夜の大物投げ釣りについてのノウハウを、魚種別のポイントの選び方、仕掛けやエサ、釣り方の順に解説する。ぜひとも夜の投げ釣りにチャレンジしていただきたい。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

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『夜の投げ釣り』は大物狙い

投げ釣りというと真っ先に思い浮かぶ対象魚はシロギス、カレイである。いずれの魚種も近郊の砂浜や波止で手軽に狙うことができるのでファンは多い。これらの魚種は普通昼間に狙う場合が多いと思うが、夜に投げ釣りをすると思わぬ大物に出会う確率が高まることを知っている人は意外と少ないかもしれない。

【中部2020】大物狙い『夜の投げ釣り』のススメ 魅力と注意点を解説
複数本のサオを出し回遊ルートを狙い撃つ(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

私たちのような投げ釣りを専門にしている釣り人は、これからの季節投げ釣りといえば夜の間に狙うクロダイ、マダイ、ニベ(イシモチ)、マゴチ、スズキ、アコウ(キジハタ)、コロダイ、ヘダイ、ハマフエフキを本命に各地を飛び回る。普段、船釣りでしか釣れないようなサイズの魚が、夜になるとエサを求めて浅場を回遊したり、河口域に入ってくるので、投げ釣りの射程圏に入るというわけである。

魚種別ポイントの選び方

ターゲット別でポイントの選び方を解説しよう。

クロダイ・スズキ編

塩分濃度が低い海域を好むので、クロダイやスズキは夜になると外洋から河口域に入り、積極的にエサを追い求める。大きな川の両岸の河口域が主なポイントになるが、すぐ手前のカケアガリ付近を回遊してくることもあるので、遠投にはこだわらず手前にも仕掛けを置くように心がけたい。

このときに注意しなければならないのは、軽いオモリを使って着水音を軽減することと、ヘッドライトの明かりを海側にできるだけ向けないことだ。大型ほど警戒心が強いので、できるだけ人の気配を消して、静かに待ち構えることも大切である。

中部地方でクロダイ、スズキが狙える釣り場は三重県熊野市の熊野川河口や揖斐川河口などが有名である。

マダイ編

夜の投げ釣りでマダイが釣れるポイントは、外洋に面した水深の比較的深い湾内である。「こんな所で?」と思われるような場所でも、水深があって潮通しが良ければマダイの回遊路になっている可能性がある。マダイは数匹が群れで回遊しているので、最初のアタリが出れば、その後30分~1時間以内に次のアタリが出るケースが非常に多い。

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こんな良型マダイも射程圏内(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

中部地方でマダイが狙える釣り場は、三重県・紀北町の引本湾や尾鷲市の須賀利、九鬼の湾奥などが狙いめである。これらのポイントはリアス式海岸になっており、少し投げると水深が20mを超えるような深場で、大物が釣れそうな雰囲気の漂うエリアである。過去に70cmを超えるような大物が何匹も仕留められている。

コロダイ・ヘダイ・ハマフエフキ編

これらの魚は「磯モノ」と呼ばれ、磯に着く魚である。主に外洋に面したシモリのあるサーフ、磯場、波止などがポイントになる。日中は人が歩けるような水深1mもないような浅場にも、夜になるとこれらの魚が回遊してくる。三重県熊野市の七里御浜、和歌山県・御浜町王子が浜、串本町の九龍島などが狙いめである。

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磯モノは驚異的な馬力が魅力だ(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

注意点

磯モノは最初のアタリが強烈で、サオ尻にロープを通して固定させておかないと、サオとリールがミサイルのように飛んで行ってしまう。これは大げさに書いているのではなく、私の釣友は何人も高価なサオとリールを失っている。エサを加えた魚が一気に磯に向かって突進するからである。

なお、外洋に面したこれらのポイントはサーフとはいえ、台風や低気圧の接近でウネリを伴うと大きな波が打ち寄せてくるので、安全面に配慮しナギの日を選んで釣行するようにしたい。逆にそんなときには、外洋を避けてマダイやクロダイ、スズキが湾の中にとどまる可能性があるので、積極的に狙ってみたいタイミングだ。

夜の投げ釣りの仕掛け&エサ

夜の投げ釣りでは少ないアタリを確実にモノにすること、硬い投げザオで強引に魚を寄せてくること、手前のカケアガリなどの障害物を考慮することを総合的に勘案して、太くてシンプルな仕掛けが一般的である。

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仕掛け図(作図:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

オモリは遊動式のL型テンビンに六角オモリの25~35号を、潮流や水深に応じて使い分ける。仕掛けは絡み防止用の砂ズリ(私はイシダイ用のワイヤー37番を40cm)の先に、ハリス8号もしくは10号を約1ヒロ取る、いわゆる吹き流し式の仕掛けである。

ハリは最近、がまかつから発売されているユムシコウジというハリ先が鋭いものを愛用し、これを結ぶだけの簡単な1本バリ仕掛けだ。

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天ビンと砂ズリ(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

エサは狙う魚種によって変わるが、クロダイ、スズキ、マダイにはイワムシやユムシを使うことが多い。特にエサ取りが多いこれからの時期、イワムシなどは投入後にあっという間にエサ取りにかすめ取られることもあるので、ユムシは欠かせない。

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エサ取りにはユムシが強い(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

また三重県の引本湾などでマダイを狙うときは、ウタセエビやボケ、カメジャコを使うこともある。ただしこれらのエサはフルキャストすると身切れを起こしてしまうので、ふわっと優しくキャストするように気を付けよう。

夜の投げ釣りの釣り方

次に釣り方を解説する。

複数の竿を並べる

投げ釣りはまきエサをして魚を寄せる釣りではなく、底を回遊するであろう場所にエサの付いた仕掛けを置いてアタリを待つ釣りである。よってサオは1本ではなく複数本(3~4本)を並べて釣ることになる。

魚は手前のカケアガリを回遊することもあれば、沖のシモリ周りに沿って回遊することもあるので、複数のサオは投げる方向や距離を変えることがセオリーである。投入後しばらくアタリがなければ、少しサオをあおって仕掛けとエサを浮かせるなどして、魚にアピールすることも効果的だ。

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クロダイは群れに当たれば数が出る(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

ドラグは緩めておく

リールは投げ釣り専用の大型スピニングリールを使用するが、アタリを待つ間ドラグを緩めることで、魚がエサをくわえて走ったときにサオ先の違和感を吸収してくれる。このときドラグから独特のジ~~~~ッという音が鳴り響く。この瞬間が夜の投げ釣りの最大のだいご味で、体内のアドレナリンが一気に噴出し、眠気が吹っ飛ぶ。

魚が掛かった後は遊ばせることなく一気に巻き上げることが重要。特にコロダイやハマフエフキなどは、相手に主導権を奪われるとシモリや根に走られてしまい、バラシの原因となる。

魚が手前に寄ってきて浮かせた後は、慎重を期してタモ網を使って確実にランディングすることだ。

明るい間に現着しよう

私の場合は休日が土曜日と日曜日なので、夜釣りをするのは土曜日の夕方から日曜日の朝になることが多い。釣り場にはできるだけ明るい間に到着するように心がけている。特に初めてサオを出すポイントでは、沖合に浮かぶブイや近くに設置されている養殖イカダとの距離感をつかんでおく方がトラブルなく釣りができる。

暗闇に包まれるとオモリの着水点も見えなくなるので、キャスト時の力の入れ具合や着水音の大小、色分けされたミチイトの出方などで、自分の仕掛けをどれくらいの距離に入れているのかを推測しなければならない。

夜の投げ釣りでは、日没前から午後10時までにアタリが出るケースが多い。もちろん時間よりも潮の動きでアタリが左右される釣り場もあるが、午後10時を回ってアタリが一度も出ないようであれば、先の見込みが薄いと考え、ポイントの移動が頭をよぎり始める。

地方の釣り場であれば、荷物をまとめて車で移動できるが、渡船を使って沖堤や磯に渡ったときなどはどうしようもないので、腹をくくってその場で潮替わりを待つか、移動できる範囲で荷物をまとめて移動する。

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高級魚キジハタもターゲット(提供:週刊つりニュース中部版 長谷川靖之)

仮眠も重要

20代、30代のころは一晩中、一睡もせずに釣りを続けていたが、40代になってさすがにその体力がなくなってきた。帰りの運転のことも考えて夜10時~2時くらいまでは仮眠をすることが多くなった。3~4時間でも仮眠をすることで、夜明け前の時合いに集中して釣りをすることができるし、何より帰りの運転が楽である。

グループ釣行の場合は眠気がさしてくれば交代でハンドルを握ることもできるが、都合がつかず単独釣行になった場合、帰りの運転は眠気との闘いになるので深夜の仮眠は必ず取るようにしている。

危険な外道に注意

夜になると魚の警戒心が薄れることは前述した通りであるが、これは外道にとっても同じである。夜釣りで釣れる外道もまた大物であることが多い。代表的なのがサメとエイである。

大きなアタリで期待感が高まるが、アワセを入れて巻き始めると、本命との違いがすぐに分かる。マダイ、クロダイ、スズキ、コロダイなどは頭を振って抵抗するが、サメやエイは海底にへばりつくような感覚である。エイは直径が50cmを超えるものや、サメは全長1mを超えるようなものも食いついてくる。無理なやり取りはサオやリールの破損を招くので、無理に上げようとはせず、ハリスを切って海にお帰りいただこう。

また毒魚にも注意。特にゴンズイやエイに刺されると、釣りどころではなくなり、最悪の場合は病院行きになることもある。夜釣りの場合、釣れた魚は必ずライトで確認し、不用意に触れないことを心がけておこう。

タモ網は大きめのものを

タモ網を用意することはもちろんだが、できるだけ直径の大きなタモ網を用意しておくこと。これは魚のサイズによるものというよりも、夜間のタモ入れはヘッドライトを照らしながら行うことになり、海面との距離感や魚との距離感がつかみにくいためだ。

45cmくらいの枠であれば、特に釣り座から海面までの距離があるときなどはスムーズなタモ入れが難しいので、私は60cm枠のタモ網を用意している。

<週刊つりニュース中部版 長谷川靖之/TSURINEWS編>

この記事は『週刊つりニュース中部版』2020年8月7日号に掲載された記事を再編集したものになります。
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