世界有数の深い湾・駿河湾。その東岸にある深海魚漁の基地・戸田で「深海魚直送便」というユニークな取組が行われ、注目を浴びています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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世界有数の深海・駿河湾

日本で一番深い湾である駿河湾。太平洋から伸びる駿河トラフが湾奥まで差し込み、最深部は2500mもの水深があります。このような環境は世界でも限られた場所にしかなく、世界中でここ駿河湾でしか見つかっていない生物も少なくありません。

魚介で地方活性化:静岡県戸田の『深海魚直送便』が美味しい&面白い
オオコシオリエビ(提供:野食ハンマープライス)

日本の魚類は淡水魚を含め約2,300種が確認されていますが、駿河湾内にはこの内の約1,000種もの魚類が生息していると言われています。

駿河湾と深海漁

そんな駿河湾では、独自の深海魚介の漁が行われています。有名なサクラエビや、世界最大の甲殻類として知られるタカアシガニ、化粧品の原料として欠かせない深海鮫類など、とてもたくさんのユニークな水産物が水揚げされています。

また、それらの深海魚が多く集積する湾奥の街・沼津では、深海魚を使ったレストランや深海生物の水族館などがあり、普段見ることのない深海魚と触れ合える場所となっています。

魚介で地方活性化:静岡県戸田の『深海魚直送便』が美味しい&面白い
オオグソクムシ(提供:野食ハンマープライス)

変わったところでは、西岸の焼津市では「オオグソクムシ」が水産資源として水揚げされており、食用や生態観察用に用いられています。ふるさと納税の返礼品に用いられ、話題になったことも。

このように、今や駿河湾では深海魚は最大の「観光資源」として活用されているのです。

新型コロナによる大打撃

沼津市の最南端に位置する旧戸田村は、火山活動によって形成された風光明媚な湾と温泉が有名な観光地です。

ここで最も有名な料理といえば「タカアシガニ料理」。戸田はこのタカアシガニなどの深海漁や、イカ・タチウオといった水産物が多数水揚げされる漁村でもあります。

魚介で地方活性化:静岡県戸田の『深海魚直送便』が美味しい&面白い
タカアシガニ(提供:野食ハンマープライス)

しかしそんな戸田は、新型コロナウイルス感染症の流行による「魚の不況」の影響を直接的に喰らいました。その結果、漁師の収入減が問題になってしまったそうです。

「ヘンな深海魚」が漁村を救う

そんな状況を改善しようとこの春、地域おこし協力隊が戸田漁協と協力し、水揚げされたばかりの深海魚を港から発送する「深海魚直送便」をスタートしました。

メヒカリやユメカサゴ、カガミダイやヒゲナガエビなどといった、地元では美味しいことが知られるものの、都市部まではあまり流通することのないような深海魚を特定の値段分詰め込み、発送します。全国の食卓に届け、戸田の魅力を発信するのが狙いだといいます。

魚介で地方活性化:静岡県戸田の『深海魚直送便』が美味しい&面白い
見た目は悪いが美味な深海魚たち(提供:野食ハンマープライス)

春先に試行したところ注文が殺到し、想定以上の好評を得てこの10月より本格スタートとなりました。受け取った人が美味しく食べられるよう、魚の名前とおすすめの調理法を記したリストが添えられています。

このほか、食用とされない珍しい深海魚だけを集めた「ヘンテコ深海魚便」もラインアップ入りしたそうです。(『沼津・戸田の深海魚を全国直送 今春好評受け、本格始動へ』静岡新聞 2020.9.23)これまではあまり売り物にならなかった「未利用魚」たちの良い活用例として、今後より注目されることは間違いなさそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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