れる頃には姿を消す。

新子のマダコは数が多いのでビギナーにとっても波止のタコ釣り入門に最適。ちょっと慣れれば20パイ、30パイと釣れるので人気もあり、よく知られた釣り物なのだ。

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夏は新子マダコのシーズン(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

大阪湾の波止マダコ釣り場

波止でマダコを釣る際にもっとも気を付けなければならないのが漁業権。県によって、あるいは市町村、漁協などによって採捕が規制されているエリアも非常に多く、どこでもできる釣りではないということを頭に入れておこう。遊漁船ならば船長が組合員などで漁業権を持っているので安心だが……。

そんな中、古くからマダコ釣りの名所として知られているのが渡船を利用した一文字。具体的には兵庫県下なら武庫川一文字や神戸第七防波堤(通称・七防)、大阪府下では堺港の新波止や宇部波止などが有名だ。

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タコジグでの釣りのメッカ武庫川一文字(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

『タコジグ』釣りとは

波止からマダコを狙う場合、古くから親しまれているのがテンヤで、他に、タコジグやタコエギといった擬似エサでの釣りもある。近年はテンヤよりも手軽でエサ要らずの、タコジグやタコエギでの釣りが人気だ。

今回はタコジグを使った釣り方を解説してみたい。

タコジグ・タコエギそれぞれに適した場所などが違うので出かける際には渡船店に確認するなどしてもらいたい。

タコジグとはいわば、小さなタコの形をしたタコベイトをヒラヒラさせてタコに抱かせる。名前にジグと付いているのは、メタルジグのようにタコベイトの中にオモリが仕込まれていてタコジグ自体がオモリになっているため。最近ではオモリを内蔵しておらず軽量にしているタコジグもあるが、それだけだと沈まないので、その下にはオモリを仕込んだタコジグが必要になる。

垂直護岸がメインフィールド

タコジグを使った釣りの最大の特徴は垂直護岸での釣りがメインとなる点だ。古くからタコジグでの釣りが楽しまれている場所としては武庫川一文字などが特に有名だ。

シーズン本番ともなると、垂直護岸沿いにタコジグを落としつつ移動していく人がズラリと並ぶ。特にこの時期には活発にエサを取る新子マダコが、大好物のカニが多いイガイの層など浅いタナへエサを求めてやってくる。そのため非常に釣りやすい。

タコジグ釣りのタックル

タコジグでの釣りは仕掛けを投げることがほとんどないので、スピニングタックル、ベイトタックルのどちらでも構わない。ただし、垂直護岸にへばりついて、タコジグを抱きにきたマダコを一気に掛けて浮かせる必要があるので胴のしっかりしたパワーのある竿が望ましい。

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タックル図(作図:TSURINEWS編集部)

最近では船用のタコ竿も種類が豊富にあり、船釣りと併用している人も多い。パワーの点ではジギングロッドなども有効だ。基本的にあまり深いタナを探ることは少ないので、ラインの出し入れも少ないことを考えるとベイトタックルが扱いやすい。

波止際ギリギリを釣るので、道糸はどうしても傷が付きやすくなる。そのため、細いPEラインなどはひとたまりもない。PEラインなら思い切って6号以上、筆者は傷を考えてフロロカーボンライン10~12号を使っている。

リールに巻いておくライン自体は極端にいえば20mもあれば十分なので、リールもそれに合わせてやや小型の方が軽量で扱いやすい。こちらも現在数多く発売されている船タコ用のリールが転用できる。

タコジグについて

丸い頭にスカートが付いた、まさにタコを模した小さなタコジグだが、頭部の頂点にアイ(仕掛けを結ぶ環)が付いている。ここにリールからのラインを結べば簡単な1個付けの仕掛けが完成する。

タナを探るために2個、3個と複数のタコジグを付けることも可能だ。この場合は、エダスのない胴突き仕掛けにするか、タコジグによっては下側にもアイが付いていて幹糸を入れてその先にタコジグを結ぶことでいくらでも増やすことができる。

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2個付け、3個付けでセットされている仕掛けも(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

オモリを仕込んだタコジグはけっこう重たいので、欲張って5個、6個と付けるとそれだけでも仕掛けそのものが重くなってしまうので注意しよう。

その重さを軽減して複数個のタコジグを使えるようにしたのが、前述のオモリが仕込まれていないタコジグ。一番下のタコジグは仕掛けを沈めるためにオモリ内蔵が必要だが、それより上に付けるタコジグは軽くてもOKだ。

タコジグのカラー

タコジグのカラーは以前は赤、オレンジが主流だったが、最近ではグロー(蓄光)や、ラメ入り、ブラック、イエロー、ホワイトなどさまざまな商品が登場している。定番としては赤色で、他に時間帯や光の量に応じて、好反応を示すカラーがあるので、系統をかえたカラーを何種類か持参しておくと強い味方となる。

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いろんな色のタコジグがある(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

タコジグの2つの釣り方

タコジグでの釣り方は大きく分けて2種類。タナを固定して誘い続けタコが寄ってくるのを待つ方法と、どんどん釣るタナをかえて複数のレンジを探る釣りだ。どちらもタコがいないと見れば早々にポイントを見切って広範囲にタコジグを沈めるのが最大のコツ。

タナを固定して釣るのは、比較的深いタナや底近くを狙う場合が多い。底付近をエサを求めて移動するタコを狙うために底ギリギリでタコジグを踊らせて待つ。浅いタナ、中層を釣る場合は、タコがどこにいるかを探りたいのでタナをかえながら釣ることが多い。

タコジグの動かし方

どちらにしてもタコジグの動かし方の最大のコツはタコジグに付いたスカートヒラヒラさせてタコにアピールすること。たとえば、タコジグをゆっくりと上げてくるとスカートは閉じたままだ。それを下げればスカートは開く。その動きを利用して、確実にスカート開かせるように上下動を行う。

タナを探る場合には、水面から2、3cm間隔で沈めては止め、また沈めるのを繰り返すことでアピール力を上げる。また、沈め続ける動きはメリットもある。タコジグのハリは全方位にあり上を向いている。そのため、貝や波止の付着物を引っ掛けてしまいやすいのだが、タコジグを沈め続ける動きのみをすれば、ハリが付着物を掛けることが少なくなるという訳だ。

具体的にやりやすい釣り方としては、竿先を上げた状態で仕掛けについた一番上のタコジグが水面下で見えるか見えないか……というタナを設定し、そこから数cm刻みで下げては止めるのを繰り返す。竿いっぱいまで下げたら仕掛けを上げて移動だ。

注意点としては、仕掛けを回収したり、上のタナへ戻す時に障害物を掛けてしまうので、竿を沖へ向けてから上げる、これはタコが掛かった時も同じで、波止の壁からできるだけ早く引き離したい。

アタリとアワセ

下げていく釣りの場合はアタリも比較的取りやすい。数cm刻みで下げていると、タコジグの重さが突然竿先から消えてテンションが抜けたようになる。下げている途中でタコが抱いた場合によくある現象で、そんな時はまず大きくアワせてみる。オモリが障害物の上に乗った場合もあるが、そんなのはお構いなしに、違和感があればアワせるのが基本だ。

タナを固定している釣りの場合は、タコがタコジグを抱いて移動してくれれば分かりやすいが、ジッとしている時もあるので、数秒に1回程度はほんの少し持ち上げて重みを感じてみる。

広範囲を攻める工夫

タコジグの釣りでは「タコは足で釣れ」が鉄則となる。そのため、荷物は最小限にして拠点となる乗船場付近に置いておくことも多い。そして仕掛けを取り付けた竿1本に、タコを入れる袋だけでウロウロするスタイルが主流だ。

タコを入れるアイテムとしては、船同様のタコネットや洗濯ネットなどを利用するが、持ち運ぶ際にはネットのフタが付いた水汲みバケツがあれば良い。というのも、これからの暑い時期は釣り上げたタコをバケツに入れておくと、温まってすぐに死んでしまうので、できればタコを入れた水汲みバケツごと海に入れて水を入れかえてやるのが良い。

持ち運びに苦労するので、バケツに入れる水自体は少量で構わない。

基点に帰ってきたらネットごとビニール袋に入れてクーラーボックスへ投入し、持ちかえると良い。

また、これからは熱さが敵となる。釣り歩くのでウエストバッグなどには予備のタコジグとともに、水分補給用の水筒やペットボトルを確実に入れておきたい。

<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>

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