これまでの絶望的状況から一転、ここ2年は豊漁に湧くシラスウナギ漁。しかし、せっかくの豊漁を台無しにしかねない問題が、この漁の背景には存在しています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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2020年度もシラスウナギ豊漁

ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギ。近年は乱獲や様々な要因が重なり、その数を大きく減らしていると言われてきました。2014年には絶滅危惧種指定も受け、我が国のウナギ大量消費について懸念の声が繰り返し伝えられてきました。

しかしそのシラスウナギ、実は直近の2年連続で豊漁となっています。ニホンウナギが棲息する日本や台湾、中国など東アジア全域でシラスウナギの漁獲量が回復しているという調査結果もあるそうです。

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幻想的なシラスウナギ漁(提供:PhotoAC)

それに伴い、稚魚の相場は前年平均の4割安、不漁だった一昨年の半値になっているそうです。まだ完全養殖の商業化が行われていないニホンウナギは、養殖に使う稚魚は全量が天然個体となっており、シラスウナギの価格が最終的なウナギ小売価格と連動します。そのため本年度も昨年に続き、ウナギの小売価格が低下する見通しとなっています。

その一方で不正流通が横行

しかし、シラスウナギが豊漁となる一方で、「出自がわからない」シラスウナギの流通が相次いでいることが問題となっています。

シラスウナギは資源管理の重要性から、捕獲に当たり「特別採捕」の許可が必要となっており、捕獲量を定期的に自治体へ申告するルールになっています。しかし水産庁によると、2020年漁期に国内で採捕されたシラスウナギのうち、実に4割近くが、どの都道府県で捕れたのかわからないものになっているといいます。

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流通しているウナギ(提供:PhotoAC)

2020年漁期に、国内の養殖業者が養殖池に放流したシラスウナギは合計で20.1t。このうち3tは中国など他国からの輸入であることがわかっており、残りの17.1tは国内の漁師が採捕したもののはずです。

しかし各都府県への報告は10.8tにとどまっており、実に6.3tについてその出所が不明となっています。

これは前年漁期の実に4.2倍の量となっているのです。(『ウナギ稚魚36%出所不明 2020年採捕、「不正流通」が横行』静岡新聞 2021.2.9)

問題だらけのシラスウナギ漁

日本のシラスウナギ漁は24の都府県で行われており、静岡県など主要産地の多くで、その出荷先が指定されています。しかし、漁獲したものの自治体に申告をせず、その分を仲買業者がこっそり買い取り、裏ルートで養殖業者に売るという形の「密漁」が横行しているのです。(『平成31年漁期におけるウナギの持続的利用のための資源管理の推進について』水産庁 2018.10.30)

シラスウナギは不漁が続いた一方、その需要は変わらず高く、そのため価格が高騰し「白いダイヤ」とも呼ばれるようになりました。その結果、密漁が反社会勢力の資金源ともなってきた暗い歴史があります。

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「白いダイヤ」ことシラスウナギ(提供:photolibrary)

その悪いイメージを払拭するため、全国のシラスウナギ仲買業者で構成される「日本シラスウナギ取扱者協議会」が18年に発足しました。シラスウナギを漁獲した場所や時期などを「産地証明書」の形で記録、それを養殖業者に伝え、取引の正常化を図るのが目的です。しかしこれに関して「証明書は第三者による監査が入るわけではないため、ごまかそうと思えば可能」という意見もあるとのことで、実効性には疑問の声が上がっています。(『日本人が知らない「ウナギの闇」どうしてこんなに高くなったのか?』gendai ismedia 2019.7.17)

また、昨年12月にはシラスウナギが「特定水産動植物」に指定されました。これは密漁した場合、他の水産物よりも厳しい罰則が課せられるというものなのですが、しかし現状、密漁の取締事態が強化されているとは言えず、その効果は未知数となっています。

シラスウナギの漁、そしてその流通管理が正常化されるためには、まだクリアしないといけない問題がたくさんあるのです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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